政府は、今の新型コロナウイルス第7波の収束後、新型コロナの扱いを感染症法上の2類相当から5類に変更するかどうかを検討している。
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先月末、ANNが都内病院にアンケート調査したところ、回答した19病院のうち、9割にあたる17の病院が「5類に変更してほしい」と回答(アンケート対象:確保病床が40床以上ある都内61の病院)。「すでにほとんどのコロナ患者が軽症」「クリニックでも治療できる仕組みが必要」などが理由で、13の病院は「軽症者のみを5類相当にする」「介護施設など重症化リスクのある人が集まる場所では、就業制限の目安を決める」など条件付きでの変更を求めている。
現場で取材を行っているテレビ朝日社会部・厚労省担当の松本拓也記者はこう話す。
「感染症法では『感染症の発生を予防し、まん延の防止を図ること』を目的に、危険度に応じて5つの類型に分けています。この類型によって感染者に対する措置が異なります。例えば、1類は建物の立ち入り制限や交通の制限ができます。2類までは入院勧告、3類までは就業制限などがあり、そのほか、入院できる医療機関も類型で定められています。2類までの感染者が入院できるのは、感染制御ができる設備がある指定医療機関のみです。また、3~5類は一般の医療機関で入院できますが、医療費は一部が自己負担になります」(以下、松本記者)
当初、新型コロナは新しい感染症だったために「2類相当」とされた。
「新型コロナは2類ではないものの、“2類相当”という措置を指定することで、入院勧告や就業制限など、厳格な措置がとれるようになりました。しかし、後に無症状者でも感染を広げる恐れがあるとわかり、外出自粛の適用など1類にも存在しない措置が加わりました。そもそも、新型コロナは従来の分け方に当てはまっておらず『新型インフルエンザ等感染症』という新しい位置付けにされています。ただ、当初の『2類相当』という分類で呼ばれることが多いです」
そもそも、2類から5類に変更されることで何が変わるのだろうか。
「5類には季節性インフルエンザなどが分類されていて、入院する医療機関は限定されていません。外出や就業の制限などを求められることもなく、濃厚接触者なども特定しません。ただ、医療費は、一部自己負担になります。ANNのアンケート調査では、5類への変更について、9割の病院が賛成を示していました。あくまでも都内の一部の病院ですが、今回の調査では、4か所が『速やかに変更してほしい』と回答していて、13か所も条件付きで変更を求めています。『変更してほしい』と回答したのは9割に上りました」
アンケート結果をみると、5類で自己負担になる医療費について「高額のため公費負担を継続すべき」といった意見が目立っている。
「調査で、4割ほどの病院が『公費負担は継続すべき』との考えを示しました。これは新型コロナの治療薬が高額であることが背景にあります。中には30万円を超えるような治療薬もあり、5類に変更されて医療費が自己負担になれば、保険適用で3割負担であっても治療を受ける国民にとっては大きな負担になります。また『患者ごとに措置を柔軟に運用しては?』といった意見もあり、中等症や重症の患者は入院が必要だけれど『軽症の人は5類扱いでいいのでは』といった声もあります」
中には5類への変更に反対の病院もあるようだが、やはり医療費の問題なのだろうか。
「それだけではないようです。新型コロナはインフルエンザと比べても死亡率が高く、厚労省の専門家会合でも示されていますが、京都大学の西浦教授の試算では、一定期間の流行を繰り返すエンデミック(※インフルエンザのような状態)に移行しても、インフルエンザよりも10倍の感染者が出ると予測されています。新型コロナもさまざまな治療薬が出てきましたが、投与できる人が限定されていて、万人に使えるようなものがないことも要因になっているようです」
検討状況を含めて、実際に5類に変更する見通しは立っているのだろうか。
「2類相当でも5類でも、どちらにもメリットデメリットがあります。ただ、感染対策と経済社会活動の両立を目指すなら、いつかは5類にする必要が出てきます。しかし、厚労省の関係者も、感染者がこれだけいると、現状は5類の扱いにできず、議論は早いとの認識です。政府は第7波が収束した後に、5類に変更するかを含めて検討するとしています。岸田総理が掲げるウィズコロナの出口戦略では重要な要素の一つで、部分的に緩和をしていき、段階的に5類に近づけていくとみられます。ウイルスの特性も変わって、海外ではどんどん規制緩和が進められています。自治体や医療機関の要望も聞きつつ、政府には難しい舵取りが求められるでしょう」
(ABEMA NEWS)