なぜ学校を休むのではなく“命を絶つ”のか 夏休み明けに増える「子どもの自殺」に臨床心理士「まずは30分待ってほしい」
【映像】「子どもの自殺」を防ぐ方法
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 夏休み明けに増える傾向にある「子どもの自殺」。防ぐためにはどうすればいいのか、専門家に話を聞いた。

【映像】「子どもの自殺」を防ぐ方法(※専門家が解説)

 近年、子どもの自殺が増加傾向にある。小中高生の自殺者数の合計は2020年に過去最多となり、その翌年も過去2番目に多い状況だ。中でも多い時期とされているのが「夏休み明け」。自殺対策基本法では9月10日から16日までを「自殺予防週間」と位置付け、厚生労働省は啓発事業を広く展開している。

 なぜ、夏休み明けに子どもの自殺が増えてしまうのか。そして、どう防いでいけばいいのか。臨床心理士・公認心理師で明星大学心理学部の藤井靖准教授に話を聞いた。

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「夏休みは自分の自由な時間が増える。人生や人間関係、学校に行くことなどに対していろいろと考え込む時間が長くなって、自分と向き合う時間が増えてくるとより悩んでしまう」

 授業や課題に追われる忙しい1学期とは対照的に、自由な時間が増える夏休みは自分でも今まで気がつかなかった悩みやストレスをより自覚しやすくなるようだ。また夏の暑さによって自律神経が乱れ、疲労が溜まることも精神的なコンディションを崩してしまう一つの要因だという。

 そんな夏休み明けの辛い状態から“学校を休む”のではなく“命を絶ってしまう”理由には、「子どもの真面目さがある」と藤井准教授は話す。

「仮に怠け心があったとしても、多くは『学校に行かなきゃいけない』と自分で自分を縛っちゃっている。そんな子どもたちにしてみれば、次の長期休みまではあまりにも長く、遠く感じて、絶望してしまうことがある。そして子どもの中では、自分の人生あるいは社会が『家』と『学校』のみであるのがほとんど。だから、学校という場を失ったら『自分はもう生きていけない』と感じてしまう場合が多い。成長とともに、あるいは他者や大人、親と対話する中で少しずつ考えを広げてほしい」

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 大切なのは子どもが悩みを抱えていることに気付いてあげられるかどうか。藤井准教授は「まずは心とつながっている“体の状態”に目を向けてほしい」と。

「今まではよく食べていたのにあまり食べなくなる『食欲不振』に『不眠』。いつもはベッドで寝ている時間なのに、ちょっと部屋をのぞいたらまだ寝ていない。そういった“入眠困難”は結構多い。あとは『腹痛』。割と典型的な体の不調だが、週1回以上の腹痛がある子どもの約半分ぐらいは中等度以上のうつ症状があるというデータもある。『体、大丈夫?』『無理しなくていいからね』『休んでいいよ』などと、まずは身体を通して心をねぎらってあげることが、子どもがいろいろなことを訴えてくるきっかけになるかもしれない」

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 まもなく夏休みが明けるいま、悩みやストレスを抱えている子どもたちへ。「死にたい」という思いが浮かんだとしても、「まずは30分待ってみてほしい」と藤井准教授は訴える。

「30分好きなアニメを見るでも、SNSで他の人の投稿を見るでもいい。誰かに電話したり、ただ一緒にいるだけでもいい。お風呂やシャワーを浴びるのもいい。途中で眠くなったら、寝てしまってもいい。いずれにしても30分をいかに乗り越えるかということを考えてみてほしい。そうすると、30分前と30分後では死にたい気持ちの強さが少し、変わっていると思う。それ自体が、あなたが本当に死にたいわけではないことの証明。自分の気持ちを打ち明けるのは本当に大変なことで、すぐにはできないと思うが、まず30分時間を過ごしてみる。その前後の気持ちの変化を自分なりに感じてもらえれば。『そんなことで解決するわけない』と思うかもしれない。でもそう思うのも、本来の自分ではないかも・・って考えてみてほしい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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