楽器に降り注いだのは「死水」? スプリンクラー作動でオーケストラずぶ濡れ、被害“数億円”か 楽器修理・消防設備の専門家の見解は
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 オーケストラのコンサート直前、楽器が水浸しに——。2022年9月24日、静岡県裾野市の市民文化センター大ホールで、突如天井のスプリンクラーが作動した。楽器などの被害総額は数億円規模にのぼるといい、5人が転倒してケガを負ったという。

【映像】“ずぶ濡れ”現場の様子

 裾野市は、スプリンクラーは手動式で、事故当日の点検では異常や故障がなかったとして、人為的要因も視野に入れて警察に相談していると説明。一方、被害を受けたオーケストラ「シンフォニエッタ静岡」は、市や施設の指定管理者から具体的な説明がないとして「泣き寝入り」を心配している。

 『ABEMA的ニュースショー』は、裾野市へ電話取材するも、代理人に報道対応を任せているとの回答を得た。代理人弁護士によると、スプリンクラーの点検業者・製造元は「異常なし」としていて、裾野市は客観性の観点から、事故調査委員会の立ち上げを決めたが、「誤作動・機器不良も含めて専門家に見てもらわないとなんとも言えない」(代理人弁護士)。裾野市は、徹底的に調査していく方針で原因究明に努めるが、「現段階ではコメントできない」としている。

楽器に降り注いだのは「死水」? スプリンクラー作動でオーケストラずぶ濡れ、被害“数億円”か 楽器修理・消防設備の専門家の見解は

 中川みち子弁護士(AZ MORE国際法律事務所大阪事務所)は、人為的もしくは過失でスプリンクラーを作動させてしまった第三者がいるかどうかを論点として挙げた。その上で、もしスプリンクラーの設置や保存に問題があれば、管理団体や所有者である市に責任を問うことができるという見解を示す。ホールを管理しているところは、保険を掛けていると思われるが、過失がなければ保険金も出ないため、まずは調査を行わないと何も動かないと指摘する。

 被害を受けた楽器は、修理できるのか。楽器修理専門工房のミルズ(MIRS)の山上充統括部長によると、楽器の形を保ったり、動くべきところが動くようには直せるが、そこから音色も、全く水をかぶる前と同じにするのは「至難の業というか、基本的には不可能」だと語る。

楽器に降り注いだのは「死水」? スプリンクラー作動でオーケストラずぶ濡れ、被害“数億円”か 楽器修理・消防設備の専門家の見解は

「一般の方が吹かれている楽器が、たとえば『大衆車』だとすると、プロの方は『F1マシン』。ギリギリのところを攻めて、一番響く状態にセッティングしていると思うので、すごく繊細な部分。(大規模な修理は)吹いた感じが変わってしまうので避けられる方が多い。今回みたいに意図しない形で、全くコンディションが別になるのは、気持ちが追いつかないのは想像に難くないかなと」(山上さん)

 スプリンクラーのスペシャリストである吉村拓也さん(WAVE1代表取締役)は、写真や状況から、今回の設備は「開放型スプリンクラー」だと推測する。基本的に劇場や舞台に付いていて、一気に燃え広がる危険性に備えて、大量の水が出るようになっているという。

 吉村さんによると、噴き出す水は、建物地下の水槽から引かれることが多い。何年も動かないため腐ってしまう「死水(しにみず)」と呼ばれ、臭いが発生することもあるという。誤作動の可能性については、珍しい設備なので事例はないが、「構造上なくはない」と指摘する。

楽器に降り注いだのは「死水」? スプリンクラー作動でオーケストラずぶ濡れ、被害“数億円”か 楽器修理・消防設備の専門家の見解は

 では、人為的に散水された可能性はあるのか。シンフォニエッタ静岡の植田明美楽団長は、スプリンクラーのレバーはステージ両脇に2つあり、近くには楽団関係者とホール関係者がいたが、水が降り始めた時点でレバー周辺に人が居なかったのを見ていると話す。

「(楽器の被害に加えて)楽譜が濡れたことがつらかった。楽譜はオーケストラが長年紡いできた歴史そのもの。それを廃棄しなければならなかったのは、精神的に相当きつかった」(植田さん)

ABEMA『ABEMA的ニュースショー』)

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