今月15日、参院本会議でAV(アダルトビデオ)出演被害防止・救済法が成立した。今年4月、民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられたことを受け、18歳・19歳は後から契約が取り消せる未成年取消権の対象外に。また、親の同意を得ずに契約ができることになった。このため、若年層が騙されたり、不利な条件で契約を結び、AVに出演させられるといった“AV出演強要”被害が増加するのではなど、懸念が指摘されている。
AV出演被害防止・救済法はAVの制作・公表は出演者の心身の健康や生活に重大な被害を生じさせる恐れがあるとし、すべての出演者に対して公表から1年間(施行後2年に限り2年間)は無条件で契約を解除し、販売・配信の停止ができるというものだ。映像の制作者、公表者に対しては、契約時に撮影内容を詳細に説明すること、契約書の交付などを義務付ける。出演者が心変わりすることも考えられるため、契約から撮影まで1カ月間、撮影から公表まで4カ月間の期間を設けることも盛り込まれた。
今年3月には、ポルノ被害の支援団体であるNPO法人「ぱっぷす」の金尻カズナさんらが国会議員に対し「性的な経験がないというと『君、その方が売れるよ!』など、断れない状況を作って、同調圧力などで出演をせざるを得なくなる」など、問題点を説明。
実際にAV出演を強要された被害者は「大学4年生の時にスカウトされた。音楽がやりたかった。『音楽でデビューしたいなら1回水着になったらデビューさせる』と言われ、面接に行ったら『この子はヌードもいけます』と言っていたり、どんどん話が変わっていく。最後の方は10数人に囲まれて『あなたにどのくらい時間とお金を使ったと思ってるの?』と言われ、断れなくなってしまった。18・19歳の子が冷静な判断で断れるかと言ったら、それは違う」と訴えた。
たとえ引退をしても違法サイトで流通するなど、痕跡を抹消するのが難しいAVの世界。さらに支援団体からは「この法律は性行為でお金を稼ぐことを認めてしまう(法律で“AV”を定義)のでは」と懸念の声も上がっている。
一方で、法律の制定には疑問の声もある。
東京・神保町で80年以上アダルト書籍を販売してきた芳賀書店の3代目・芳賀英紀さんは「100万~200万円をかけて作品を作る中で、発売ができるかできないかも分からずに撮影することになる。どんなに新人の女優さんが『頑張るので』『取り下げないので』とか言ったところで、(作品が)潰れないために、取り下げをお願いしない女優さんを探すことになると思う。本数を減らして、より精度を高めるという方向に行くしかないのかなというのは経営論としてある」と述べると「とくにアダルトというのは、絡みを見せる仕事なので、男優さん、女優さん、監督と作品に関わるみんながちゃんと情熱を捧げないと、いい絡みが見せられずクオリティーは下がる。それを理解したうえで男女がお互いに『公平な世の中になってきたね』という時代を目指すしかない」と私見を述べた。
実施に金尻さんを取材したこともあるという時事YouTuberのたかまつななは、この問題について「AVの出演は相当搾取や騙されて斡旋されているケースが多い。メディアに出ている方でも、その構造から抜けたいけど抜け出せないという方がたくさんいらっしゃるとうかがった。メーカー側にとってはやりにくくなるかもしれないが、被害者を救済するには一歩大きな前進では」と言及した。
すると、演出家・脚本家のマンボウやしろは「全部が全部ではない。色々なケースがある。それで生活している方、鑑賞するなどで助かっている人もいる」としたうえで「本当に無理やりだったり、脅されたりだったりとか、借金があってそのままズルズルと逃げられないという状況があるようであれば、一人でも救われるのであれば(この法律は)あった方がいい」と応じた。
AV作品への出演経験があるタレントの蒼井そらは「被害者の救済に関してはすごくいい」と話す一方で「これを利用して、何となく始めたけど、やっぱ止めたという人が増えてくると、業界は大変になる」と双方の立場から意見を述べた。
さらに蒼井は自身が体験したトラブルについて意見を求められると「私の周りでは聞かなかった。でもこうして被害に遭われた方の話を聞くと『そんなことあるのか』という感じだ。私がデビューしたのは20年くらい前でまったく時代も違った。“顔バレしない”などといったことを守ってやっている人たちの方が多かった」と自らの経験を振り返った。
蒼井の話を聞いたマンボウやしろは「舞台でもそうだが、若くて『何かやりたい』という人たちを、騙す大人がどの業界にもいる。出る側もそうだが、やった側も取り締まっていったら、正規の手順でやっている人たちが損をしなくなるように、双方から行くことも大事」と続いた。(ABEMA『ABEMA的ニュースショー』)
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