模倣犯の懸念もSNSには“山上ガールズ”が…コラムニスト河崎環氏「山上容疑者には『学歴』『毒親』『性』の3つが揃っていた」
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 安倍元総理の銃撃事件から1カ月あまり。母親が旧統一教会に入信したことでの実家の破産、進学の断念、さらには難病の兄の自殺など、山上容疑者の供述などから浮かび上がる、不遇とも言える人生に、インターネット上では“共感”の声も集まっている。

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 その例として、「過酷な生育歴を鑑みての温情」「本人が非常に真面目、努力家であり、更生の余地のある人間である」とするオンライン署名サイト『Change.org』のキャンペーン『山上徹也容疑者の減刑を求める署名』には6000人以上が賛同(10日現在)。さらには山上容疑者を“アイドル視”するかのようなSNSの投稿を行うことから“山上ガールズ”と呼ばれる女性たちの存在も注目を集めている。

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 山上容疑者と同世代で、同じく“宗教2世”として育ったゆきさん(仮名、40代)は「とても影響力のある方を殺してしまった。容疑者が起こしたことは許されないし、称賛するのは良くない。罪は償うべきとも思うので、減刑を求めるキャンペーンに署名するつもりはない。ただ、母親の言動が許せないという思いも含め、家庭環境についてすごく可哀想だと思ったし、自分の生い立ちと重ね合わせて辛くなった。その意味では葛藤がある」と明かす。

■共感を呼んでしまった山上容疑者の『学歴』『毒親』『性』

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 コラムニストの河崎環氏は「キャンペーンが始まったのは“同情”というところからだと思うが、それが喚起されたのは、まずメディアによって山上容疑者の生い立ちが明らかにされ、考えていたことを代弁するかのように報じられ方をされたからだ。この点では、すでにメディアが共感し、視聴者にも共感を得させようとしまっている部分があると思う。さらに彼自身がTwitter上に残したとみられる文章が発掘されたということもあるのではないか」と指摘する。

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 「もちろん、共感を覚える人間はどの時代にもいたはずだが、今はSNSがあるので、それを表に出すためのハードルが低くなっている。Twitterに文字となって現れるので、“こういう感情を抱いている人が私の他にもいるんだ”となってしまう。

 特に私はインターネットの黎明期から二十年以上ライターとしてやってきたが、その経験から、どのようなものがページビューを得るかが見える。大きく3つの“鉄板ネタ”がある。それは『学歴』『毒親』『性』だ。これらの要素が一つでもあれば、必ずと言っていいほどヒットするわけだが、山上容疑者に関してはそれが三つとも揃っているというのが特徴だ。

 『学歴』『毒親』は読んで字のごとくだが、今回の場合、『性』というのはエロスを喚起する本人の知性、例えば文章だ。文章をお書きになる方なら実感したと思うが、山上容疑者は非常に文才がある。襲撃前にフリーライターに宛てて書いたとされる手紙も非常によくできていた。そうしたものがメディアを通して伝わることで、男性が共感するのはもちろん、女性も魅力を感じた、そこから“よくやった”という感情も生まれてきているのではないか」。

■正義の鉄槌を下してくれる“ビジランテ”を求めてしまう社会

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 作家の鈴木涼美氏は「宗教2世のみならず、親のせいで自己実現できなかった、経済的に追い詰められたといった、不運な人生がクローズアップされる度、共感を呼ぶ以上に、“自分もこうなっていたかもしれない”と切実に感じる人もいるはずだと思う。映画『ジョーカー』なども、切迫した社会状況と照らし合せて観られているではないか。それだけ追い詰められている人、どこかに敵を見つけたい、という人が増えていると思う」と話す。

 「それは安倍政権の熱烈な支持者の一部にいたネトウヨみたいな人たちが“自分が不幸なのは在日コリアンのせいだ”などと主張し、短絡化するのにも似ている。模倣犯が現れることを懸念するし、経済成長せず貧しい人が増えれば、そうした危険性は増してくると思う。弱者を救出できる社会になっているのか、という議論がなされるべきだ」。

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 河崎氏も「今回の事件で日本の治安に不安を覚えた方もいると思うが、90年代後半以降、次第に時代に暗くなっていっている、というのが私の実感だし、2000年代に入り、同様の状況は何度も起きてきた。例えば拡大自殺と呼ばれるような、自爆テロ的な事件にも共通して見い出せる要素なのではないかと感じている」とコメント。

 「つまり山上容疑者への共感や、“よくやった“という気持ちをツイートした人たちには、“優秀で、努力していたにもかかわらず、親に可能性を潰された”という恵まれない生い立ち、それにルサンチマンを抱えて生きてきた、というところに何か引っかかる部分があったんだと思う。

 その意味では、90年代後半以降は“弱者の時代”だと考えられるし、これはヒーローの在り方にも表れている。それこそ『ジョーカー』のようなダークヒーローが持て囃され、感動を呼んでしまうのか。それは、法的には認められないが、大衆が不満に思っている対象に正義の鉄槌を下してくれる“ビジランテ”を求めてしまう社会になっているからではないか」。

■「“山上ガールズ”というワードは誰が考えたのだろう」

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 パックンは「たとえ殺人犯であったとしても、その人が置かれてきた背景などを理解し、場合によっては情状酌量をして適切に量刑を定めるべきだし、慈悲の心を持つべきだ。同じ境遇にあった方々が共感しているのなら、そのような境遇をみんなで無くしていけばいい。ただ、山上容疑者はあのような銃が自宅でも作れるし、使えるということを証明してしまってもいる。僕だって、発言が気に入らないといって狙われてしまうかもしれない。そこに称賛の声が集まってしまうのは心配だ」。

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 また、ryuchellは「ゆきさんも宗教2世として共感はできるが、でも自分の中で戦ってきたからこそ、賛同はできないという思いがあると思う。メディアの報道もSNSも影響されてしまう可能性があるので冷静に見ていかないといけない。自分の軸を持って、色々な角度で物事を見つめないといけない。その意味では、“山上ガールズ”というワードは誰が考えたのだろう。こういうワードがあるから影響を受けてしまう人たちもいると思うので、なるべく作らないようにしよう、言い出さないようにしよう、と考えることも必要だ」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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