衆参合わせて97人と、圧倒的な国会議員数を擁する自民党の最大派閥・清和政策研究会(安倍派)。安倍元総理大臣が亡くなって、3カ月が経った今、後継者が誰になるか、注目が集まっている。
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「今現在、安倍派の後継者は何も決まっていません。国葬が終わり、県民葬が終わるまでの間に『新しい体制を発表したい』という意向はありました。しかし、97人の大所帯になると、一部で決めたとしても、全員が納得する形はやはり難しく、近くに総裁選があるわけでもないので、時間をかけて決める結論に至りました。特に若手中心に“安倍派”の名前を残したいという思いが強いです」(以下、テレビ朝日政治部・小池直子記者)
上がっている候補は、松野官房長官、高木国対委員長(安倍派事務総長)、西村経産大臣、萩生田政調会長(安倍派幹事)、世耕参議院幹事長(安倍派清風会会長)、そして、現在安倍派の会長代理を務める塩谷元文科大臣の6人だ。
「今はこの6人で顔を合わせて、安倍派をどうしていくのか協議を重ねています。実際、安倍元総理が亡くなった後、世代交代への動きがありました。その中で、松野氏、高木氏、西村氏、萩生田氏、世耕氏の5人の顔ぶれが揃いました。ただ、やはり皆さんライバルですので、誰かが突出して、突然派閥の会長になるのは収まりがつかないんです。必ずしも、全員が会長になりたいわけではなく、代理の塩谷氏もそれほどギラギラしている人ではありません。一方で、同じ会長代理の下村博文前政調会長はどちらかというと、かつては『総裁選に出たい』という動きを見せていました。ただ、下村氏が会長になってしまうと世代交代にもなりませんし、派内が分裂しかねない状況になるので、野心があまりない人をトップに据えようという意味合いで、下村氏ではなく、塩谷氏が会長代理に担がれました」
なかなか決まらない安倍派の会長職。ここで登場するのが、過去に会長職を経験した森喜朗元総理だ。
「森氏の元には、いまだに多くの国会議員が相談に訪れます。そこで、参議院の現職大臣らが『このままでは塩谷派になってしまう。参議院の議員はついていけない』と、森氏の元に訪れました」
塩谷氏と森氏の仲は悪いのだろうか。
「仲が悪いわけではありません。塩谷氏も森氏に仁義を切りに行きました。そこで、森氏が『自宅を担保にお金を借りるぐらいの覚悟はあるのか?』と聞いたそうです。派閥の会長になるのは、もうそれぐらいのことをして当然だと。森さんご自身も、かつて東京・用賀にあるご自宅を担保にお金を借りて派閥の運営をされていた経験もありますので、それぐらいの覚悟を求めたのでしょう。塩谷氏は、それにシーンとなって帰ってきたという目撃情報が寄せられています。森氏氏は現職の国会議員ではありませんが、いまだに力は強く、一節には『バカみたいな塩谷派はやめろ』と言った情報もあります」
結局、執着点はどこになるのか。小池記者は「森氏自身は、萩生田氏、西村氏、世耕氏の3人による共同代表制を取るべきだと言っている」と話す。
「もちろん、代表を1人にするのが最善なのは間違いありませんが、97人の大所帯を分裂せずに、まとめ上げることができる圧倒的カリスマ性のある人は、なかなかいません。安倍晋三さんのような、いきなり取って変わる人はいませんので、複数人による共同代表の制度を取れば『分裂しなくて済むんじゃないか』というお考えが森氏にはあるようです。かつて、自分が会長をやったあとの後任に、参議院から谷川、衆議院から町村、中川の3人を指名し会長に据えたことがあり、自分が会長をやった後に次の代に、参議院議員を3人、会長に据えたことがあり、自分の経験からも複数人による共同会長は『別に悪い話ではない』と思ったようです」
一方で、共同代表制には候補者から反対の声も上がっている。
「安倍元総理亡きいま、共同代表制になると、次に一人に絞るとき、誰が身を引くかになってしまいます。唯一反対しなかった世耕氏は、清風会の会長で、ある行動を起こしています。清風会は参議院の安倍派で40人います。そのうち2人は清風会に入っているけれど、大元である安倍派には所属していないんです。残り38人には、『安倍晋三元総理のご遺志を継ぎ、清和政策研究会が結束していくために、私は世耕清風会会長に一任をいたします』と書かれた連判状に世耕氏は署名させました。世耕氏は『私を共同会長に置かなければ、参議院議員はみんな納得しませんよ』と述べているんです」
派閥の長になることは、歴史から見ても総裁選立候補に向けた最短ルートになるという。
「総裁選の立候補には、20人の推薦が必要です。その20人を集めるのに苦労する人も多いですが、97人が所属する大所帯派閥のトップですから、一瞬にして推薦が集まります。他の派閥を取り込めば、自らが総理になる道にも近づきます。総理になるために、派閥の会長になりたいと考えるのはまともなことで、これは西村氏も世耕氏も隠していません。ただ、今のところまだ全体の理解は得られていません」
安倍派の動きについて、岸田総理はどのように考えているのだろうか。
「安倍元総理の存在は今でも強いです。岸田総理側からすると、やはり100人近い人数が固まっている派閥は脅威です。“目の上のたんこぶ”ともいえるぐらい、ものすごく気を遣わなければいけない存在であることは間違いないでしょう。自分を支持してくれるのは心強いですが、逆に分裂してしまって、反主流派の人たちとくっついてしまうと、それはそれで足元をすくわれかねません。できれば、強いリーダーがいない『今の状況でいてほしい』と思っているのではないでしょうか」
(ABEMA NEWS)