“日常動作”がリハビリに はめるだけでトレーニングになる「手袋」開発に携わる医科大学准教授の展望
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(4枚)

 手にはめられている、真っ黒な手袋。一見、何の変哲もない普通の手袋にも見えるが、実は、驚きの機能を秘めているという。

【映像】“反り返る力”を利用 パーキンソン患者にも効果を証明した「手袋」

 奈良県立医科大学の研究チームと奈良で靴下の製造・販売を行う「三笠」が開発したこの手袋は、はめるだけで手指の筋力強化ができるという。はめるだけで筋力アップとは一体どんな仕組みなのだろうか。開発に携わった、奈良県立医科大学の眞野智生准教授に話を聞いた。

眞野准教授「(てぶくろの形が)後ろに反り返るようになっておりまして、こちらの反り返っている側が手の甲側になります。実際にこれを装着すると、手が若干反り返るような形になるので“張力みたいなもの”が働きます」

 手袋は、はめた人の手指に常に反り返る力が加えられる構造。装着した状態で過ごすことで、物を握ったりする際などの“日常動作”で無意識にトレーニングができる仕組みだ。研究チームは、入院中の「パーキンソン病」患者に5日間、この手袋を装着した状態で生活してもらうという実験を実施。すると、装着していない患者の筋力が入院中に低下したのに対し、装着した人は握力などの増加がみられたという。

“日常動作”がリハビリに はめるだけでトレーニングになる「手袋」開発に携わる医科大学准教授の展望
拡大する

 「日常生活で自然に筋力アップを図る」。手袋の開発に至った経緯には、健康な人でも思い当たるようなある“悩み”があると眞野准教授は明かす。

眞野准教授「リハビリテーション科は、『自宅でできる運動』というのを指導しています。ただ、皆さんもそうかもしれませんが自宅で運動をやるというのは、継続率が低いといった問題があります。そういった点から、“意識せずに運動できる医療機器”はないかといったことに注目して、今回の機器の開発に乗り出しました」

“日常動作”がリハビリに はめるだけでトレーニングになる「手袋」開発に携わる医科大学准教授の展望
拡大する

 意識せずに運動できる医療機器。そうした経緯から眞野准教授が目を付けたのが、奈良で靴下の製造・販売を行う「三笠」だったそうだ。

眞野准教授「奈良県というのは、実は靴下の生産が日本で一番なんです。靴下って様々な縫い方があって、それを応用すれば手袋を逆側につけたような、反り返るような手袋が作れるのではないかと考えました」

 こうした経緯から、タッグを組むことになった「三笠」。開発には半年を費やし、数えきれないほどの試作を重ねたという。こうした努力の末、誕生した手袋には開発に携わった三笠奈良工場の工場長・田垣内健さんも手応えを感じていると話す。

田垣内工場長「縫製の技術は全く使ってなくて、すべて『編み』の技術で完成しております。従来の機械ではできなかった“部分的にあることをする”とか“特殊な編み方を重ねる”とか、結構自由が効くようになったので、それを活用して今回の製品の開発に至りました」

“日常動作”がリハビリに はめるだけでトレーニングになる「手袋」開発に携わる医科大学准教授の展望
拡大する

 今後は医療分野のみならず、アスリートなどへの活用も検討していると話す眞野准教授。改良を重ね、より良いものを届けたいと意気込む。

眞野准教授「野球のピッチャー、ゴルファーとかテニス。ほとんどのスポーツが手指の機能って使いますので、活用できる範囲は広くなるのではないかと考えております。そういう方向けにもなると思いますし、高齢者の一般的な健康器具としても使えるのではないかと思っています」

田垣内工場長「眞野先生の方からも、まだまだ改良点が指摘されておりますので、それを打破すべく、素材においても編み方におきましても、もうちょっと一捻りして製品化に繋げていきたいと思います」

(『ABEMAヒルズ』より)

【映像】“反り返る力”を利用 パーキンソン患者にも効果を証明した「手袋」
【映像】“反り返る力”を利用 パーキンソン患者にも効果を証明した「手袋」
【映像】「脳波測定に科学的根拠はない」現在の発達障害の診断基準
【映像】「脳波測定に科学的根拠はない」現在の発達障害の診断基準
【映像】電気刺激に操られる成田氏
【映像】電気刺激に操られる成田氏
成田悠輔氏、電気刺激に操られる!? 身体的感覚を共有できる未来の技術「ボディーシェアリング」を体験
この記事の写真をみる(4枚)