信号のない横断歩道で、歩行者が車に道を譲る行為。一見、何でもないようなやりとりだが違反につながってしまうケースがあるという。
停まっていた路線バスが動いたため、後に続こうとした車。右から歩行者が来たため、一時停止した。すると、今度は左から来た歩行者が先に行くよう車に手を挙げて合図する。
横断歩道は歩行者優先。運転手は躊躇したが、道を譲られたため車を発進させた。歩行者と運転手が互いを思いやる一見、何でもないやりとり。ところが、このあと運転していた男性は警察に止められた。
当時の状況について。運転していた男性は「停車をしたところで警官の方が来て、『わかりますか?』と言ってきたので、私は何のことかちょっとわかんなかったので、『わかりません』と言ったら『違反です』って言ってきたんですよね。『譲られたんで行ったんですけど』と言ったんですけど、『それも行ったら違反です』って言われたんですよね」と話す。
そもそも、今回のケースは何が歩行者妨害に当たるのだろうか。道路交通法第38条第1項には、以下のように定められている。
「横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」
条文を読むと、一時停止した上で「歩行者の通行を妨げないこと」としているが、「歩行者よりも先に進行してはいけない」とは明確に記されていない。男性から相談を受けている藤吉修崇弁護士は、処分の取り下げを求め担当だった警察官に問い合わせたという。
「(警察官が)現場判断だってことを言ったんだけども、現場判断というのは、事実関係が法律上罰せられるという構成要件に該当するかの判断しなければいけない立場なのに、条文の要件を知らずに現場判断できるはずがないことが一番の問題」
警察官は「現場判断」を強調し、ドライブレコーダーの映像を確認することもなかったそう。
「せめてドライブレコーダーを検証した上で、『こういった理由で今回は違反になるんだ』とちゃんと説明していただければ、当然、運転士としても今後はそうやって気をつければいいかということの参考にはなる」
では今回のケースは、本来どのように判断されるべきだったのか。警視庁の捜査関係者は「歩行者に譲られたからといって違反にならないとは限らない、状況による。ただまったく歩行者が動いていない時点で譲られたならば、違反にならない可能性もあるので、状況次第ではドライブレコーダーを確認する。その上で違反性がなければ撤回する場合もある」と見解を述べていた。
車を運転していた男性と弁護士は、現在も警察に処分取り下げを求めている。(『ABEMAヒルズ』より)