川本真琴「利益がどれだけ少ないか」、一方で「累計収益2000万円」のシンガーも “サブスク”でなぜ収益に差? 現場の実情
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 「サブスクでの利益がどれだけ少ないかを知ってほしい」

 先月20日に投稿されて話題になったこのツイート。投稿したのは、シンガーソングライターの川本真琴だ。

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 「サブスク(サブスクリプション)」とは、一定額払えばサービスが使い放題というシステム。今や音楽だけでなく映画や本、家電、車などさまざまなジャンルで広がり、2021年のサブスクの音楽配信売上は前年同期比で126%になっている。

 「サブスクの否定はしていません」「今音楽活動をしようとしている方が個人的に音源を出す場合、サブスクだけの売り上げでは活動を続けていくのが難しい状況であることを伝えたかったです」(川本のTwitterより)。実際の利益はCDに比べ2分の1どころかもはや雲泥の差だと問題提起した。

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 一方で、「『サブスクは儲からない』というお話、よく聞くんですが儲からないということはないです。今年無事、累計収益2000万円いきました」と投稿したのは、シンガーのSUKISHA氏。同じ業界でも儲かっている人はいるという。

 はたして音楽サブスクはアーティストを潰すのか、それともヒットの光明か。29日の『ABEMA Prime』は現場で活動するアーティストとともに議論した。

■「とにかく金額がCDと比べておかしい」

 収益がCDの100分の1になり「死活問題」と主張する、アーティストで作曲家の松本昭彦氏。2016年に12曲入りのアルバムを発売し、CDでの収益は、「2500円×1000枚=250万円」から流通業者と製造コストを引いて、約100万円。一方のサブスクでは、「再生1回約1円×(約1000回再生×12曲)=12000円」から配信登録料1万円を引いて、約2000円という計算だ。

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 1再生あたりの金額は曲によってばらつきがあり、自身の楽曲がプレイリストに入るかどうかでも大きく左右されるという。

 「みんなが聴いている人気のプレイリストに入れるかどうかで、作品の再生数はまったく変わってくる。プレイリストの売買というのも今はあったりするが、ピックアップされるか確実ではないようだ」

 どこに一番納得がいっていないのか。

 「サービス自体はすばらしいと思う。日本は島国なので、作品を世界中に届けるとするとCDは大変だ。でも、サブスクだと一気に世界中に広げられるし、タイムリーに作った瞬間に出せる。とにかく金額がCDと比べておかしい、その1点が違和感のあるところだ」

■「うまく引っかかるかどうかはTikTokと一緒」

 2000万円の収益を公表したSUKISHA氏はどのように稼いでいるのか。

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 「確かに1再生1円というのは少ないだろうが、単純に聴かれれば入ってくるというのはすごく公正なシステムだと思っている。たくさん曲を作って、“いいな”と思ってもらえたらいろんな人に聴かれて、アルゴリズムで“優れた曲”となればおすすめで出てくるようになる。そういうものが結果として再生回数につながって、お金が入ってくるようになる」

 多くのアーティストが苦労している中で、なぜ自分の楽曲の再生回数が伸びるのか。

 「自分が作っているジャンルの中での嗜好というか、一定の人が好きな曲があって、それがうまく引っかかるかどうか。TikTokとかと一緒で、“この動画面白いな”と思う人がいっぱいいたら広がっていく。自分に嘘をつかずに曲を作って、それをみんなが“いい曲だ”と思った結果だと思う。各論の話で言えば、総合力が高いものはウケると思っている。いいリリックで、いい曲で、いいメロディで、いい演奏があって、いい録音がされているということが全部揃って、かつちょうどよくタイミングが合って届くか届かないかという感じだ」

 ファンであればCDやグッズなどの実物が欲しいと思う人も多いのではないか。

 「それは理解できるが、音楽を作っている人間だから、一番は曲を聴いてほしい。CDを買ってもらうんじゃなくて、“音楽を聴いてください”と。その気持ちを満たすためにレコードがあると思う。インテリアとしても成り立つし、好きな人が多いので。CDよりはレコードを買うほうが満足感はある」

■「一気に聴いてもらえるチャンスがあるのは夢がある」

 ラッパー、アーティストのSONOTAは、自身の活動の現状について次のように明かす。

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 「ライブやMCバトルが終わった後の物販でCDを手売りするのと、オンラインショップでの販売、サブスクもやっている。今、自分の一番の収益は手売りのCDだ。サブスクに関しては、やはり大きいプレイリストに入るのは難しいと感じる。ただ、運よく入れた時に、今まで聴かれなかった層の人たちに一気に聴いてもらえるチャンスがあるのは、アーティスト側からするとすごく夢があると思う」

 SONOTAは今年4月にMC BATTLEに初出場した際、ラッパー・呂布カルマを相手に大健闘したことが話題になった。その影響はあったのか。

 「MCバトルのファンと楽曲のファンというのは、けっこう二極化している。バトルをすごく見るヘッズと、曲を聴いているファンで分かれていて、そこがうまくつながっていないのは悩んでいる」

■未だCDやレコードが主力「こんな国は日本だけだ」

 世界と日本の配信売上の差は歴然だ。ストリーミングやダウンロードなどの割合はアメリカが89.1%、イギリスが78.4%、ドイツが76.4%であるのに対し、日本は40.9%。未だにフィジカル(CDやレコードなど)が主力となっている。

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 音楽ビジネスに精通するジャーナリストの松谷創一郎氏は「こんな国は日本だけだ」とし、「アメリカは今10.9%がフィジカルだが、アナログレコードがCDの倍売れている」と説明。その上で今後は日本でも配信が増えていくだろうとの見方を示した。

 「CDがこれ以上売れることはない。握手券などと一緒に売ってきたが、もう戻ることはできない。例えば、ジャニーズの『Travis Japan』というグループが全世界配信デビューをする。ジャニーズが一番フィジカルに依存していたが、そこが配信をやると言ってしまったわけで、ここからかなり変わってくると思う」

(『ABEMA Prime』より)

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