ABEMA『NewsBAR橋下』のゲストはかつて政治家・橋下徹を支えた“Mr.規制改革”の原英史氏と移民の受け入れとイノベーションについて橋下氏と議論を交わした。
原氏:GAFAのような、成長のエンジンになるイノベーティブな企業が日本でも出てこないといけない。そして、これらの企業の創業者には、移民の人たちが入っている。つまり、多様な人たちがいることがイノベーションの源泉だということだ。日本では移民というとすぐに単純労働の人たちということを考えがちだが、イノベーティブなことができる人たちを外から引っ張ってきて、日本人を掻き回して、そこから新しいものが生まれるという社会を作らないといけない。
橋下:移民を受け入れず、日本人だけでやった方が賃金は上がるんだと、労働者の数だけで賃金の話をする人がいるが、そうではない。労働者が少ない=高い給料になる、労働者が増える=安い給料になる、じゃなくて、外国人に入ってきてもらって、そこでの価値観や意見のぶつかり合いから新しいものが生まれてくると思う。僕は日本の歴史や伝統を守りましょう、日本の価値観を守りましょうと主張する政治家、いわゆる“保守”の人たちのことを否定はしないが、それを貫けば貫くほど、日本は衰退していくことにもつながると思う。それなのに典型的な“保守”の人たちは「移民反対」と言う。
原:安倍政権は「移民政策を取りません」と言った。でも厚生労働省が出している外国人労働者のデータを見ると、安倍政権の間に倍になっているし、年に十数万人の移民を受け入れている。ただ、そのうちの半分くらいは技能実習生、つまり技能を身につけようとして来ている人たち。それから外国人留学生、要するにアルバイトだ。日本政府は高度な人材なら受け入れるけれども単純労働は受け入れませんと言っているが、それはウソだ。まともな移民政策を作って、レベルの高い人もしっかり入れるようにしないとダメですよと言っているが、なかなか通じない。
橋下:技能実習生も、必要なところには来ていただかないと、それで支えられている分野がある。ただ、数でしか見ないような酷い扱いをしている。高度人材を受けいれるにしても、労働者として見るだけではなくて、一緒に社会を構成するメンバーとして制度を作っていかないと歪みが生じてしまう。実際、ひどい働き方を強いられている技能実習生もいる。
原:転職もできないのに最低賃金だから。そりゃ逃げるよ。
橋下:“保守”と言われる人たちは外国人に対して後ろ向きだというだけじゃなくて、例えば同性婚や選択的夫婦別姓にも反対とか、そういうことばっかり言っている。でもそれでは日本は衰退していく。あの人たちは一体何を守って、日本をどうしたいと思っているのかよく分からない。
原:1人当たりGDPも日本のピークは1990年くらいで、今や韓国と同水準、日本の半分くらいだった台湾は遥かに上に行ってしまった。中国もだいぶ近づいてきているから、そのうち抜かれるだろう。
橋下:90年代から約30年間、GDPも株価も賃金も横ばい。岸田政権は「資本主義が行き過ぎて格差が広がったから、資本主義を修正する」といって「新しい資本主義」を打ち出したが、僕は認識が違うのではないかと思う。むしろこの30年間、資本主義のアクセルの踏まれてなかったのではないか。
原:そうだ。1980年代以降、アメリカのレーガンさんとかイギリスのサッチャーさんなど、世界中で経済社会構造のモデルチェンジをやって、市場に任せることは任せましょうという方向に進んでいった。中国も社会主義だが、市場経済をどんどん使うということになっていった。日本だけがやり損なって、一人負けしている。
もっと言えば、1900年頃のアルゼンチンは、1990年頃の日本とほぼ同じ立ち位置だった。ヨーロッパの各国を追い抜いて、当時の覇権国だったイギリスに迫る勢いだった。『母をたずねて三千里』という話があるが、イタリアからアルゼンチンに出稼ぎに行くのは、当時の先進国だったからだ。そこから失敗して貧しくなっていった結果、今やアルゼンチンが先進国だったことをみんな知らない。しかし、今の日本は完全にその軌道に入ってしまっている。
橋下:アメリカやイギリスは資本主義が行きすぎた結果、ブレーキを踏んで修正するところは修正に入らないといけない状況にあるかもしれないが、日本はそもそもアクセルを踏んでいない。セーフティネットを張りながらアクセルをふかすということだが、原さんも竹中平蔵さんも、そういうことを言うと叩かれる。本当に日本はダメだと思う。僕もそう。「新自由主義だ」って。経済安全保障の話も重要だとは思うが、それも含め、アクセルではなくブレーキの話ばかりだ。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)