霊感商法への対策などを議論してきた消費者庁の対策検討会が17日、報告書を公表した。一体どのような内容が提言されたのだろうか。
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公表された報告書について、同検討会を継続して取材してきたテレビ朝日・経済部の消費者庁担当の本田紗衣記者はこう話す。
「安倍元総理の銃撃事件以降、旧統一協会の問題が表面化してきました。報告書を紐解いていくと『消費者契約法の改正』『宗教法人法』『相談体制の拡充といわゆる宗教2世への支援』『周知啓発と消費者教育』の4つのポイントに分かれます」(以下・本田記者)
本田記者によると、消費者契約法の中に、霊感商法に関する法律があり、2018年の消費者契約法改正によって、霊感商法に対して契約の取り消しが可能になったという。
「霊感商法というワードが使われている法律は、この消費者契約法しかありません。しかし、この取消権を実際に行使した裁判例は、消費者庁でも確認できてないそうです。この取消権については、今回の検討会でもかなり議論になり『この法律では要件が絞られすぎていて、使い勝手が悪い』という意見が相次ぎました」
なぜ、これまで取消権が使われてこなかったのだろうか。
「取消権は、打ち消し可能な期間として、現在は契約から5年、もしくは被害に気が付いたときから1年間という時効が設定されています。また、今のままでは適用範囲があまりにも狭すぎます。検討会でも『もっと網を広くかけられるように』という意見や、不当な勧誘によって契約した場合でも行使できるよう、対象範囲を拡大しようという提言がありました」
2つ目のポイントとなる「宗教法人法」とは。
「宗教法人法は文部科学省が所管する法律です。しかし、この宗教法人法には現在、悪質な献金や、高額献金を禁止するルールが全くありません。一方で、公益法人に対する公益法人法という法律では、悪質献金を禁止するルールが定められています。報告書では、公益法人法を参考にして、不安を煽ったり、合理的な判断ができない状況で付け込んだりした場合などにおいて、寄付などの取り消し・無効化ができる規定を作ろうという提言がありました」
安倍元総理銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者は、旧統一教会を含む宗教に入信した親元で「宗教二世」として育てられた。検討会の座長は、これまで対応をしてこなかった文部科学省にも「消極的な態度を示しており、猛省を促したい」と強い言葉で批判したが、今後、元信者や宗教二世へのサポートはどのようになっていくのだろうか。
「相談体制ですが、現時点でも全国の消費生活センターや、事件を受けて政府が設置した相談窓口があります。その中でも霊感商法に関する被害に関しては、精神科医や宗教社会学者、弁護士など、あらゆる専門家と連携して相談を実施していくべきだという提言が出ました。また、宗教二世は『児童虐待・ネグレクトの問題でもある』という考えを視野に、きちんと保護をしていく方針も示しています」
提言には、幅広い世代への消費者教育の推進なども盛り込まれた。
「一番は被害を未然に防止することです。すでに国民生活センターが出しているチラシでは『開運商法にご注意』といった文言が掲載されています。これは旧統一教会を念頭に出されたものではありませんが、今後はこういった広報用のチラシに具体名を出すことを視野に検討をしていくそうです」
また、今回の提言に盛り込まれなかった「年収制限」や「家族による財産管理」について、本田記者は理由をこう説明する。
「検討会では『献金は年収の何割まで』といった上限規制についても意見が出ました。ただ『年収の何割まで』というと、教会が信者の年収を把握してしまうことにつながりますので、提言することは見送られました。なので、提言としては入っていませんが、報告書には記載されています。また、消費者庁の調査では、旧統一教会に関する相談の6割近くが家族などの本人以外からでした。『家族による財産管理』によって、契約した本人以外でも取消権を使うことができたらいいのではないかといった指摘もありましたが、これも提言としては入っていないけど報告書に記載されています。妻が買ったものについて、夫が『妻が前後不覚になっていたので、キャンセルします』と勝手に言えてしまうことになりますので『家長制度の復活だ』という関係者の意見もあり、提言には入れられませんでした」
検討会からの報告書を受けた消費者庁は18日、被害者救済に向けた法整備の検討を進める「法制検討室」を設置した。今後は、被害者救済や被害の未然防止に向けた法改正の準備を進めるとみられている。(ABEMA NEWS)