成田悠輔氏、電気刺激に操られる!? 身体的感覚を共有できる未来の技術「ボディーシェアリング」を体験
【映像】電気刺激に操られる成田氏
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 ニュース番組『ABEMAヒルズ』でMCを務める徳永有美アナウンサーと、米・イェール大学助教授で経済学者の成田悠輔氏がスタジオを飛び出し、2回目のロケを敢行。成田氏が研究者として会ってみたかった“ある人物”のもとを訪ねた。そこには、普段見ることができない成田氏の姿があった。

【映像】電気刺激に操られる成田氏

 成田氏が“一度会ってみたかった”と明かすのは、番組コメンテーターでベンチャー企業「H2L」創業者の玉城絵美氏。研究しているのは「ボディーシェアリング」という未来の技術だ。

玉城「人間の固有感覚、特に深部にある『重さ』『力の入れ具合』といった今まで見えなかった感覚をロボットや人間同士で共有しあい、どこでもいろいろな体験ができるという研究をしている」

成田悠輔氏、電気刺激に操られる!? 身体的感覚を共有できる未来の技術「ボディーシェアリング」を体験
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 今回は人の動きをデータとして取得し、その情報を再現する技術の一部を体験した。例えば、両腕にセンサーを取り付けた成田氏が腕を動かすと、隣にいるロボットが成田氏の動きをコピーしている。

玉城「これがボディーシェアリングをしている状態です」
成田「僕の気持ち悪さも含めて伝わっています」

 筋肉などからの情報を取得する「センシング」と共に、ボディーシェアリングで重要となってくるのが、動きを出力する「アクチュエーション」だ。

玉城「私が今、(成田氏の)“指(薬指)を押したい”と思うじゃないですか。押しますね」
(玉城氏がパソコンを操作する)
成田「あっ!」
玉城「こんな感じで制御ができます」
徳永「何も力を入れていないんですか?」
成田「全く何も」
徳永「すごく曲がっていましたよ」
成田「その瞬間に気づかないくらい、こっち(腕)に注意がいくんですよ。気づくと指が曲がっていたみたいな」

 コンピューターを介して電気刺激を送ると、動かしたい指を思うままに動かせる。その強弱も自由自在だ。徳永アナも体験してみたところ、自分の体を操ろうとする“何か”に不思議な感覚を覚えたという。

玉城「どんどん刺激出していきますね」
徳永「(ッハ)」
玉城「これは大丈夫ですか?」
徳永「大丈夫……フンッ!大丈夫」

成田悠輔氏、電気刺激に操られる!? 身体的感覚を共有できる未来の技術「ボディーシェアリング」を体験
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 人の動きの情報を取得し、その固有感覚を共有することによってさまざまな可能性が広がるボディーシェアリング。ロボットだけでなく、人間同士でも身体や体験を共有できる時代がすぐそこまでやってきている。

 さらに、H2Lはこのボディーシェアリング技術を進化させた新たな取り組みを7月6日に発表した。

玉城「ボディーシェアリングをメタバース上のアバターとシェアした場合、今まで見えなかった情報まで見えるようになるという研究。例えば、『緊張しているか』『疲れているか』『体力があとどのくらい残っているか』という情報」

 コロナ禍で浸透したリモートワーク。会議ではビデオ通話で顔を合わせるものの、仕事中はリアルのようにお互いの状況がわからない。そこで、ふくらはぎに取り付けたセンサーで取得した1人1人の身体の情報をメタバース空間に反映させることで、より良い、そしてよりリアルに近い職場環境を目指そうとするシステムだ。

 残りの体力はハートマークで表示される。また、緊張していれば汗のマーク、落ち着いていれば音符のマークが出るようになっている。

玉城「体力まで見られるので、『今、仕事を振っていいかな』『今はいっぱいいっぱいなのかな』とか(がわかります)。例えば、徳永さんは体力が1なんですけどリラックスされているので、相談は乗れるけど残業はちょっとできない状態」
成田「すごく忙しいフリをしている人とか、げっそりしているフリをして仕事が回ってこないように頑張っている人がバレてしまうのがいいですね」

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 最後に、ロボットやアバターを通して場所や時間を超越し、人と体験が共有できる未来とはどのようなものかを語り合った。

――成田:体験の共有や体の共有を何十年、何百年先まで考えたときに、どういう世界が訪れますか?

玉城「たった10年で人生の体験量が2、3倍に増えてくれないかなと思っています。例えば、陶芸教室の陶芸をやって、ちょっと経つと遠隔地にあるアフリカのダンスを習いに行って、そのあとニューヨークで仕事をする。夕方になったら出産体験をして、夜になったら認知症の人の気持ちを考えてみる。1日で、人生で飛び飛びになるはずの体験を一気にする」


――成田:現状で共有しやすくなったのは視覚、聴覚、言語情報だと思います。玉城さんがやられてる体にまつわる感覚以外のものも、今後は共有できるようになっていくと思いますか?

玉城「段階的にいうと、生体反応である『緊張』、その次に『情動』(怒りや悲しみ、嬉しさ)、その次に『積算された情動』、最後に『自由意志』なんじゃないかなと思っています」

成田「僕は昔から『人の歯の痛みを感じられるか』という問題に興味があります。痛みの辛さは人に伝えられない。そういうことを共有しやすくなると、人の辛さにもうちょっと優しくなれると思う。例えば、病気の人や体に痛みがある人、不自由がある人はイライラしがちな場合が多いと思うんですよ。自分自身がそういう病気になったときもそうです。僕には家族に身体障害のある人がいて、常にイライラしていて、怒りの連絡がしょっちゅう来ます。その体の感覚を少し体験できると、自分なりの感情として昇華できる。

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――徳永:例えば、先ほどのように刺激や身体的な何かを受けることによって心が結果的に動く、感情が生まれるというところをみんなでシェアしていくイメージですか?それとも、心自体を動かすとか、情動のようなものを動かすイメージですか?

玉城「人間の体のインターフェースを動かすことによって、痛い・楽しい・気持ちいい・涼しいといった共通の情動が生めるのではないかと予測しています。例えば、涼しいと心地いいですし、寒いときに暖かいと心が温かくなりますよね」


 他人の体験をテクノロジーで共有することによって、相手の気持ち、つまり「心」の領域にも触れられる可能性がある。ボディーシェアリング技術、そしてAIや仮想空間の進化と共に、私たち人類も新たな段階に進み始めているのかもしれない。

――徳永:メタバースや仮想空間などの世界がもっと認知されて私たちの生活に降りてきたときに、玉城さんはどんな世界を構築していきたいですか?

玉城「基本的に身体的制約や空間的制約、時間的制約を超えていくのはもちろん、もうちょっと先にある“現実では体験できないことを体験する”というところを次の世代の人たちに作ってほしいと思っています。例えば、猫や鳥など人間ができなかった体験。メタは『超越』、バースは『ユニバース』という意味だから、超越した世界をちゃんと構築していってもらいたいです。私自身は部屋の中でいろいろとできるのでうれしいですし、そうしたら人類も少し考え方が進化するんじゃないかと思います。文化も進化して、成熟していくんじゃないかなと思います」

成田「有名な哲学者(トマス・ネーゲル)が『コウモリであるとはどういうことか』という本を書いています。要は、そのコウモリという存在が世界の中で感じている意識やコウモリであるという体験を人間が感じるというのはどういうことか。それは視覚や聴覚などの構成要素に分けられるものなのか、ということについての大論争がありました。実際にそのデバイスを作り、体験を伝達したり共有したりしながら徐々に答えを出していくステージに人類は入りつつあるのかなと今日感じました」

(『ABEMAヒルズ』より)

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