梨泰院でライブ配信していた男性「プールで足がつかない感じ。個人は無力」 動画拡散でトラウマ懸念も? パックン「啓発の意味で流すべき」
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 ひしめく人々と叫び声。10月29日、韓国・梨泰院(イテウォン)で、大勢の人が折り重なるように次々と転倒する事故が発生。156人が死亡し、日本にも大きな衝撃を与えることとなった。ハロウィーンの賑わいでごった返す中、多くの人は成す術がなかったという。

【映像】現地の日本人YouTuberが撮影した映像

 一方、その様子を捉えた動画や写真は瞬く間にSNSで拡散し、現場にいなかった人たちの目にも触れた。中には不快感を訴える声もあったが、その場で撮影・配信してくれる人がいることで、何があったのかを多くの人が知ることができるという面もある。

 1時間50分にわたり梨泰院の様子を生配信していた、韓国在住の日本人YouTuber・横道さん(仮名)。「地下鉄の駅から直で行こうとすると、えらいことになっている」という事前情報を得て、その様子をライブ配信するために現地へ。混雑を警戒し、1つ手前の駅で下車したが、徐々に人混みは増していき、横道さんも撮影した動画の中で「下手したら圧死しかねない」と危機感を覚えていた。

 当時の詳しい状況と、動画拡散の影響について、1日の『ABEMA Prime』は議論した。

■現場で配信していた男性「パニックが起きたら終わる」

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 「韓国に住んでいるからこそ入って来る情報を日本の皆さんに見ていただいて、大袈裟だけれども“少しでも日韓関係が良くなれば”と。ハロウィーンが渋谷で盛り上がるように、韓国でいえば梨泰院ということで、様子を見に行って配信しようとしていた」と話す横道さん。

 映像に映っている人々が揺れているように見えることについて、「完全に流されるまま。四方から圧迫されるので、その力が弱いほうに自然に身体が動く。動いた先では押し戻そうとする力が入ってくる。その繰り返しなので、みんなが同じ動きをして波に見えてしまっただろう」と説明する。

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 人々の表情に「恐怖」も見て取れるが、横道さんも同じ思いだったという。「配信中の言葉はおちゃらけているが、『パニックが起きたら終わる』というのは本能的にわかった。私が転んだら踏まれて、踏んだ人も転んで……と。まず自分が転ばないようにしっかり踏ん張るのと、無理に人を押して人を転ばせない、これだけ気をつけた。『よくそんな所で動画を撮り続けたね』と嫌味半分に言う人もいれば、『よく撮ってくれたね』と本当に感心してくれる人もいるが、配信を止める・止めないを考える余裕がなかった」。

 雑踏の中では身長173センチの横道さんも足が浮いてしまうことがあったそうで、「女性は悲鳴を上げられていればまだましだったのではないか」と密集度を説明。「ギリギリ足がつくかつかないかのプールと一緒。つま先を伸ばしてなんとかつけようとする感じで、本当に個人は無力だ」と語った。

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 東京大学先端科学技術センターの西成活裕教授は、そうした動きは「群衆雪崩」の典型的な予兆だと指摘。「みんながコンタクトした状態で動けなくなり、押し合うことで波が自然にできて、浮いた状態で5メートルくらい運ばれてまた着地するということが実は繰り返されている。そこで誰かがストンと落ちると、真空地帯みたいになってダーッと上から覆いかぶさって、亡くなってしまう」と述べる。

 横道さんは「事故現場まで20メートルのところで大騒ぎが始まった。みんなが『何だ?』『早くそっちに行って見たい』という状態から、その後1歩も進めなくなったことに気付くと、現場の方から『戻れ』という声が出た。しかし、みんなは『この先に行きたい』という気持ちが勝っているわけだ。さすがに危険を感じる雰囲気になっても、駅からは人がいっぱい出てきていたので、戻ろうという意識につながるのに時間がかかった。50メートルを20分かけて戻った」と振り返った。

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 横道さんがいた場所は、事故が起きた坂道よりも道幅が広かった。「事故にならなかった違いがあるとすれば、道の広さが事故現場の倍くらいあったこと。動画の中で『ちょっと先まで頑張って進めば横道に逃げられる』という発言をしているが、あのまま真っ直ぐ行っていたら…」。

■動画拡散でトラウマ懸念も? パックン「啓発の意味で流していいと思う」

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 悲鳴をあげて倒れる人や、ブルーシートを被った遺体が一列に並ぶ凄惨な写真・映像がSNSやYouTubeにあげられたことで、韓国の韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「死傷者に対するヘイト発言や刺激的な事故場面の共有を自制してほしい」、韓国の精神医学会は「事故と無関係の人が繰り返し見れば、実際に目撃した人に劣らない影響を受ける」と警鐘を鳴らしている。

 横道さんは「この国らしいというか、大きなクレームが入ったのだろう。とにかく民衆の声に大きく左右される国なので、批判的な意見の方が多かったということなのではないか」との見方を示す。

 一方、タレントのパックンは「啓発になるという意味で、動画は流すべきだと思う。心に傷つく人は見ない方がいいと思うが、普段は身近に感じない危険性は、多少生々しい方がしっくり来るし、"自分の身は自分で守ろう"となるはずだ」と述べる。

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 では、日本でも人が集まる場所では警戒したほうがいいのか。西成氏はイベントが"計画的に立てられたものか"を確認する必要と訴える。

 「日本では主催者がいれば必ず警備計画を警察に提出してチェックしてもらう。なので、“主催者が誰か”というのはポイント。きちんとした計画が立っていれば、混んできても賑わいになる。ただ、賑わいと危険は隣り合わせで、危険にならないために警察や警備に支えられていることを忘れないで欲しい」

(『ABEMA Prime』より)
 

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