コロナの水際対策が大幅に緩和され、街には外国人観光客の姿が戻ってきた。ただ、よく見るとマスクを着けていない人の姿も。しかし、これは決して悪いことではなく、政府は屋外でのノーマスクを推進中で、新たな着用ルールも検討するとしている。
一方で、中には着用しないことに不安を覚える人も。街で聞いてみると、「人ごみが多いと感染リスクが多いんじゃないかと思ってマスクしちゃう」「科学的に安全だときちんとさせること。もう1つは、リーダーの方が積極的に外していく方向になれば習慣になる」といった声があがる。
果たして、日本はノーマスクに戻るのか。11日の『ABEMA Prime』は議論した。
■マスクは“もはや文化”の学生「サングラスみたいな存在になればいいなと」
現役東大生で、マスク着用は「感染予防の効果もある」「自分にとってはもはや文化に」と考える伊藤さん。「学生にフォーカスを当てると、毎年のように属するコミュニティが変化する点で、大人とは違うなと思っている。新しい人との関わりも、自己紹介からマスクだったので、今さら口元という“新しい情報”を公開することに恥ずかしさを覚える」と話す。
「外すことで生まれるコミュニケーションや、新しい情報を加えるということは大事だと思っているので、外してもいいかなと思っている。ただ、“積極的に外す”ことに向け、何かをしようという気はあまりない」
伊藤さんは急激な変化を求めると別の同調圧力が生まれたり、感染対策の意味が薄れたとしても「着用する自由」はあるべきだと考えているという。「言ってみれば、サングラスみたいな存在になればいいなと。病気のためにつける方もいるし、精神を安定させるため、オシャレでつけている人もいる。それは各人が自分なりの価値観を持っているものなので」と語った。
■国によるルール策定に乙武洋匡氏「国民は『俺たちに判断させろ』って怒るべき」
精神科医で国際医療福祉大学大学院教授の和田秀樹氏は、子どもがマスクをつけ続けることなどのデメリットを主張する。
「よちよち歩きをしている子どもが、母親がニコリと笑うと前に進む、厳しい顔をすると止まるという実験がある。まだ言語ができていない時に、顔つきでコミュニケーションをしていることがわかる。そういう経験が減ってしまうことが、将来的な危険としてかなりあるのではないかと思う。もう一つは笑顔の効用だ。街を歩いている時にニコニコしている人の顔を何人か見るだけで、心理的な安心感を得るという効果がある。これはうつの予防といったことにもつながるので、いろいろな意味でマスクを外すメリットは大きい。ただ問題は、日本人は病気に対する怖がり方が他の民族よりも強いことと、同調圧力が強いこと。かなり強い姿勢で『外すべきだ』としないと、そうできない人たちは多い」
また、マスクの有効性についても疑問を呈し、「いくつかのデータを見る限りだとそんなに有効性がない。さらに、ウイルスの種類が変わっている。どうもオミクロン株以降は、飛沫感染から空気感染に変わったというのが説もある。空気感染の場合、例えばパーテーションも意味がないし、ウイルスの大きさと不織布の網目の大きさも桁違いだ。“人に飛沫を飛ばさない”ということが考えられてきたが、それも怪しくなってきた」との見方を示した。
作家の乙武洋匡氏は、7月の参院選に出馬した際、屋外で自分はマスクを外す、ボランティアは任意で、という方針を選んだとした上で、「本来、僕らはもうちょっと怒らなければいけない話だと思っている。いろいろな状況の中で各自が判断すべきことを、首相が『国全体としてルールを定めます』と言ってる。ふざけんなと。『国でルールを定めるんじゃなくて、俺たちに判断させろ』と怒るべきなのに、固唾を飲んでそれを待っている感じがする。この滑稽さは数年前の『プレミアムフライデー』に似たものを感じる」と訴える。
和田氏は「多くの人たちが“マスクを外していると白い目で見られる”とか、“差別を受ける”“非難されるだろう”とビクビクしながら生きている現状があるわけだ。実際に厚労省は『外では外してもいい』と言っているのに、外さない人が7割いる。“安全宣言”みたいなものを出してもらわないと外せないのではないか」とした。(『ABEMA Prime』より)