大熱戦の痕跡が勝率グラフにも表れた。将棋の順位戦A級3回戦が9月7日に行われ、菅井竜也八段(30)が永瀬拓矢王座(30)に200手で勝利した。日付をまたぐ深夜の大激闘。数手ごとに勝率が激しく揺れ動く様子に、ABEMAの視聴者は手に汗を握って両者の指し手を見守った。
ともに1992年生まれ、2004年奨励会入会同期、プロ入りは2009年の前期に永瀬王座、後期に菅井八段、と所属は東西に分かれながらも互いの存在を認め、意識し合いながらA級の舞台まで上り詰めた。両者の対戦はこれまでに9局で永瀬王座の7勝、菅井八段の2勝。節目の10局目の対戦がこの日のA級3回戦となった。
永瀬王座の先手番で始まった本局は、菅井八段の中飛車に。棋界屈指の研究家同士の激突とあり、永瀬王座は大量に消費。難解な中盤戦ではやや有利を築いたが、引き換えにこのタイムマネジメントが終盤戦に響くことになった。
夜戦に向かうにつれ、菅井八段が持ち前の勝負術を発揮。陣形を引き締め本格的な攻撃を開始すると、ABEMAの「SHOGI AI」は菅井八段寄りに大きく傾いた。午後10時30分過ぎには、永瀬王座が1分将棋に突入。対する菅井八段は1時間31分を残していた。記録係の秒読みを合図とするように、永瀬王座が後手陣奥深くに飛車を打ち込むと、今度は勝率グラフが先手方向へ。このまま決めきるかと思われたが、菅井八段の手が緩む様子はない。気付けば、形勢は再び後手に向かって一直線を描いた。
東西を代表するトップ棋士の激突。視聴者も、睡眠時間を削りながら手に汗握る思いで両雄の対局を見守っていた。激しく入れ替わる形勢とあり、「SHOGI AI」の勝率グラフも激しい波形を描く。ファンからは「まるで竜のよう…」「心電図だ」「こんな形見たことない」「すごい形」といったコメントが多数上げられていた。
先手は約2時間にわたって1分将棋を戦い、後手は火花を散らすようにほぼノータイムで応手。永瀬王座は扇子でバタバタと顔を扇ぎ、菅井八段は激しく髪をかきむしって勝利への糸口を必死に探った。最後に勝機を掴んだのは菅井八段。総手数200手、終局時間は0時28分の大激闘だった。
菅井八段は4回戦で佐藤康光九段(52)と対戦。1回戦では斎藤慎太郎八段(29)に敗れたものの、2回戦で藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)を破り、本局でA級2連勝を飾った。2017年度の王位獲得以来、再びのタイトルホルダーへ。初の名人挑戦を目指し、勢いをますます加速させていく。
(ABEMA/将棋チャンネルより)