「一時的でいいから助けて」 大学生が生活保護申請も“大学は贅沢品”と門前払い 窮状を訴える弁護士と考える、“貧困の連鎖”を絶つためには
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 「厚労省の社会保障審議会の部会の議論の中間まとめが、大学生への生活保護の適用にとても否定的なものになっています。(中略)『このままではまずい』です!」

 Twitterで拡散され、一時トレンド入りもしたこの叫び。

【映像】「このままではまずいです!」弁護士の“叫び”が話題に

 現在の法律では、生活保護世帯は大学への進学を原則的に認めておらず、進学する場合は親と同じ世帯に住んでいても、生活保護対象から外れる世帯分離をして自活しながら大学へ通うことになる。さらに、親の失職、虐待などで親に頼ることができない場合でも、大学生の生活保護は認められていない。

 生活保護を受ける場合、自動車や装飾品などは売却や処分が原則だが、大学進学も“贅沢品”なのか。1日の『ABEMA Prime』は当該ツイートをした太田伸二弁護士、そして大学在学中に生活保護を断られたNPO法人「虐待どっとネット」代表理事の中村舞斗氏と考えた。

■「生活保護で、一時的でいいから助けてください」

 ツイートの経緯について、太田氏は「8月24日に公開された議論の中間まとめの多くが、大学進学について否定的なものだった。神奈川県議会が大学生の生活保護適用に前向きな意見書を上げてくれるなどいい流れもあるが、何もないまま最終まとめになったら、かなり大きなハードルになってしまうのではないかという危機感がある」と説明。

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 部会の議論では、「修学支援新制度等による教育施策の中で幅広く検討すべき」「奨学金やバイト等で学費・生活費を賄っている学生もいる。一般世帯との均衡を考慮すべき」「保険適用を認めると相当数が対象となるのではないか」「大学進学しなくとも活躍できる機会は多くあり、高校卒業後、直ちに就職する場合の支援についても強化すべき」といった意見が出た。

 これに中村氏は「一般世帯の均衡はわかるが、『保護適用を認めると相当数が対象となるのではないか』という意見が出ているということは、大学生が貧困状態にあることを国は把握しているのではないか。なぜそこに手を差し伸べないのかというのは、この議論の要旨が出た時に疑問に思った」と指摘する。

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 生活保護の受給要件は、収入が最低生活費(厚労大臣が定める基準で計算)以下であること。また、働くことができない・働いても十分な収入が得られない、預貯金や資産(自分が住んでいる住居は除く)がない、他の制度(年金など)で給付を受けられない、親族等から援助を受けることができない、などの状況でなければならない。

 幼少期に母親が育児放棄、祖母からも虐待を受けて育った中村氏は、20歳で通信制高校を卒業後、看護大学進学のため働いて貯金。22歳で入学し、奨学金とバイト代で生活していたが、23歳の時に授業内容から虐待経験が蘇り精神的に不安定になり働けず、生活保護の窓口に相談したという。

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 「一通り話を聞いてくれた後に大学に通っていることを言ったら、“大学は贅沢品なんです。大学に行くなら働けとなってしまうのがこの生活保護なんです”と。申請するなら休学届か退学届を持ってくるようにと言われた。大学進学時はアルバイトなどで生活費がなんとかなっていた場合でも、途中で体調を崩したりして稼ぎがなくなることがある。その時に生活保護で、“一時的でいいから助けてください”というのが私たちの訴えだ」

 太田氏は「ケースワーカーがどういう気持ちで言ったのかまではわからないが、たとえ思いやりがある人だったとしてもそうなってしまうのかなと思う。制度が立ちはだかっていて、担当者も葛藤を抱えているのではないか」と推察した。

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 中村氏は大学を辞めて生活保護を受給することを選択したが、在学中に受けられていれば辞めずに済んだのか。「半年ないしは1年休むことができていたら、復学はできていただろうなと思う」。

■EXIT兼近「大学にいかないと可能性は狭まる。金のために夢や希望を失うのは生き地獄」

 厚労省によると、生活保護受給歴がある人の中で、新世帯も生活保護世帯だった割合は69.6%。つまり、多くの場合で、貧困→満足な教育が受けられない→低学歴・低収入→貧困……という“貧困の連鎖”が続いてしまう。

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 中村氏は「大学を出ないと国家試験を受けられなかったり、企業が新卒一括採用をしている中で、貧困から抜け出すのに一番早い方法は学歴を手に入れることだと思っている。そこに対する支援はどんどん増えてほしい」と訴える。

 太田氏も「虐待から逃れてきた子どもを支援している弁護士は、奨学金を利用するまでの数カ月をつなぐことができないのが一番の問題だと言っていた。その点、生活保護はすごい制度で、14日で受給を決定しなくてはならず、口座がなくてもお金を渡すことができる。時間がかかることで救えない子どもがいるのが問題なので、まず一歩だけでも今踏み出したい」と主張。

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 EXIT兼近大樹は、「今は大学にいかないと可能性が狭まる。やりたいことができなくて、やりたい職につけない。金のために夢や希望を失う日々は生き地獄、格差や納得がいかないことが増えていくと犯罪をうみだしやすくなると思う」とコメントした。

 中村氏は最後に「決して“生活保護で大学に行かせてください”と言っているわけではなく、“困難に陥っても大学生だから生活保護を申請できない”というこの状況を変えてほしい。1つの身分制度に近しいものがあると思っているので、皆さんも今後考えていただけるとありがたい」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
 

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