人気の位置情報アプリが突如サービス終了を発表。SNSで「マジで便利だから消えないで」「有料にしていいから続けてほしい」など、悲しみの声が広がっている。
【映像】“究極の個人情報”をなぜ共有? 背景に「常時接続の欲求」
位置情報アプリ「zenly」の日本向けTwitterアカウントは9月14日、「近い将来サービス提供を終了する予定です」と報告。具体的な日程は未定というものの、決まり次第案内するという。発表のきっかけとなったとみられるのが、2017年にzenlyを買収したSnap社の“ビジネス再構築”。Snap社は、CEOのエヴァン・シュピーゲル氏が従業員に宛てたメモを公表。そこでサービス終了を明らかにした。
友人や家族、恋人など繋がりあった人同士で位置情報を共有できるzenlyは、プライバシーが漏れる危険性が指摘される一方、待ち合わせなどで活用する若者を中心に、その機能が支持されていた。
若い世代を中心に浸透する位置情報の共有。『ABEMAヒルズ』番組キャスターで元SKE48の柴田阿弥は「アイドルをやっていた身からすると理解できない」と話す。
「同世代だとやっぱ彼氏と共有してるみたいな子が多い。下の子とかだと3~4人くらいの仲良しグループで入れてる感じ。(位置情報を共有する人たちは)『私たちって位置情報も共有するくらい仲良しだよね』みたいな証明として使ってる」
「私は前職アイドルをやっていたので、位置情報を知られる=物理的な死。だから、絶対に嫌だと思って理解はできなかった」
『ABEMAヒルズ』に出演したBuzzFeed Japan編集長の神庭亮介氏は、柴田アナの意見に賛同を示しつつ、「キーワードは“常時接続”だ」として、自身の考えを次のように述べる。
「若い人たちを中心に、いつでもどこでも『繋がっていたい』という欲求がある。位置情報共有アプリに限らず、“寝落ち通話”と言って、寝るまでずっとLINEを繋ぎっぱなしにしてみたり、Instagramのライブ機能で一緒に時間を共有したりもする。究極の個人情報である位置情報を共有し合うことによって、より繋がりを深めているのではないか」
「私が新聞記者をしていた頃でさえ、上司に『今、どこにいる?』と聞かれたことは一度もなかった。深夜早朝の呼び出しもある忙しい仕事だが、『今すぐ現場に行ってくれ!』『どれくらいで行けそうだ?』はあっても、プライベートに踏み込むような『今どこ?』だけはやめよう、という配慮があった。仕事でもないのに位置情報を明かし合うというのは、カルチャーショックではある」
「何かに似ているなと思ったのが、小学生が連れ立ってトイレに行くあれ。位置情報共有アプリは『遠隔連れションアプリ』。いまや日本中が巨大なトイレになったようなものだ」
一方で、位置情報の共有には危険性もある。8月13日、北九州市で、母親と高校生の娘が男に刃物で刺される殺人未遂事件が起きた。容疑者は、GPS機能を使用して東京から被害者宅に押しかけてきた可能性が指摘されている。
こうしたケースについて、神庭氏は「保護者や学校側からもリスクを伝えてほしい」と訴える。
「本当に怖いのは、Twitterなどで『自分の位置情報共有アプリのアカウントはこれだよ。友だちになってね』という形で、不特定多数に公開しているケース。また、『仲のいい人、交際相手や友だち、家族同士なら大丈夫』という考えにも問題がある。実は、ストーカー事案はまったくの他人よりも、元交際相手や元夫婦など、見知った人で関係が濃い人が豹変するパターンの方が多い。“位置情報をさらせるくらい親しいから大丈夫”と思っていた人が、何かの拍子にストーカーになるリスクも考えておかないといけない」
「若い人の繋がりたい気持ちをすべて否定するわけではないが、リスクも含めて保護者や学校から伝えてほしい。zenlyが無くなったとしても、別のアプリに乗り換えたり、大きなプラットフォームやSNSが“位置情報サービス”を新たに始めることもあり得る。今後も、注視していかなければならないと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)