「他者に対する想像力がキーになる」映画「PLAN75」監督が語る“残酷な制度”が生まれない社会
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 少子高齢化が一層進んだ近未来の日本。75歳から自らの生死を選択できる「PLAN75」という制度に翻弄される人々を描いた映画「PLAN75」。公開から1カ月の今月14日時点で興行収入が2億円5000万円を突破する大ヒットとなっている。

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 この作品は、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、新人監督賞に相当する「カメラドール特別表彰」を授与されるなど、国内外で高く評価されている。作品を手掛けたのはこれが長編デビュー作となる早川千絵監督だ。

 約10年前、働きながら学校で映画作りを学び短編映画を製作していたという早川監督。その後、会社を退社し約4年の歳月をかけて「PLAN75」の脚本を書き上げた。執筆中には、世の中を大きく変えた「新型コロナ」の流行もあり、作品の方向性に悩んでいたそうだ。

 そんな早川千絵監督に『ABEMA Morning』が単独インタビュー。「高齢者」をテーマにした映画を作ろうと思った理由や「PLAN75」という残酷な制度を現実のものとしないために必要だと思うことについて話を聞いた。

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――本日はよろしくお願いします。早速ですが、興行収入が2億円5000万円を突破したことについてどう思われているでしょうか?

早川監督「1か月経っているのにお客さんが劇場に足を運んでくださっていると聞いてすごく嬉しいですし、驚いているというか自分の想像を超えて作品が独り歩きしている感じで、すごく不思議な気持ちでいます」

――なぜこの映画を作ろうと思ったのでしょうか?

早川監督「ここ十数年くらいの間に日本社会をみていて『自己責任』という言葉がとてもよく聞かれることが気になっていました。本当に助けが必要な時に助けを求められなくなっているんじゃないかという気がしていて。そんな中で人の価値を生産性で語るような風潮が出てきたことにすごく憤りを感じていて、そこでふっと湧いたのが『PLAN75』というコンセプトです」

――働きながら学校で映画製作を学んでいたとお聞きしました。どのように過ごされていたのですか?

「学校に行っていたときは、まだ昼間勤めをフルタイムでしていたのですごく大変でした。朝4時に起きて会社に行く前に脚本を書いたりとか、会社の後にカフェに行って閉店まで残って書くとか…」

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――「PLAN75」の執筆中、コロナ禍になり作品の方向性に悩んでいたとお聞きしました。どんな悩みがあったのでしょうか?

「コロナになって世界中が不穏な空気に包まれて、ただでさえ人々が不安になっている所に不安を煽る映画を作ってよいのか悩みました。何か希望のようなものというか、自分が願っている、願いのようなものを込める必要があるのではないかと思って、どんどん核となる方向性を変えていきました」

――今作で“高齢者”をテーマに描いた理由について教えてください。

早川監督「高齢者というのは誰でも年を取るとなるものなので、誰もが自分事として捉えやすいものではないのかと思いました。大学生たちに試写会をしたんですが、すごく深く響いているなと思ったというか、自分のおじいさんやおばあさん、それから身近にいる高齢者に思いをはせるというか。どの年代の人にも観ていただきたい映画だと思いました」

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 高齢者に自ら死を選ばせる、残酷とも思える「PLAN75」という制度。現在の日本では、絵空事とも言いきれないこの制度を、現実のものとしないために必要なことは「他者に対する想像力だ」と早川監督は語る。

早川監督「人間一人一人が違う人格で違う考え方、感じ方を持っていることを知っておく。そのうえで相手に対する想像力を持ち続ける。相手も同じ考えだと思い込んでいると、とても単純な短絡的な考え方でいろんな物事が決まってしまうので他者に対する“想像力”がキーになると私は思います」

(『ABEMAMorning』より)

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