藤井聡太王位、強敵を華麗に下した「雑味のない将棋」解説棋士が絶賛する藤井将棋の「美しさの象徴」が見えた一手
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 将棋藤井聡太王位(竜王、叡王、王将、棋聖、20)が7月20、21日に行われたお~いお茶杯王位戦七番勝負の第3局で、豊島将之九段(32)に84手で勝利した。両者ともに得意とする角換わりで始まった一局は、繊細な中盤から少しずつ藤井王位がリード。豊島九段も3時間3分、昼食休憩を含めれば4時間を超える大長考を入れ打開の道筋を探ったが、その後の終盤でも藤井王位は少しの隙も見せず快勝。王位3連覇に向けてさらに前進した。この一局を解説していた飯島栄治八段(42)は「雑味がない将棋。藤井王位の将棋の人気がある、美しさの象徴」と絶賛。一局全体通して非常に完成度が高いとし、その中でも最終盤に決めた一手に、ファンからも「身震いするくらいカッコよかった」「笑っちゃうくらい華麗」という声が集まった。

【動画】藤井聡太王位の決め手となった飛車切り

 通算勝率が8割を超え、タイトル戦でも強敵相手に白星を並べ続ける藤井王位。時に「神の一手」「AI超え」というセンセーショナルな言葉で形容されるが、多くの棋士から高く評価されるのは、圧倒的なミスの少なさと、全ての駒を無駄なく躍動させる美しさだ。本局でも豊島九段に何か大きなミスがあったわけでもないが、より精度の高い藤井王位が中盤以降少しずつポイントを稼ぎ、終盤に入るころには豊島九段も勝負手を放つしかなくなっていた、という流れだ。ABEMAの「SHOGI AI」でも形勢を示す折れ線グラフは、多少の揺れはあったものの、緩やかに藤井王位の勝利を示す方へと近づいていった。

 藤井王位の勝勢まで進んだところ、一局を締めくくるような華麗な手が飛び出した。自にあった飛車で、相手のと金を取ったのだ。単純に見れば飛車と歩の交換。ただ、豊島玉を詰めようという最終局面において、自陣の飛車より持ち駒の歩1枚の方が価値が高かった。まさに格言「一歩千金」だ。考慮時間わずか2分で指した手により、豊島玉に即詰みが発生。そこからはパタパタと手が進み、豊島九段が投了した。

 この鮮やかな終盤に目を丸くしたのが「すごくないですか」の口ぐせでファンにはおなじみの飯島八段だ。「これは非常に理想的な勝ち方。遊んでいる駒、無駄な駒が一切ない」と絶賛した後、「雑味がない」と洗練された食べ物、飲み物でも表現するような言葉で説明した。「藤井王位の将棋の人気がある、美しさの象徴ですね」。実質遊び駒になっていた飛車を、相手の歩と交換することでしっかりと活用し、勝利を決定づける。最後の即詰みも、駒台に乗っていた持ち駒をうまく使い切ることで成立する。余計な駒はなし。文字通り「雑味がない」投了図が完成した。

 現在最多の五冠を維持し、年度内には六冠まで狙える藤井王位には、強敵が次々と新たな研究手をぶつけてくるが、それらに対応する事前研究と力勝負になってからの正確さで、まだまだ周囲の追撃を許さない。華々しい一手も魅力だが、終局を迎えた盤面に美しさを感じられる藤井将棋は、これからもたくさん生まれていく。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【動画】藤井聡太王位の決め手となった飛車切り
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