「合同結婚式や政治との関わり、テレビ局の人でさえ知らなかった」旧統一教会をめぐる報道の“空白の30年”に有田芳生議員が危機感
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 「旧統一教会というのは単なる宗教団体ではなく、政治的側面が非常に強固な団体でもある。その側面をこの機会に明らかにすることなく、“また忘れちゃったね”ということにしてはいけない、そういう思いだ」。

 そう話すのは、ジャーナリストとしてオウム真理教などの問題を40年以上にわたり取材してきた有田芳生参議院議員だ。安倍元総理への銃撃事件が起きて以来、様々なメディアの取材に応じ、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる“空白の30年”に警鐘を鳴らしている。

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 「有名歌手やスポーツ選手が合同結婚式に参加した1992年ごろ、各局は一大キャンペーン報道を張った。ワイドショーも含め朝から晩まで霊感商法などの旧統一教会の問題を取り上げた。しかしそれ以降、“空白の30年”が生じてしまった。1995年に地下鉄サリン事件が起きてからは、カルトといえばオウム真理教、ということになっていった。

 今日は他のテレビ局からも取材を受けたが、“あの時に何歳だった?”と尋ねると、“3歳”と言われた。当時のことを知っているはずがない。他にも色々と取材が来るが、やっぱり一から説明しなきゃダメで、“もうちょっと勉強してくれよ”と思ってしまう。しかしテレビ局で報道をやっている人たちでさえ知らなかったと言うぐらいだから、世間一般で知っている若い人はもっと少ないと思う」。

 15日の『ABEMA Prime』では、そんな有田議員に、改めて旧統一教会の問題点、そして政治とのつながりについて話を聞いた。

■「山上容疑者の家族の話も、旧統一教会が抱える問題の一部」

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 山上容疑者の母親は旧統一教会への入会後、生命保険金や土地など1億円近い献金をして自己破産したと報じられている。また、15日に報道各社の取材に応じた山上容疑者の伯父は、山上容疑者が海上自衛隊時代、生活に困窮する兄と妹に自分の死亡保険金を渡そうと自殺未遂をしていたことを明かした上で、「(今回の事件を受けても)母親は何も思わないだろう。思うんだったら、脱退している」と話している。

 有田議員は話す。

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 「80年代、“あなたが不幸な原因は7代前の先祖の殺生の因縁だ”などと説明し、“それを断ち切るために買いなさい”と、壺や印鑑、念珠などを不当に高額な金額で売りつけていた“霊感商法”が問題視されるようになった。また、文鮮明教祖が1970年代に日本の旧統一教会に“送金命令”を下し、10年間で2000億円が送られたという元幹部の証言が月刊『文藝春秋』に掲載されているが、警察庁も当時、“霊感商法は悪質商法の中でも最も悪質だ”と衆議院で答弁したくらいだ。

 92〜93年には合同結婚式に関する報道が相次ぎ、霊感商法のことも含め大きな社会問題になった。結果、霊感商法そのものは難しくなっていったものの、“資産のある人にはたくさん献金をしてもらいましょう”、という傾向が出てきた。不動産などを所有している人はもちろん、そうでない人にも“あなたや家族が地獄に行かないようにするためには、とにかく献金しなくてはダメだ”と言って献金させた。その結果、カードローンなどで自己破産する信者も増えた。

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 確かに弁護士などが関わって返金させることもあるし、山上容疑者のご家族も5000万円を取り戻したというが、お母様はそれを再び教団に献金してしまったとも報じられている。“夫が亡くなった、お兄さんが自殺された、山上容疑者も自殺未遂をした。そういうあなたの家庭の不幸は先祖の因縁だ、これを断ち切らなくてはいけない”と言われてしまうからだ。これが旧統一教会の信仰の恐ろしさで、優しい心を持つ人が教えを信じてしまうことで本来の人格の上に“卵の殻”のようなものができて、抜け出すことがものすごく難しくなる。

 例えば元信者の方がテレビで”親が号泣したからやめた”という証言をしていたが、本来はそんなに生やさしいものではない。“やめたい”といったところで“地獄に落ちる”と言われるし、教理解説書である『原理講論』を徹底して教え込まれるわけだから、キリスト教の専門家のような人たちが”あなたの信じていることは間違っている”ということをしっかり説明し、心の底から解決されないと、フラッシュバックで戻ってしまう。山上容疑者のお母様も一時は教団を離れたが、やはり戻ってしまったと報じられている。そういう人は他にもいっぱいいる」。

■「政治家に対する日常的なアプローチが国会にも影響」

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 そんな家庭環境に苦しんだという山上容疑者は「死ぬ前にやろうと決心した。本当は宗教団体のトップを狙っていたが、果たせず繋がっている安倍元総理を撃った」とも供述しているという。安倍元総理、そして自民党の政治家たちと旧統一教会との間にはどのような関係があったのだろうか。

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 「安倍元総理のお祖父さんの岸信介元総理は旧統一教会の初期段階から非常に親しい関係にあった。例えば映画スターの高峰三枝子さんが持っていた渋谷・南平台の邸宅を岸元総理が借りた。その隣にあった旧統一教会の施設に講演に行ったり、文鮮明教祖が来日したときには握手をしたり会談をしたりした。したがって山上容疑者が“岸元総理が旧統一教会を日本に呼んできた”と供述しているというのは決して間違いではない。

 また、岸元総理の娘婿が安倍元総理のお父さんの安倍晋太郎元外務大臣だが、旧統一教会は80年代、彼を総理にすべく熱心に動いていた。他にも、脱税の罪によってアメリカで実刑判決を受けていた文鮮明教祖が入管法の規定で日本に入国できなかったのを自民党の金丸信副総裁が動き、92年に入国できたという話もある。このように、安倍ファミリーを含む自民党の歴史の中に、旧統一教会も存在していたということだ。

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 1991年、私は『週刊文春』で半年にわたって取材をし、全国会議員の秘書さんについて調べてみた。石原慎太郎さんは“50人ぐらいはいるだろう”と話していたが、実際、信者が公設秘書や私設秘書としていっぱい入っていることが分かった。この原稿を書いて30年以上が経つが、それっきりだ。“タブー”として、今まで全く報じられてこなかったことだ。

 他にも、中曽根内閣時代の1986年に行われた衆参W選挙では、旧統一教会が京都・嵐山にある嵯峨亭という旅館を買い取って研修施設にし、身長156cm以上で英会話のできる女性の信者を集め、お辞儀の仕方に始まる2週間の研修を行い、秘書として自民党へ無償で送り込んでいたことも分かっている。

 やはり政治家には秘書などの人手が必要だ。僕も何回も選挙に出たけれど、運動員を集めるのも大変だ。お金もかかる。信者さんたちは今も昔も本当に真面目な人たちだ。そういう人たちが一生懸命に頑張ってくれるのだから、政治家にとっては本当に助かるし、ありがたい話だ。これは今回の参議院選挙も含め、の話だ。

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 このようにして、旧統一教会は“空白の30年”の間も変わらず政治家たちに接近を図り、国会にも大きな影響をもたらしていった。例えば2011年の内部資料によれば、月に15億円以上の資金が日韓の様々な組織に使われている。女性信者たちが国会議員の部屋を回って陳情をする“PRチーム”というのがあり、これに500万円が支出されていた。私が自民党のある大臣の部屋に行くと、本棚に文鮮明教祖の著書があった。“協力してくれと言って来たから…”とおっしゃっていた。こういうことも続けられてきたことの一つだ。
 
 あるいは80年代後半から90年代、“霊感商法の統一教会”というイメージが定着した結果、政治家たちも離れていった。そこで世界平和統一家庭連合という、平和はいいよね、家庭は大事にしようね、というイメージで売り出そうとした。しかし実態が旧統一教会であることには変わりがない。文部科学省の前川喜平・元事務次官が明言したことだが、前川さんが文化庁の担当者だった頃には“実態は同じじゃないか”ということで名称変更の申請を許可しない判断になったという。

 ところが第一次安倍内閣の下村博文・文部科学大臣の時代になるとOKの判断が出た。この辺りの流れにも旧統一教会と自民党、旧統一教会と日本政治の関わり、もっと言えば政治家に対する勧誘、アプローチが日常的行われ、その成果が名称変更にも繋がったということが見て取れる。それはもう否定できないと思う。(編集部注:下村氏はTwitterで名称変更への関与を否定)
 
 結果、選択的夫婦別姓や同性婚、ジェンダーフリーというのはおかしいんだという考えも自民党の一部の人たちに強固に浸透していった。これらは言ってみれば旧統一教会の教えでもある。山上容疑者のお母様が献金した1億円も、こうしたことの一部に使われていたと言える」。

■「メディアは30年間やってこなかった。もっと議論されなきゃいけない」

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 2005年に開かれた「カルト宗教討論会」で「オウムは小さくなったが、統一教会はまだある。そこに若者たちが惹かれていく。フランスなんてもっともっとカルト対策が進んでいるし、小さい頃から学校で教育がなされる。そういうことも含めてやらなければいけない」と語っていた有田議員。「今回の事件を機に、国会は第三者委員会を作り、信仰2世の深刻な問題も含めて議論しなければダメだと思う」と訴える。

 「例えばオウム真理教は事件後に潰れたが、バラバラになった元信者の子どもたちは今も全国のどこかで暮らしているわけだ。旧統一教会にも詳しい宗教学者の浅見定雄先生によれば、そういう2世たちは悩み自分ひとりで抱え込んでしまいがちだという。そういう方々の心の問題をどう解決していくのか。国が状況を把握し、相談に乗るような仕組みを作らなければならないのではないか。

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 あるいはオウム真理教があれだけの事件が起こしたことで宗教法人法の改正が議論になったこともあった。当時の私はまだ議員ではなかったが、やはり手を付けなければならないという思いで発言をしていた。しかし社会問題を起こしている団体を規制するための改正ではなく、全般的な改正に議論が及ぶと、既得権益を守りたい宗教界からのものすごい反発を受けてしまった。

 そういうことを政治家もメディアも忘れてしまった。合同結婚式を追いかけていても、オウム事件が始まったらオウムだけを追いかけてしまう。繰り返すが、メディアは30年間、やってこなかった。旧統一教会というのは反社会的行為をやってきた宗教団体だ。それが続いていることが、社会で問題になってこなかった。もっともっと、議論されなきゃいけない」。(『ABEMA Prime』より)

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