「岸田総理にとっても“口うるさいけど頼りになる”存在だった」 “保守の要”安倍元総理を失った自民党の今後は
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 8日、奈良市内で参議院選挙の応援演説をしていた安倍元総理が銃撃され亡くなった。

 安倍元総理は自民党の最大派閥である「安倍派(清和会)」を率いていた。今後、安倍派はどうなっていくのか。また、安倍元総理の当選同期で現職の岸田総理および政権運営、自民党にどのような影響が出てくるのか。テレビ朝日政治部の今野忍記者が解説する。

【映像】握手をする若き日の安倍元総理と岸田総理(13:40~)

Q.安倍派はどうなる? 後継者はいる?
 安倍さんが亡くなられて、通常であれば後任が派閥を受け継ぐかたちで◯◯派となる。しかし、率直にいうと安倍さんに匹敵する後継者がいない。主な安倍派議員の中では、下村博文前政調会長が非常に安倍さんに近かった人。世耕弘成自民党参院幹事長は参議院なので、継ぐのは難しい。西村康稔前経済再生担当大臣と萩生田光一経済産業大臣は安倍さんに可愛がられていたが、当選回数や実績で見ると若く、誰か1人が受け継ぐというのはなかなか厳しいのではないか。

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 今言われているのは、安倍さんより前に清和会を束ねていた森喜朗さんあたりが出張ってきて、何人かで集団指導体制を組むのではないかということ。清和会は過去にも集団指導体制をとったことがあるので、“旧安倍派”として名前を残す形でまとめていくのではないか。93人という数が1つにならないと派閥は力を発揮できない。

Q.当選同期の安倍元総理を失った岸田総理への影響は?
 2人の個人としてのつながりは非常に深かった。当選同期で、祖父と父が政治家という同じような境遇で、同じ自民党でずっとやってきた。青年局の若い時代、2人が台湾へ外交に行ったことがある。岸田さんは“お酒は強いけど話はつまらない”、安倍さんは“話はうまいけどお酒はそんなに強くない”ということで、担当を分けていたそうだ。岸田さんは“お酒担当”でお酒の強い台湾の人と勝負をしてあげて、安倍さんが“話す担当”としてみんなを盛り上げる。「そうやってうまく2人で分担していたんだ」と、安倍さんが総理の時に政調会長をしていた岸田さんが楽しそうに話していたこともある。

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 当選同期だが、ライバルというよりは安倍さんが圧倒的にリードしていた。安倍さんが総理の時代に、岸田さんは外務大臣と、政調会長という党三役をやり、ポスト安倍と言われて総理になった。安倍さんによって自分も総理にしてもらったという関係でもあった。安倍さんは岸田さんのことは好きだけれども、総裁選となると、岸田派(宏池会)の政策・政治信条は嫌いだったというのが本音だったと思う。政治信条は逆だけれども、境遇が同じで仲が良かった、つながりは深かったということで、岸田総理にとって柱を失ってしまったというのは、精神的な意味でも言えると思う。

Q.保守派の要だった安倍元総理を失ったことで、自民党はどうなっていく?
 事実上、政権は保守派の清和会(安倍派)からリベラル派の宏池会(岸田派)になって、前者の不満がたまる局面が出てくると言われていた。1つはやはり憲法改正と、もう1つは防衛費を倍増するかという防衛の話。また、経済の話は、安倍さんに近い人は積極財政であるのに対して、財務省の出身者が多い岸田派は財政再建という考えだ。

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 こういうかたちになり一見、岸田総理の天下になると話す人もいるが、政治の世界はそう単純ではない。岸田さんが総理になった後も、困ったことがあったら安倍元総理の事務所を訪ねていた。安倍さんに話せば保守派をまとめてくれるという、保守派の重しというか重鎮で、頼りになる存在だった。ただ、同時にいろいろ注文もされるので、“口うるさいけど頼りになる”と。強く言うけど総理経験者として抑えどころもわかっていたという、歯止めになっていた安倍さんがいなくなったのは、岸田政権の運営も難しくなると思う。

 8月、9月には党役員人事や内閣改造もある。現政調会長の高市早苗さんの最大の後ろ盾は安倍さんだった。高市さんは政治信条がかなり安倍さんに近いものがあり、熱烈な支持者も多いが、安倍派に所属しているわけではなくて一匹狼のような立場だ。純粋に政策を突き詰めていくタイプだが、次の党役員人事でどうなるかが1つ焦点になる。安倍さんという核を失ったことによって、防衛費の話や憲法改正などの議論が今後流動化していく可能性がある。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)

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