【解説】「親が“泥棒”なら息子も…」“独裁者の息子”がフィリピン新大統領に 選挙は圧勝、その手腕は
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 25日、フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領が、就任後初となる施政方針演説を行った。

【映像】当選にニッコリ笑顔! マルコス大統領よりも票を集めた前大統領の娘・サラ氏(画像あり)※12:30ごろ〜

 演説の中でマルコス大統領は海洋進出を続ける中国を念頭に「1平方インチたりとも領土は渡さない」と発言。領土を守り抜く姿勢を強調した。

 今年5月の選挙戦ではSNSを駆使した戦略で多くの支持を集め、圧勝したマルコス大統領。現地を取材中のANNバンコク支局・久須美慎記者はこう話す。

「マルコス大統領は6月に就任しました。その前の大統領は、ロドリゴ・ドゥテルテ氏でした。ドゥテルテ氏は過激な発言、強権的な政治で国内でも支持率が高かった大統領です。フィリピンの大統領制度は任期が6年で、ドゥテルテ氏に代わり、どんな大統領になるのか注目されています」(以下、久須美記者)

【解説】「親が“泥棒”なら息子も…」“独裁者の息子”がフィリピン新大統領に 選挙は圧勝、その手腕は

 中でも注目すべきなのは、マルコス大統領の経歴だ。

「彼の父親もかつて大統領でした。同じ名前のマルコス元大統領です。独裁体制を敷き、強権政治を続けていましたが、1986年にピープルパワー革命で政権は崩壊。夫妻と当時は20代だったマルコス大統領も、ハワイに亡命しました。父親はハワイで死去、一家はフィリピンに戻り、息子は再び政治家になりました。その後、地元の州知事や下院・上院議員を経て、キャリアを積み重ね、今回大統領に就任しました」

 過去に国中の非難を浴び、追放された大統領の息子でもあるマルコス大統領。そんな彼が一体なぜ当選に至ったのだろうか。

「もちろん、当時の父親による独裁政治、国民の弾圧や腐敗、汚職といった歴史に“負のイメージを”持つ人も一定数います。しかし、それでも支持を集めたというのは、YouTubeやFacebook、TikTokなどのSNSをうまく使った選挙戦略が成功した結果です。マルコス大統領は、凝った演出がされた動画や、息子と対談するちょっとフランクな雰囲気を見せる動画など、いろいろな形でSNSを使い発信していました。また、父親時代の国民への弾圧など、負の情報には一切触れずに『黄金時代だった』とアピールしています。これが、当時を直接知らない、若い世代へのアピールに成功しています。フィルターバブル(※ネット上で見たい情報が優先的に表示されるアルゴリズム)によって自分の見たい情報しか見えない状況が、マルコス大統領の当選につながったのではないかと思います。“独裁者の息子”として一部で根強い反発もありますが、投票結果は圧勝でした」

【解説】「親が“泥棒”なら息子も…」“独裁者の息子”がフィリピン新大統領に 選挙は圧勝、その手腕は

 一方で、マルコス大統領の選挙活動を「情報操作だ」と批判する国民もいるという。しかし、現地で取材をした久須美記者は「高齢者のマルコス支持者に話を聞くと『親が泥棒なら息子も泥棒になるのか。違うだろう』と言われた」と話す。

「今では独裁者とも言われていますが『(マルコス大統領の)父親の時代はよかった』という話をする人も実際にいます。独裁の裏返しかもしれませんが、その人は『当時は犯罪が少なかった』と話していて、国のインフラ整備が進められ、確かに失業率も低下した。独裁者と表現するかどうかは別として『あの時代の良い面をもう一度』と思う国民もかなりいる印象です。やはり新型コロナウイルスの流行もあり、経済が疲弊している中で『強い指導者がほしい』といったニーズがあるように感じます」

 前任大統領のドゥテルテ氏とはどのような違いがあるのだろうか。

「マルコス大統領は、基本的にはドゥテルテ政権を継承しています。インフラ整備などに力を注ぎ、経済成長を進めていきたい考えです。また、ドゥテルテ政権で大きな問題になった、容疑者の殺害も辞さない強権的な麻薬取締規制についても、引き続き厳しく向き合っていくとする姿勢を示しています。ただ、国際刑事裁判所の捜査に至ったドゥテルテ氏の強権的な手法を踏襲するかは不透明です」

 一方で、フィリピンの直近の課題が外交政策だ。今後、海洋進出を続ける中国とどのように向き合っていくべきか、選択を迫られている。

「ドゥテルテ政権は中国に歩み寄る姿勢を見せていましたが、マルコス大統領は25日に初めて行われた施政方針演説で中国を念頭に『1平方インチも領土を渡すつもりはない』と強調しました。ドゥテルテ政権の中国への融和姿勢との違いを示した形です。東南アジアでの米中の綱引きがみられる中、アメリカと同盟関係にあるフィリピンが、経済的な結びつきもつよい中国に対し、南シナ海問題などで今後どのように向き合っていくのか、注目されています」

 しかし、マルコス大統領の独裁・強権路線に対し、やはり根強い不安の声は存在するという。

「ドゥテルテ政権では、メディアへの圧力がありました。ドゥテルテ前大統領と対立していた民間放送局ABSは放送事業免許が認められず、放送停止命令が出ました。また、退任する直前には、ノーベル平和賞を受賞したマリア・レッサ氏らが立ち上げたメディア『ラップラー』の企業登録が取り消されました。ラップラーはドゥテルテ政権に批判的な論調で、マルコス大統領に関しても批判的な目線で報じていました。こうしたドゥテルテ前大統領の強権的な政治が継承されるのかどうか、メディア面でも懸念の声もあります」

 今後、フィリピンと日本の関係はどのようになっていくのだろうか。

「過去フィリピンは日本と戦争した歴史もありますが、基本的には親日国家として知られています。先月の大統領就任式には林外務大臣も出席し、早速会談を行っています。フィリピンにとって、日本は経済的支援の大きな提供元でもあります。日本にとっても仲良くしていきたい国の一つで、この関係はマルコス大統領に代わっても大きく変化しないでしょう

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