4日午前に北朝鮮が発射した弾道ミサイルは青森県の上空を通過し、過去最長の4600km飛翔した。北朝鮮のミサイルが日本上空を越えたのは2017年9月以来、およそ5年ぶりのことだ。
今後の核実験への警戒も高まる中、その脅威に日本はどう向き合えばいいのか。4日の『ABEMA Prime』は専門家を交え議論した。
■元海将「2017年の再来かと思っていたが、ここにきて牙をむき出してきた」
北朝鮮の目的について、元海上自衛隊海将で金沢工業大学・虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸氏は「通常のミニマムエナジー軌道でどこまで飛ぶかをずっと実験したかったのだろう」と指摘。「2017年9月の飛距離は3700kmで、今回は4600km。5年間で成長したと言われるが、そうではなくて発射の仕方だけだ。前回の高度は800kmだったのを、今回は角度を上げて1000kmまで。“同じエネルギーで撃てば飛ぶ”ということで一定の評価をしたと思う。ただ、北朝鮮はどこに落ちたのかはたぶん知らない。船を太平洋側に出して信号を取らないとできなくて、5年前は1回失敗しているのに『バンザイ』と言っていた。明らかにわかっていなかった」と背景を付け加える。
今回のターゲットは「グアム」で、基本的にはアメリカを意識しているという。「北朝鮮は1月20日、トランプと約束した“核実験と大陸間弾道ミサイル発射のモラトリアム(一時停止)”を反故にすると言った。今年は2017年の再来かと思ったが、ここにきて牙をむき出してきた感じだ」。
では、日本は今の状況を見守ることしかできないのか。「本来は日米韓という3カ国が一体になって、軍事のみならず外交、経済などいろいろな面から押さえ込むことが必要だ。残念ながら、北朝鮮にとって日本の位置はミサイルの実験場。本当にグアム方面に撃ってアメリカを激怒させたら自国が崩壊するので、東にしか撃てない。見えないだけで、北朝鮮はロシアなどにおびただしい数のミサイルを撃っている。それを知っている人間からすれば、(東方向へは)かわいいくらいの数だ」と述べた。
今回、ミサイルによる被害が想定されなかったことから破壊措置を実施しなかったという。伊藤氏は「当たるか飛び越す時にはJアラートを出す。私が現役当時に見ていた時は、1、2分で落ちる位置がわかるので、これを官邸が判断して、総務省が流す」と説明しつつ、必要性については「海上自衛隊のOBもみんな煽るが、逆効果だと思う。日本を飛び越すと最初からわかっているのにJアラートをわざわざ鳴らして、宇宙を飛んでいるものをまるで飛行機が飛んでくるように思わせてしまう。私は“正しく恐れろ”と話すが、わざわざ誤解を与えることが本当に必要なのか」と疑問を呈した。
■「本当の脅威は中国の核ミサイルだ」
8月22日から9月1日に米韓軍事演習、9月30日には日米間共同訓練が5年ぶりに実施され、北朝鮮のミサイル発射はこれらへの反発とみられている。
防衛研究所研究員の浅見明咲氏は「北朝鮮はかなり前から“米韓軍事演習を中止しろ”と要求しているので、それを強化することはモラトリアムを破ることにつながる。米韓としては、そこは強化していくけれどもどうバランスを取っていくかというところも考えている」と話す。
伊藤氏によれば「北朝鮮は完全に今、孤立している状態」。「戦力上、ミサイル以外は第2次世界大戦末期のものだから、戦ったら5日でなくなる。それをわかっているので、演習に対して反発する。『B-2』という長距離ミサイルを持った爆撃機が飛ぶだけでもキーッとなるのは、北朝鮮のどこにでもミサイルが届くから。彼らからすれば本当に恐怖なんだと思う」との見方を示す。
アメリカの研究グループ「38ノース」は、9月下旬に北朝鮮北東部の核実験上で、クレーンを搭載したとみられるトラックの近くで高さ約11m、幅約1mの白い物体を確認したとして、7回目の核実験の準備を進めている可能性を指摘している。
浅見氏は「次に小型化に関する実験をするだろうという見方は、6回目が終わった時点で強くあった。今年に入っての多様なミサイル、それらに小型化された核弾頭を積める可能性というものを示すための実験になるかと思う。小型化に成功すれば、“火星12の性能と合わさった時にどうなるかわかるだろう”ということを振りかざしてくる可能性があるので、非常に注目していかなければならない」と懸念を示した。
一方、核を保有しているのは北朝鮮だけではない。伊藤氏は「どうしても日本政府は『北朝鮮のミサイル防衛』と言うが、いい加減、ごまかすのはやめたほうがいい。本当の脅威は中国の核ミサイルだ。そこがすっぽり抜けて『北朝鮮は~』と言っているのを見ると、どうしてもそういうふうにしかいけないんだなと思う」と苦言を呈する。
浅見氏は「日本もそうだし、アメリカが北朝鮮を超えて中国を見ているからこそ、日米同盟、米韓同盟の強化、日米韓も含めての安全保障協力を進めている。北朝鮮のこういったミサイル発射実験を注視していく必要はあるが、その先の中国というものも、またさらに日米韓が協力していく理由になると思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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