ABEMA『NewsBAR橋下』に、市議会での「恥を知れ、恥を、と言われても仕方がないと思います」との発言が話題を呼んだ広島県の石丸伸二・安芸高田市長(40)が出演した。
■「ニュースを見て、朝一番に会社に退職の連絡をした(笑)」
京都大学経済学部を卒業後、三菱東京UFJ銀行に入行。海外駐在も経験した“エリート銀行員”が市長選への出馬を決めたのは、投票日のわずか1カ月だった。
「子どもの頃は地元から出たくて出たくてしょうがなかった。こんなクソ田舎、絶対に出てやると(笑)。嫌いだったというよりは、閉鎖的な世界がたまらなかった。ニューヨークに4年半くらい駐在して、ブラジルやアルゼンチンでも仕事をした。外の世界を求めていたが、ずいぶん遠くまで来たな、行き着くところまできたな、と思った。その時に、自分のルーツみたいなものに感動したというか、幸せだったのだなと感じた。何か地元に返したいなという思い強くなっていった。
そんな時、テレビのニュースを見ていて、“あっ”となった。河井事件で現金の受領を認めた市長が“丸刈り”になっていた。でも、告示日が迫っていた市長選には彼の他に候補者がいないと。“誰か出ろよ”と思ったが、いない。じゃあ自分がやるしかないと。翌日もスケジュールが入っていたが、朝一番に会社に退職の連絡をした(笑)。それが7月8日で、投票日が8月9日」。
橋下氏は「僕には政治家を見るときの一つの基準がある。政党を作ったこともあって色々な人を見てきたが、単純に言えば、収入が上がったり、秘書を抱えたりして、政治家になると生活水準が良くなるというパターンが多いと思う。その点、市長は三菱UFJ銀行だから。おそらく辞めない方が収入も良かったと思うし、退職金もすごいだろう。生涯賃金で考えたら、奥さんがいたら反対するだろうし。僕も同級生から早期退職の相談を受けているけど、すごい金額だもの(笑)。
だからこそ、それでもしんどい政治家の世界に飛び込んでいく、という人は信用できる。よくやったなと思う。やっぱり、バーンと導火線に火が着いたような感じだったのだろうね。コメンテーターや政治評論家は“怒りで政治をするな”とか言うが、政治のエネルギーは怒り。僕も大阪府知事選に立候補した時には、どうしようもない税金の使い方はどうなんだ、コメンテーターとして訴えても何も変わらないから、それだったら、という怒りしかなかった」。
これに石丸氏は「確かに、銀行員時代の待遇はしっかりしていたし、年次を重ねれば重ねるほど待遇が良くなって、退職金もどんと来る。でも、途中で辞めるとほとんど出ない。でもやるしかないと(笑)。やっぱり、自分の中に火薬というか、温めている思いがあったんだと思う。選挙運動をしながら、落ちたら無職だから、その後の就職活動はどうしようかな…という気持ちも頭の片隅にあった。結果として、自分と同じような怒りが皆さんにもあったんだな、手を上げて良かった、と。」
■橋下氏「上手いことやったら利益に反転するから(笑)」
市長就任後、市政・議会改革に挑んできた石丸市長。空席だった2人目の副市長に自らが選んだ人物を据える案をたびたび市議会に提出。しかしそれらの人事案はことごとく否決され、今年3月には議会が財政難などを理由に副市長の定数を2から1にする条例案を可決してしまう。市長はこれに対抗すべく、市議会の定数削減を盛り込んだ条例の改正案を提出するなど、対立路線が鮮明になっていく。
橋下氏は「最初に手をつけるところは全く一緒(笑)。僕も副知事には民間から来てもらったから。反発もあったが、その後も区長や校長、局長や部長にも民間人をどんどん入れていった。スタートが同じ発想だ。でも、副市長を半減させるというなら、市議の数も半減させるって、理屈が通ってる、いやらしいやり方やね(笑)。
とにかく旧来型の議会に風穴を開けようと思うと、ファーストペンギンは本当に大変。でも外から見ていると、これがある意味で政治だなと思うし、銀行員のキャリアを捨てて突撃していく様子は、申し訳ないけれどコメンテーターとしては最高に面白い(笑)。本当に頑張って欲しい。ただ、Twitterに“自分で政党を立ち上げ、選挙を通じて市議会議員を入れ替えればいい”とつぶやいたが、議会で多数を取らないことには政治力は持てない。特に石丸市長が考えているような議会の嫌がることを実現するためには、言うことをなんでも聞くメンバーというよりも、政策論ができるメンバーを入れて多数を取らなければならない」とコメントした。
石丸氏は「変えるためには数を取らないといけないというのはおっしゃるとおり。ただ、私は市長与党というものを作ることに抵抗がある。本来、地方自治は市長と議会に二元代表制で、それぞれが独立していることに意味がある。市長与党が議会を支配してしまっては、独裁になってしまって危ない。だからこそ、私はあえて是々非々で対等の立場で議論ができる環境を目指したい。だいぶ青臭いが…。
ただ、政策論をするのは確かに難しい。日本の政治ではほとんどできていないのではないか。どうしても感情論に支配されてしまい、何が良いか悪いか、本人たちも分かっていないというか。例えば世の中のどんな業界でも言われているコンプライアンスに関わる条例を、安芸高田市議会は否決してしまった」。
改革に熱い思いを燃やす石丸市長だが、「正直な思いを吐露すると、“普通のおじさん”に戻りたいなって思うときもあります。“有名税”ということなのかもしれないが、もともと単なる会社員をしていた人間からすると、自分の顔が知られているということは、人生の中で大きなコストだなと」と胸の内も明かした。(ABEMA 『NewsBAR橋下』より)