“ひきこもり→こもりびと”に変えて3年の神奈川・大和市 呼称変更の意義は? 大空幸星氏「名前が変わったらそのまま置き換わるだけ。本質から逃げていいのか」
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 日本のひきこもり当事者の数は115万人。きっかけはさまざまだが、年代に関係なく、多くの人が社会への参加を拒否している。

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 そんな中、ひきこもりではなく「こもりびと」と独自の呼称をつけて支援を行っているのが、神奈川県大和市。27日から施行されたのが「こもりびと支援条例」だ。本人・家族への相談支援やこもりびとへの理解を深める取り組み、さらに学校や仕事など社会的な参加に向けた環境整備などの支援がスタートすることになる。

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 こうした取り組みにTwitterでは、「社会問題だし支援は必要だよね」「どのくらい効果が出るのかな」「呼び方は変える必要ある?」とさまざまな反響が。26日の『ABEMA Prime』は、市の担当者らを交えこのこもりびと支援条例を議論した。

■“ひきこもり→こもりびと”に 呼称変更の意義は?

 呼称変更の経緯について、大和市で「こもりびとコーディネーター」を務める佐伯隆宏氏は「市長が“言葉というものは、その人を追い詰めることもできれば、その人にエールを送ることもできる”と。“従来のイメージにとらわれず、より温かみのある言葉で”ということから、こもりびとと称することにした」と説明。

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 NPO「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「ひきこもりという言葉が持つ偏見や負の烙印、いわゆるスティグマを解消していくことが本質的な支援で、表面(名前)を変えることではない。『犯人はひきこもりだった』と報道されて、ネガティブな感情を抱かれる当事者、ご家族の方がいる。ただ、こもりびとに名前が変わったらそれがそのまま置き換えられるだけで、『犯人はこもりびとだった』と言われるかもしれない。ひきこもりという言葉は“状態”だが、こもりびとは“人”という属性を決めている。定義することで、制度の狭間に落ちてしまう人がいるのではないか。僕は反対だ」と意見を述べる。

 一方で、ひきこもりに定着したイメージは、言葉を変えるなどしないと払拭されないのではないか。数千人のひきこもり当事者を取材し、大和市にも協力するフリージャーナリストの池上正樹氏は「ひきこもりという言葉が、特に中高年の人ほど責められる“否定のイメージ”だったことで、代わる言葉はないかということをずっと議論してきた。しかし、なかなか置き換えられず、そこで新たに出てきたのがこもりびとだ」と話す。

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 大空氏は「例えば、自ら命を絶った人の遺族は『自死』という言い方で、『自殺』という言葉を使わない。ただ、国の対策や支援団体は『自殺対策』とする。それは、問題の本質から逃げない、諦めないということだ。もちろん、ひきこもりにまつわる様々な問題があることはよくわかるが、そこで諦めて負けを認めてしまっていいのかと。さらに、支援団体も含めて相談窓口を提示してきて、池上さんも含めて社会問題を解決しようと努力してきたのに、またスタート地点に戻ってしまっていいのかという気持ちもある」と率直に語った。

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 では、呼称変更で効果はあったのだろうか。佐伯氏は「相談しやすくなったところはある。大きな事件があるたびに、“ひきこもり=犯罪予備軍である”といった悪いイメージがつきまとっていた。私たちはそうではなく、きっかけや背景は様々だが“誰にでも起こることがある”というところを元に、本人が望まない段階で、特に社会との接触を無理やり作り出すことはしないということを前提に書いている。本人のペースに合わせて、こもる必要があれば寄り添いながらお話を聞いていきたい」とした。

■呼称変更は“日本の病”?

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 大和市は2014年、「60歳代を高齢者と言わない都市」を宣言。2017年に日本老年学会・日本老年医学会が「高齢者の定義は75歳以上」と提言すると、翌年に大和市は「70歳代を高齢者と言わない都市」を宣言した。

 こもりびとと同じように呼称にまつわる話だが、佐伯氏は「高齢者というと“支援される側”だと捉えがちだが、元気な70歳もいるわけだ。高齢者の方が支援する側に回ったり、それぞれが活躍する場を得ることができるということで、これもうまく言い換えながら意識を改革していくところにつながると思う」と説明。

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 これに「BlackDiamond」リーダーのあおちゃんぺは「呼び方だけをぼやかして安心させるのが正しい救い方だとは思えない。高齢者とひきこもり、どちらも自分の置かれている状況を正しく理解したほうが進展すると思う。ドキュンネームがキラキラネームに変わったが、これも結局、少しバカにしたような使い方をされている。名前を変えても意味合いが同じだったらそんなに効果はないと思う」と意見を述べる。

 大空氏は「これが日本の病だ。名前を変えて生活習慣病が減ったのかといえば、世界的にはどんどん増えている。自殺点をオウンゴールに変えたせいで、つたない自己責任だと考える人もいる。表面だけ変えてやったふりをするのでは何も変わっていない。佐伯さんに申し訳ないが、パフォーマンス重視でどんどん変えていく、それに付き合う現場はすごく大変でかわいそうだと思う。やはり支援の本質ではない」と苦言を呈する。

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 カンニング竹山は「両面あって、大和市がこういう取組みをしているのは重要なことだが、呼び方を変えて(相談が)増えたというのは疑問に思う。個人的には、ひきこもりという状態に対して、こもりびとという単語で合っているのだろうか? もっと他になかったのか」と疑問を呈した。

 池上氏は「ひきこもりという言葉では相談できなかった人たちもいる。孤立死や親子共倒れといったことが救われるきっかけとして、つながるということがとても大事になると思う」とした。(『ABEMA Prime』より)
 

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