コロナ禍による失業など、経済的な理由から病院に通えない人を支援する制度がある。その実態と制度の普及に尽力する医師に話を聞いた。
【映像】無料低額診療… 制度に尽力する医師が明かす“制度の課題”
民医連「“経済的な困窮”がコロナによる経済活動の縮小や停止によって噴き出た、非常に耐えがたいものになったのではないかと思います」
6月、医療機関などで作る民医連(=全日本民主医療機関連合会)は、2021年に経済的な問題で受診が遅れたなどの理由で死亡した人の数が前の年より5人多い45人だったことを明らかにした。
その内訳は8割が男性で、60代以上が7割を占めている。また、65歳未満では非正規雇用と無職の人がそれぞれ約4割に。また、保険料の滞納などで無保険の状態だった人が3割近くいた一方、保険証を持っていても経済的な理由で治療を中断するというケースも。
新型コロナの影響や失業、保険証が無いなど様々な理由から「病院に通いたくても通えない」という人たち。こうした中、彼らを支援する制度がある。それが「無料低額診療事業」だ。
「無料低額診療事業」とは、低所得者などに医療機関が無料または低額な料金によって診療を行う事業のこと。低所得者やホームレス状態にある人といった“生計困難者”が対象で、この事業による受診を希望する人は、実施する施設への手続きを行う。事業を行っている医療機関は、全国に約700か所存在し、2020年度には約700万人が制度を利用している。
「無料低額診療事業を導入する」社会医療法人同仁会・耳原総合病院の田端志郎理事長のもとには日々、様々な事情を抱える人が訪れるという。
田端理事長「(申請書類の貯金残高が)81円というのがありましたね。預金通帳の預金貯金になるでも何百円とか何千円っていうのはザラなんですが。何百円とか何千円の世界で医療機関は行けないですよね」
治療費が減額となる基準は病院によって様々。田端理事長の病院では、1カ月の収入が生活保護基準の150%以下の場合、無料低額診療が適用される。新型コロナの影響もあり「制度を利用する人は増加している」と田端理事長は話す。
田端理事長「(統計開始が)2018年4月からなのですが、そのころは大体月20件ぐらいでした。2020年12月ぐらいに毎月50件ぐらいまで伸びてきていましたが、そこからグンと伸びて、2022年4月の時点では120件ほどになりました。無料低額診療の申請書類を見たら『コロナ』でっていう理由が多いですね。コロナで収入が減る。働いている場所が潰れてなどが多いです」
医療を必要とする人たちのセーフティーネットとなる中、課題もある。無料低額診療事業を行う医療機関は、法人税の減税など、税制上の優遇を受けることができるが、減免した医療費は病院が負担しなくてはならない。しかし、「課題は他にもある」と田端理事長は明かした。
田端理事長「この無料低額診療事業というのは、薬局法人には全く適用ない。だから、処方箋持って行っても、そこで自己負担が発生してしまうのです。診察代が無料になったけど、薬代は…というのがあり、無料低額診療事業をやっている病院で問題になっています」
「ですが、無料低額診療事業が入り口となって社会の支援を得ることができるのも大きな意義なのかなと思っています。お互いに助けられるようなそういった世の中になっていければ良いですね」
(『ABEMAヒルズ』より)
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