一度滅んだ人類と文明を取り戻すというスケールの大きな前代未聞のクラフト冒険譚(アドベンチャー)が、もうすぐアニメで帰ってくる。人気アニメ「Dr.STONE」のテレビスペシャル「Dr.STONE 龍水」が7月10日に放送。来年に控える第3期放送を前に、強烈な個性と能力を発揮する七海龍水が復活し、さらに航海へと準備を進める中で起こる様々なエピソードが、60分間に凝縮して描かれる。主人公・石神千空の科学力と肩を並べるほど、航海に関する知識が豊富で、大財閥の御曹司でもある七海龍水は、テレビスペシャルのタイトルに名前が入るほど、今後展開していくストーリーにとって重要な人物だ。「Dr.STONE 龍水」の放送を前に、千空役・小林裕介と龍水役・鈴木崚汰という人気声優2人にインタビュー。作品に対する思いや注目ポイントなどを聞いた。
――アニメ第1期、第2期ともに好評となり、今回の「龍水」や3期へとつながっていきますが、ここまで演じてこられたこと、反響への感想をお願いします。
石神千空役:小林裕介 アニメ化が決まった時から、すごく期待されているという印象を受けていました。僕自身、今までやったことのない役でもありましたし不安はあったんですけど、こういうキャラクター性で行こうというのがわかってからは、前向きに取り組めましたし、ファンの方の反応もよかったです。クラフトのシーンや、年月をかけてどんどんいろいろなものを作っていくというのは、漫画だからこそサクッと読めるんですが、アニメにすると見ていて退屈になったりしないのかなという素人的な考えもありました。そういうところも音楽や作画、全てのパートの力が合わさって最高におもしろいものができました。第2期は第1期に比べて激しいバトルの要素も相まって「ジャンプらしさ」が詰め込まれていました。最後の獅子王司との悲しくなるしばしの別れもあって、視聴者の心も鷲掴みにできました。そこに来て、いよいよ龍水登場です。僕も発表の直前までキャストがわかりませんでしたし、鈴木崚汰君とはいろいろな作品で共演させていただいたので、面識ある人と作品が作れるのはうれしかったですし、それ以上に大変なのは鈴木君だろうなと(笑)。でもアフレコを迎えて本当に感動してしまいました。むしろ僕が迷惑を掛けないようにというぐらいのレベルで仕上がっていたので、とても心強かったです。
七海龍水役:鈴木崚汰 プレッシャーというのはあまり感じていなかったです。そもそも「Dr.STONE」が第1期、第2期を通してアニメも漫画もすごく人気が上がってきたので、僕が飛び込んでいくワクワク感の方が強いと思いました。龍水はとにかくかっこよくて、さらに「Dr.STONE」を盛り上げるには欠かせない存在です。今まで(第1・2期)のアフレコを経てチームワークが完成しているところで、そこにまた違う爆発力というかブーストをかける意味でも、ひとつかませたらなという気持ちで参加しました。
――アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたでしょうか。
鈴木崚汰 既に裕介さんはアフレコされている途中で、僕が参加する感じでした。裕介さんは1人、別室で録られていて、僕と河西健吾さん(あさぎりゲン役)、佐藤元さん(クロム役)が基本的に同じ空間でやっていました。だから裕介さんとは合流できなかったんです(笑)。休憩時間だけ会えましたね。
――お二人にとって印象深いシーンをお願いします。
小林裕介 こちらは龍水を仲間として迎え入れるつもりでしたけど、話はそう簡単には行きません。彼には彼の矜持があるためちょっとした衝突が起きるんですよね。そんな彼の考えを変えさせたのが、気球でのワンシーンです。命に関わるハプニングだったり、解決に向けて各々の知恵を絞り出す即興力だったり、たった数分のシーンにも関わらず、お互いの心を開きあえるだけの説得力を持った最大の見せ場でした。スピード感もあり、演じていてすごく楽しかったです。
鈴木崚汰 龍水はすごく家の財力に恵まれて、その恩恵にあやかった上での道楽息子です。結構わがままで子供っぽい部分というのも先行しがちなんですが、スケールの大きさがゆえに、それをやりとげるまでの彼のプロセスとか、いろいろなことを経験するためには何を準備しなきゃいけないとか、そういう下準備とかも裏ではしていたのかなと想像すると、自分の欲望に対しての努力家なのかなと感じました。何より人へのリスペクトが素敵なキャラクターです。「女たちは皆美女だ」という台詞があるのですが、めちゃくちゃ紳士だと思いますし、それぞれの出来ることをちゃんと評価する。評価した上でその力が必要だと思える。全然自分本位じゃないところが魅力的に映りました。
――鈴木さんは龍水役が決まったと聞いたのはいつごろでしたか。
鈴木崚汰 (去年の)11月中でしたかね。オーディションに臨むにあたっては自信を持って出すものではあるんですが、いろいろキャリアとか複雑なことを思うと、龍水役は僕より先輩なのかなとも率直には思っていました。(オーディションの)お芝居を評価して選んでいただけたことが、すごくうれしいです。龍水はすごく勘もいいし頭も切れるキャラクターですね。僕が入ることで何か大きなものをもたらさないといけないし、キャラクター的にも僕の熱量的にも、すごくマッチしたなと思います。
――龍水は千空に匹敵する、渡り合うようなキャラクターです。
小林裕介 後にキャラクターが五知将(石神千空、クロム、あさぎりゲン、西園寺羽京、七海龍水)と呼ばれることがありますが、クロムを抜いた現代人組は演じ手がほぼ同年代なんです。なので龍水もそのくらいの年代の人が来るのかなという予想をしていたら、まさかの鈴木崚汰君でした。年齢に関係なく、お芝居と声質でちゃんと選ばれたんだなということで、スタッフさんの信頼もはかれますよね。僕はただただアフレコを楽しみにしていました。何回も言っているんですけど、歳に似合わない落ち着きがあるんですよ。
鈴木崚汰 なんなんですかねえ。自分でもわかってないです(笑)
小林裕介 この素の落ち着きから繰り出される龍水が、本当に説得力がある。終始感動していましたね。むしろ学ぶことが多く、頼もしさしかなかったです。アフレコは同じ時間軸では録っていたんですが、僕だけ別室での収録だったんです。同じ空間でできないもどかしさはありましたが、その分ヘッドフォンから聞こえてくる声に全神経を集中して、最後まで緊張感を持ってアフレコをやり切ることができました。
――お二人の龍水に対する印象をお願いします。
小林裕介 大胆不敵で、言ってしまえば高圧的かつ俺様属性が強いキャラクターです。なので一つ一つのセリフを威圧感を持って大きく出てくるのかと思ったら、もっと柔軟に捉えてきたんですよね。一番印象的だったのが(裸の龍水が)洋服を差し出されて「とりあえず服着なさいよ」って言われた時に、あそこに若干、照れが入っているんですよ(笑)。高圧一点突破ではない演技の持って行き方は、僕が想像していた龍水像からよりはるかに自由度があって素敵でした。自分が関わっていないシーンも聞いているだけで楽しかったです。見せ場の決め台詞もビシッと決めてくるかと思いきや、すごくさらっとしていました。
鈴木崚汰 自然に出たものだと思うんですけどね。「すまん、すまん」みたいなところは龍水はまだ若いから、その若さゆえなのかなと思いつつ、そこまで意識しなかったような…
――お二人と演じているキャラクターが似ているところはありますか。
小林裕介 動じない(笑)。
鈴木崚汰 裕介さんはあんまり出さないですけど、冷静に全体を見ている。千空はあまり言葉にし過ぎずに、全体の見る方向を揃えてあげるリーダーシップがすごい。それをさらっとやっているのが裕介さんという気がします。
――お気に入り、おすすめのシーンをお願いします。
小林裕介 箸休め的な感じで、杠が洋服を作り上げるんですけど、プチファッションショーが行われるんです。その時のカセキが、スーパーイケオジ過ぎます!(笑)。ショーにMCをあてているキャラがいるんですが、最初はオシャレなファッションショーのようなテイストでアフレコしたんですけど、「激しい音楽を掛けるつもりだからDJっぽくノリノリでやっちゃっていいですよ」とディレクションが入り(笑)。最終的にどう演出されるかオンエアが楽しみです。
鈴木崚汰 僕はクロムのガッツです。1期、2期を通して千空たちと長い時間を過ごしてきて、自分の知らないこともたくさん知ってきた。それでもまだ知らないことがあるクロムの飽くなき探究心をすごく感じました。龍水も全てを俺のものにしたいという欲望があるように、クロムも世界のいろんなことをまだまだ知っていきたい、その熱意が心にグッと来ました。
――クロムは千空、龍水とは異なり、文明のなかった時代に生まれたキャラクターです。
小林裕介 千空からしたら、クロムはまだまだ科学の知識は足りないと思いつつ、ないからこそのクロムの発想力、探索力などの総合力をすごく評価はしています。下に見ることなく、同列の仲間と見ていますね。今回も何か茶化したりもせず、温かい目で見守っているのが印象的です。
鈴木崚汰 龍水はめちゃくちゃ冒険してきて、いろいろなことを知っているというプライドゆえの、陸対海の争いはありましたね。でもちゃんとクロムがすごいことがわかると、そこに対するリスペクトが生まれる、認める龍水の懐の深さが垣間見えたと思います。
――「龍水」の後には第3期が控えています。
小林裕介 このテレビスペシャル「Dr.STONE龍水」は、出会いがあって、クラフトがあって、冒険があって、絆が結ばれる。いっそ劇場で上映しても見劣りしない程の壮大さと濃密さが詰まっています。見ていただければ、さらに第3期への期待が高まるお話です。アニメシリーズまでもう少し間が空くと思いますが、「龍水」だけ見ていれば埋められちゃうんじゃないかと思うぐらい、それだけ素敵なものになっています。
鈴木崚汰 テレビスペシャルのタイトルになってしまうほどの影響力がある龍水はすごいんですが、このスペシャルを見て龍水の人となりがわかるくらいスポットを当ててもらっているのが、演じている身としてはありがたいなと思います。これから違う世界、海に飛び込んでいかないといけない中で、龍水がとても大事なキャラクターだと理解していただけると思うので、龍水が加わった科学チームが、さらに広い世界に飛び込む第3期もぜひお楽しみにしてください。
◆衣装協力
男の着物 藤木屋
三松
(C)米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会