ものづくりのイメージが強い高等専門学校、高専。来年4月、19年ぶりに設立される「神山まるごと高専」が独自の施策で注目を集めている。
高専、高等専門学校とは、仕事に活かせる実践的な教育を学ぶために設置されている5年制の学校。ロボコンのようなものづくりを学ぶ理系の学校というイメージが強く、学費も普通の高校より高そうだが、神山まるごと高専の松坂事務局長はこう話す。
「まず私たちは学費の実質無償化ということに取り組んでいる。実質無償化というのは、学費にかかる分と同じ額の奨学金。同額の給付金を出すため、実質的に無償になっているという取り組みだ」
神山まるごと高専は私立の高専で、年間の学費が200万円となる予定。生徒一人当たり、卒業までで1000万円かかる計算だが、これと同額の給付金を支給することで、実質無償化しようというのだ。
「ひと学年が40人で、1年生から5年生と全部そろうと200人。毎年4億円の奨学金を給付していく」
実に壮大な計画だが、その財源は一体どこから出すのだろうか――。その手法こそが、注目を集めたポイントだったのだ。
「スカラシップパートナーといういろんな企業に参画いただいて、一社当たり10億円出してくれる企業を10社集めて、10社×10億円で100億円の基金を作る。その奨学金の基金を運用して、稼いだお金を運用益として私たちが受け取り、そしてそれを(生徒に)寄付していくと。年利5%で運用する。そうすると年間5億円、運用益として出る。その運用益というものを学校の方でしっかりとまわして、その上5億円を寄付していこうと」
1社あたり10億円というとんでもない金額。一見無謀にも思えるプランだが、名刺管理サービス「Sansan」を起業した寺田親弘社長を始めとした発起人たちの思いに応える形で、SONYやSoftBankといった日本を代表する企業が支援に名乗りを上げた。
さらに学校が資産運用するという手法。実は世界の名だたる大学が既に長年取り組んでおり、アメリカ・ハーバード大学の基金は2021年に532億ドル、運用実績は34%を記録している。
神山まるごと高専の運用益年率5%という目標は、かなり堅実だと松坂さんは話し、目標に到達しなかった場合でも奨学金は基金から拠出されるという。そんな神山まるごと高専は、他の学校と異なる目標を掲げている。
「起業家を育てていこうというコンセプトの学校。テクノロジー×デザイン×起業家精神。この3つを、学習することで世の中を変えていけるようなものを作る力でコトを起こす人。そんな人たちを育てていきたいと。
例えば、3Dプリンターみたいなものが世の中に広がってくる、テクノロジーが発達することで、専門的な機械が必要だったものを自宅で簡単にできるようになってくると。そうすると物が溢れてくるので魅力的なものが残る時代になってくる。そのテクノロジーというものだけが発達しても、結局人に届かない。使い続けようと思う人がいないと、かっこいいとかかわいいとか素敵だなと愛されるもので、ただテクノロジーの力だけではダメで、デザインという要素が欠かせないだろうと。そして、多くの人たちがその価値を受け取って初めて社会って変わっていくので、起業家精神というものが最後欠かせないだろうと。
それをトータルで学ぶことによって、そんな風に自分から何か新しい価値を生み出したり、新しいことを起こして社会に変化を及ぼしていけるような、そんな人たちが育って行ったら嬉しい」
独自の施策やコンセプトで注目が集まる、神山まるごと高専。最後に松坂さんへ、どんな学校にしたいかを聞いた。
「いろんな取り組み自体を取り上げてもらっているが、全部何のためにやってるかというと、学生たちが主役だと思っているので、とにかく学生が5年間成長して『こんなに成長できた5年間ないね』と言って社会に羽ばたいていく。そんな学校にしていきたいなと」
(『ABEMAヒルズ』より)
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