小学生の間で絶大な人気を誇るスポーツ「ドッジボール」。互いにボールをぶつけあう単純明快なルールに加え、ボール1つあればどこでもできる手軽さもあってか、「小学生のよくやるスポーツ・遊びランキング」ではサッカーや野球を抑えて第4位に。
しかし今、Twitterではこのような声があがっている。「子どもがドッジで、2度目の骨折(指)。こんな危ないスポーツ、学校でやらせるな」「ドッジボールという加害性の強いものを小学生にやらせるのは狂ってる。学校では禁止にするべきだろ」。
実際、小学校の時の経験が忘れられないという人もいる。misakiさん(30代)は、ドッジボールで恐怖心を植えつけられてしまったと話す。「運動神経がよくなかったので、キャッチすることもできなかった。ボールが当たるドキドキ感というか恐怖心というか、痛くなくてもまた飛んできて当たるのではないかと」。
特に嫌だったのは、“やりたくないけどやらざるを得ない”という理不尽さ。「授業でやることが終わって時間が余った時に、『何やりたい?』と先生が聞いて、『みんなでドッジボール!』という感じで。私は『マジかよ~、嫌だな』っていう。強制参加が嫌だった」。
学校での指導はどうあるべきなのか。小学生向けのクラブチーム「IRS FINAL」の近藤直真監督は、問題は子ども任せのやり方だと話す。「キャッチのやり方を教えるだけでだいぶ変わると思う。教わっている子たちは、やっぱり痛みはそれほどないのかなと」。
ドッジボールに関する子どもたちへの配慮はどこまで必要なのか。28日の『ABEMA Prime』は議論した。
■日本代表・小川明日香氏「協調性が養われると思う」
ドッジボール日本代表の小川明日香氏は、「学校や教育現場でもぜひやってほしい。上手な子が苦手な子をカバーしたりすることで協調性が養われると思う」と意義を話す一方で、「先生の立ち位置やフォローによるところが大きいと思う」との見解を示す。
とはいえ、協調性は他のスポーツでも養われるのではないだろうか。「他のスポーツと違うのは、男女混合でするところ。小学生であれば体格差もそこまでないので、女の子が活躍できる場でもある」。
「危ないことをやらせないように」という教育現場の風潮に対しては、「ボールを使って相手に向かって投げることで、ケガだったり、攻撃性を助長させてしまうということが言われている。ただ、“試合に勝つために、この子だったら当てられる”と考えることができる小学生がいるのはいいことだと思う」と述べた。
ドッジボールは、学習指導要領で昭和33年に体育科の内容として初めて登場後、平成元年に「例示扱い」になって体育では学ばなくなった。平成29年、いじめを助長する可能性があるなどの理由から完全に姿を消した。
小川氏は「今のドッジボール界の問題点がそこにある。小学校のクラブチームで続けてきたのに、部活もないからできる環境がなくなってしまって、競技から離れしてしまう子が多いと思う」と懸念を示した。
■現役教師「“みんなでやりましょう”という時には適していない」
公立小学校の現役教師で学校教育についての講演会やセミナーなど行う松尾英明氏は、“みんなでやる”という教育方針に問題があると指摘する。
「捕るのもそうだが、苦手な子にとっては捕るのも、投げるのも面白くない。中にいても的になってしまうので、堅いボールが当たるのは苦痛でしかない。みんなでやるよさもあるかもしれないが、それを強制するのは少し問題があるのではないか」
一方で、一律に廃止すべきという考えではないとして、「ドッジボールはあまりにも"的"という考えが強くて、“みんなでやりましょう”という時には適していない。一部の子はすごく好きなスポーツだし、エネルギーが余っている子にとってはいい。周りの穏やかな子たちを巻き込まなければいいと思う」との見方を示した。
学校で行われている「背の順」の整列に対して、身体的特徴による差別との見方がある。この話を引き合いに松尾氏は「例えば今、ここにいる人で『背の順に並べ』『体重順に並べ』と、身体のことを基準に言われたら嫌ではないか」と尋ねる。パックンが「僕は大丈夫」と答えると、松尾氏は「そこだ。いわゆる“強者ポジション”の人は、さっきのドッジボールも同じで気づかない。一番前の子は『背の順は変じゃないか』とは言いづらい。それを学校側がやってしまっていること、全国で普通になってしまっていることに問題があるので、見直すべきではないか」と訴えた。
その他にも、“転ぶから、ぶつかって危ないから”と鬼ごっこを禁止にした学校もあるという。「学校教育の中から危ないものを取り除こうということには賛成しかねる。小さいケガをしているからこそ、大きいケガを防げる面もある。人間関係も含めて小学校の中でぶつかり合いながら、子どもたちは社会で生きていく力を身につけるのが大事だ」とした。(『ABEMA Prime』より)
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