赤ちゃんの頭が変形している。そんな悩みを相談できる“頭の形専門の外来”を設置する病院が増えている。
食べるときも、外で遊ぶときも、寝るときも、ずっとヘルメットをつけたままのあおとちゃん。
「産まれてすぐ、右の後頭部がボコンと腫れているというか、歪んでいる感じがすぐわかりました」(あおとちゃんの父・大河原有史さん)
産まれたときにはすでに頭部にゆがみがあったというあおとちゃん。大河原さんは、かかりつけ医師のアドバイスで、矯正枕を使用して寝かせる向きを工夫してみたものの、改善される気配はなかった。そこで紹介されたのが「頭のかたち外来」だ。
あおとちゃんの頭は、重度の斜頭症だと診断されたが、『ヘルメット治療』によって約5カ月でほとんどゆがみのないきれいな形になった。大河原さんは「見た感じは全然わからなくなったので、親としては満足しています」と話す。
頭のゆがみなどを心配する保護者らの声を受け、“頭の形”を専門に扱う外来が各地の病院に設置され始めている。6月に“赤ちゃんの頭の形外来”の診療が始まった兵庫県立はりま姫路総合医療センターの小川晴生診療科長は「この10年くらいで各地域、各都道府県で『頭のかたち外来』が増えてきている状況。他の先生にお話をうかがっても『患者さんがどんどん増えてくる』『外来を運営するのが大変になってくる』と聞いています」と話す。
頭のかたち外来の治療は、変形が先天的な病気によるものではないことを確認してから始まる。頭の形の変形には、片側の後頭部が平らになった“変形性斜頭”、両側の後頭部が平らになった“変形性短頭”があり、多くは生後の赤ちゃんの向き癖によって生じるという。
このような病気ではない“頭の変形”は、放置しておくと身体に悪影響を及ぼすのだろうか。小川医師は「全くないかと聞かれると、それはわからない。皆さん、『まっすぐ走れないんじゃないか』『肩がこるんじゃないか』『うまくでんぐり返しできないんじゃないか』などと言われますが、基本的にはあまり心配されなくていいと思います。頭の形のゆがみで身体機能に影響があるということを証明した研究や報告はないです」と説明。
治療の目的は、あくまでも“頭の形の見た目を改善すること”で、生後3~4カ月ころまでは、多くの場合、まず生活習慣や育児習慣の改善を勧めるという。
「例えば、同じ向きに赤ちゃんが向いて寝ないように、ベッドや音が鳴るものの配置を注意するとか、抱っこや授乳の向きとかも気を付ける。それだけでも頭の形が改善する可能性は十分あります」
変形は、成長に伴って改善することが知られているものの、程度が著しい場合は大人になってもゆがみが残る可能性がある。そのため、育児習慣の見直しで改善しなかった場合は、頭の成長の方向をヘルメットで誘導する治療法が提案される。
開始時期は生後6カ月ごろまでが望ましいとされている。「診察や説明を受けて、患者のご家族が『治療を開始する』と判断をしてから、ヘルメットを作成します。スキャンから渡すまでは大体3~4週間かかると思いますので、生後4カ月、首がすわったくらいのころには受診をしていただくのがいいかと思います」。
ヘルメットにはいくつか種類があり、病院によって使用されるものは異なるが、どれもオーダーメイドかつ自費での診療になるため、費用が数十万円かかる。さらに“ほぼ24時間はずせない”ことも、治療を受ける際に悩むポイントだという。あおとちゃんの父親は「特に夏場が大変です。赤ちゃんといえどもすごい蒸れてにおいがするんですね。ストレスがかかっていると思うので『可哀想だな』という気持ちはあります。クーラーはつけっぱなしですね」と話した。
着用し続ける負担や、費用と効果の比較。何もしなくても良くなるかもしれないという期待をしつつも、始めるなら今しかない…。頭のかたち外来の治療では、保護者が短期間でたくさんの判断をしなければならない。
「こういった治療があることを広めていくのも、これからの使命かなと思っています。遠慮せず、しっかりお医者さんに質問して、心配ごとを減らして治療を受ける。そこがとにかく大事かなと思います」(小川医師)
(『ABEMAヒルズ』より)
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