2024年秋までに今の健康保険証を原則廃止、マイナンバーカードとの一体化に向け、政府が本格的に動き出した。現在、マイナンバーカードの普及率は49.6%。取得は任意だったが、保険証との一体化は事実上の義務化を意味する。
今回の発表にTwitterでは「保険証の不正利用が減っていいと思う」「行政手続きの簡略化は役所の経費節減にもつながる」という賛成の声が見られた一方で、「すべての個人情報が入ったカードなんか持ち歩きたくない」「国に監視されているようで怖い」「全部一本化したらカードの再発行の時大変じゃないか?」など懸念や不安の声が大半を占めていた。
一体化のメリット・デメリットについて、13日の『ABEMA Prime』は議論した。
今回の発表について、内閣府大臣補佐官の時にマイナンバー制度を担当した、元衆議院議員で多摩大学客員教授の福田峰之氏は「当時、与党と一緒にロードマップする中で、すでに保険証も免許証の一体化や、スマホに入れることも議論していた。もう少し早くても良かったと思うが、ちょうど今がタイミングだと理解している」と話す。
普及率は5割のマイナンバーカード、一体化のメリットについては次のように説明する。
「国民側としては、治療歴や薬といった健康情報、医療情報を掌握できるのがまず1つ。もう1つは、例えば交通事故にあって救急で運ばれた時、医者がその人の情報を把握できる。政府側あるいは医療機関としては、なりすましを防げること。写真付きであることには大きな意味がある。ただ、過渡期の不便さに関してなどに関しては、政府は素直に認めたほうがいいと思う」
一方のデメリットについて、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「メリットを感じないところが大きい。福田さんがおっしゃるとおり過渡期だが、できることが本当にない。保険証に関しては、この10月から大手病院に初診で行った人が7000円以上上乗せされることになった。つまり、“いきなり来るな”ということ。それで町のお医者さんに診てもらってくださいとなるが、大学病院などと違ってマイナカードを使える所がない。そこがデメリットだと思う」との見方を示す。
これに福田氏は「国はある意味で真面目すぎてしまう」と応じた上で、「例えば、制度設計が始まった時に“世界観”を先に伝えなかった。こういう申請をしてくれ、役所に行ってこうしてくれという説明ばかりで、“マイナンバーカードを持ったらこんな世界観が待っているんだ”と伝えずに進んできてしまった」と反省と教訓を語った。
さらに荻原氏は「デジタルに関して裏切られていることが多い。『COCOA』もあんなに大騒ぎしてみんな一生懸命入れたが、ダメだった。デジタルに関するこの国の信頼力がないのだと思う」と述べた。
政府は、デジタル化の実現へ「誰一人取り残さない」と打ち出しているが、高齢者などは対応が難しいのではないか。福田氏は「課題としてそれはわかっている。家族がいる人は息子さん・娘さんに手伝ってもらう、一人暮らしの人は地域のデジタル版民生委員みたいな人、あるいは区役所や市役所の人がサポートする。これを幾重にも重ねていって、できるだけ登録者を増やしていくしかない。デジタル社会は全部がデジタルではできなくて、実はアナログでつくる。その仕組みをもっと充実させる必要がある」とした。(『ABEMA Prime』より)