先日、日経新聞がアメリカの超大手IT企業Amazonが日本で処方薬ネット販売への参入を検討していると報道。これに対し、薬局業界を中心に大きな波紋が広がっている。
10月27日現在、Amazonからの公式な声明は出ておらず、あくまで、推測の域を出ることはできないが、仮に日本に進出した場合、どのような影響があるのだろうか。
薬局やドラッグストアの動向に詳しい、「ドラビズon-line」の菅原編集長に話を聞いた。
「いずれ日本にも参入するのではないかというのは、かなり言われていた。基本的にはそのプラットフォームの中に薬局様は登録をしていて、そのプラットフォームを使って薬を発注してAmazon側から薬局に調剤依頼の情報が流れてきて、薬局はオンライン服薬指導をして配送の準備をして、その配送もAmazonさんの流通物流網でお届けをするっていうことが考えられていると。最終的には自社倉庫であって自社薬局であって、それこそ全国をカバーするような拠点をやっていくのではないか」
実はAmazon薬局はすでにアメリカで始まっている。2018年にアメリカのオンライン薬局大手『ピルパック』を買収したAmazonは、2020年にオンライン薬局『Amazon・ファーマシー』を設立。
巨大な配送網と、膨大な顧客データを武器に処方薬のネット販売に本格参入している。
「基本的に慢性疾患のものに関しては、薬局に行くことなく、大量の調剤をしているセンターからお客様の元に配送されてくる。そういったことをすることによって医療費を下げているということは言われている」
日本でもすでに、巨大な配送網を構築しているAmazon。菅原さんによると、国内で電子処方せんの運用が始まる2023年からのサービス開始を目指していているという。
いつでも調剤依頼が可能。また薬局で並ぶ必要もなくなるなどいいこと尽くしにも見えるが、菅原さんはデメリットも指摘する。
中小薬局の淘汰につながり、災害時など、いざというときに地域薬局に頼れなくなったり、地域包括ケアでの見守りが出来なくなる可能性もあるなど医療の脆弱化が懸念されるという。
「薬剤師も看護師もドクターも介護職員もみんなが少しずつ見守っていく負担を分かち合っていって、見守っていくっていうことが地域包括ケアの考え方なので、そこを支えるプレイヤーにリソースが落ちないということは、自分たちに返ってくるサービスが脆弱になるっていうことだと私は思う」
その一方、近年ではケア人材を確保するという点から薬局業界における業務の効率化・合理化も急務に。日本の薬局でも処方薬の郵送やオンラインでの服薬指導といった動きが出始めているなか、菅原さんはこの報道をきっかけに、「日本のひとつひとつの薬局が意識を変えるべきだ」と明かす。
「地域包括ケアを継続するためにも、見守ったり、支え手になるところ以外の部分を効率化・合理化していくというのは絶対に避けられないので、Amazon薬局の報道がここまで過熱化しているのは、すごく危機感を感じて欲しいって言うか、そういう意図すら感じるようなところがあって、そこは既存の薬局が真剣に考えていかなければいけないところだと思っている」
(『ABEMAヒルズ』より)