今、日本を襲っている円安と物価高。17日には、金融政策決定会合が開かれ、日本銀行の黒田東彦総裁が「金融緩和を粘り強く続けることで、経済をしっかりサポートしていくことが必要だ」と述べた。会合で決まったのは、これまで行ってきた大幅な金融緩和政策の継続だ。
【映像】アメリカは40年ぶりの大幅上昇に…「今日1000円で買えるものが明日同じ値段で買えるとは限らない」
この動きは欧米各国と逆になる。アメリカでは中央銀行のFRB・連邦準備制度理事会が15日、27年ぶりとなる0.75%もの大幅な金利の引き上げを実行。各国もアメリカ同様、金利引き上げによってインフレと物価上昇を抑える金融引き締め政策をとる流れになっている。
日銀の判断は国民にとって吉と出るのか凶と出るのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家とともに今後の生活をどのように守っていくべきか考えた。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「値上げをしてもバカスカ買ってくれる金持ちがいるなら、物価を高くしても買ってくれた、儲かったと賃金を上げられるが、すごく儲かっている企業がいない状態で、家計も物価高・原料高で可処分所得が減って、毎月使えるお金が減った。そうすると企業の売上も下がって、賃上げできるわけがない。普通に考えるとそうだが、日銀は粘り強く賃上げができると思っている。間違いにいつ気づくのか」と疑問を浮かべる。
エコノミスト、証券会社で機関投資家営業などを担当後、「複眼経済塾」塾頭に就任したエミン・ユルマズ氏は「総裁に黒田さんがいる限り変わらない」と発言。
「変えられないというのはみんな分かっていたが、先週は長期金利も上昇して、限界にきているのかなと思った。ただ、黒田総裁の任期も、あと1年だ。このタイミングで世界的に流動性を供給しているのは日銀だけだ。日銀まで変えてしまうと、世界市場全体が崩れてしまう懸念もある。日銀が世界市場の救い手になっていると思う」
エミン氏の説明に、ひろゆき氏は「確かに高い値段で日本がエネルギーを買っているから、他の国は潤っている」と同意。一方で、エミン氏は日銀が今の政策を続けることは「破滅への無限ループだ」と警鐘を鳴らす。
「日銀がやろうとしていることは、金利を低く抑えること。正確に言うと。金利を抑えるのは何をしているのかというと、金利というのは、国債の価格と金利の価格は違う方向に動くので、つまり国債の価格が上がれば金利が低くなる。日銀が、金利が上がらないように国債を無条件で、日本円で買っている。日銀が日本円をどこから調達しているかというと、“空気”から印刷している。従って、どんどん円の価値が目減りしていっている。円の価値が目減りすれば、日本円で発行している国債の価値も当然減る。そうすると日銀はもっと買わなければいけない。買い支えは無限ループだ。これは、持続可能ではない。実際、限界に来ていると思う。日銀は『世界的なインフレ圧力はそろそろ弱まるだろう。そこまでは我慢しよう』と思っている。アメリカが今ガンガンやっつけにいっているから、日銀は流動性を供給してとりあえず我慢しようとしている」
黒田総裁は6日の講演で、最近の物価上昇をめぐり「家計の値上げ許容度も高まってきている」などと発言。これがインターネット上で大きな批判を浴び、国会でも追及された。後日、黒田総裁は発言を釈明し、撤回した。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「あの発言はおそらく、現状はエネルギーの高騰で物価が上がっているだけで、全然雇用・給料の引き上げに繋がっていないが、物価高を許容するマインドが広がれば、インフレになって良い方向に回ってくる可能性があるんじゃないかと、期待値を込めて言ったのではないかと思った」と見解を述べた上で「その方向性で、今後インフレが続く中、日本の家計が物価を許容していけば、それに引きずられて給料も上がっていく可能性があり得るのか」とエミン氏に質問。
エミン氏は「あり得る。その考えには一理があって、日本は今までデフレ脳だった。デフレ脳というのはお金を置いておくだけで価値が上がるから、お金を使わない。私はトルコで育ったが、トルコでは常にハイパーインフレで、インフレ脳だった。お金があれば、すぐ使う。なぜかと言うと、今日1000円で買えるものが明日1000円で買えるとは限らないからだ」と答えた。
黒田総裁の「家計の値上げ許容度も高まってきている」とした発言の根拠となったのは、東京大学大学院の渡辺努教授らによる調査だ。ひろゆき氏は渡辺教授らのデータについて「設問は『10%値段が上がったとしたら、同じ店で買うか』という質問だった。たとえば『スーパー玉出』のようなお店で買っているなら、もう他に安い店がない。そうすると値上げされたら、そこで買うしかない。でも、そこで『はい』と答えたら値上げに賛成しているとするのは、全然違う話だ。『安く売っている店があるけれども、近所だから10%高くても買う』という日本人の庶民がどれくらいいるのか。黒田さんがそれを真に受けて、日本人は家計に余裕があると思っているのが、おかしいと思っている」と指摘した。
佐々木氏は「このまま放置しておくと、いくらでも国債が買える。円を刷りまくればいい。そうすると、当然円安になっていく。一方で、引き締めをしてしまうと結局、なんとかデフレを脱却してきたのが、もう一度デフレに戻ってしまうのではないか。これを日銀は危惧していると思うのだが、その可能性はあるのか?」とエミン氏に質問。
エミン氏は「その恐怖感はあると思う」とした上で「黒田さんも77歳だ。黒田さん世代の金融マン、セントラルバンカーのマインドには、バブルのトラウマが非常に強く残っている。つまり、あの時に何をしたかというと、当時の日銀総裁の三重野さんは今でいう日本の政策金利、公定歩合を1年間で一気に4%ぐらい引き上げた。それがあまりにやりすぎだったので、日本の市場全体が崩壊して、その後の日本経済が悪くなった。その恐怖感が残っている。とりあえず今我慢すれば、このコストプッシュインフレが終わるだろうと、おそらく黒田さんは考えている」と回答した。
黒田総裁の任期は残り約1年だ。エミン氏は「次は違う人が日銀総裁になるだろう」と予測する。
「年齢も年齢だし、そのときの状況にもよるが、ただ黒田さんが『国民が値上げを受け入れている』と言ったのは、私も最初に見たとき『えっ?』とちょっと怒った。でも、1つ考えてほしいのは、日経新聞が報じた世論調査では、国民は物価高については不満だけど岸田政権の支持率は高い。当然、国民は細かく金融政策なんて分からないから円安、円高、インフレ、物価高、これら全て政府の責任だと思っている。一般人は黒田さんを分からない。政府の支持率が高いということは、いまだ日本人が文句を言うレベルまで物価高が来ていないということだ」
エミン氏の説明に、ひろゆき氏は「そこは違う気がする」と意見。「日本は4000万人ぐらいが年金生活だ。世論調査がきて、家で電話で答える人は家にいる人だ。多くの働いている20代、30代は職場にいるので、答えられるわけがない。結局、年金生活者にとって大してデメリットないよねという、そういう話だと思う。年金生活をしている人は毎月毎月、必ずもらえるわけだから別に日本経済なんか知ったこっちゃない」と指摘。世論調査の数字が自体が怪しく、電話で調査をしている限りは、電話に出た人のバイアスがかかっているとした。
エミン氏が「でも一応、物価高には不満だ。不満は不満だけど岸田政権の支持率が高い。これが物価高に不満で岸田政権の支持率が低くなっていたら、政治圧力がかかる。アメリカは同じことが起きた。中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長に政治圧力がかかったわけだ」と説明すると、ひろゆき氏は「別の人が日銀の総裁になって、利率を上げられるかと言えば、上げられないだろう。国債を買い続けるしかない。選択肢がないという意味では誰に変わっても一緒だと思う」とコメント。続けて「それは岸田総理も一緒で、岸田総理を変えて、代わりに菅さんに戻ったり、別の人が総理になったとしても、今の日本経済は大して変わらないよねという、消極的な話な気がする」と述べた。
円安や物価高など、経済面の不安がつきない日本。日銀は金融緩和の方針を継続しているが、今後どのような結果を生むのだろうか。(「ABEMA Prime」より)
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