瀬戸内海中部に浮かぶ大崎下島で行われている、ある取り組みが注目を集めている。
「“介護の無い世界”を作っていくということをスタートしたいなと思って、大崎下島の久比地域で『まめなプロジェクト』という活動を始めました」
こう話すのは、一般社団法人まめなの更科安春代表。「まめな」は大崎下島の久比地区を拠点に活動を行う団体で、空き家の改修や学びの場の提供など、さまざまな活動を行っている。更科さんが目指す「介護の無い社会」の原点。それは自身の母親を介護していた時に感じた危機感だった。
「このままだと日本の介護って破綻するなと思ってて、自分の体と頭を使って、最後の最後まで元気に生き抜くと。そういう社会になればいいんじゃないか」
そんな矢先、更科さんはこの島を訪れ、ある光景を目の当たりにした。
「都会だと定年退職を迎えると、何もやることなくて、どんどん年取っていくと思うが、ここだと仕事として農業を続けながら自分の体の動く限りやれる範囲で続けて、皆さん頑張っているので。そこが一番魅力だった」
人口約420人、約7割が65歳以上の“限界集落”である久比地区。しかしそこには、“生涯現役”を体現する住民たちの姿が。まさしく自らが目指す、社会の縮図だと感じた更科さん。この地で活動を行う事を決意し、「まめな」を設立。まず取り組んだのは、この地域の活性化だったという。
「地域が元気になるためには、ジェネレーションの多様性が必要だと強く感じた。色々なジェネレーションの人が来ていただけるようになるかなって考えて、介護の無い世界のほかに、これからのサスティナブルな農業のあり方ってどんな形だろう。それを探求・実践していこうと」
この他にも”新たな学びの形”を作ろうと空き家を改修し、誰もが生涯学習の場として利用できる学習スペースを設立。また、親子で体験できるボランティア活動も実施した。
こうした地道な活動が身を結び、現在久比地区には人口を超える人が訪れるように。島の外の人たちとの交流が、住民の新たな生きがいになっているという。
「年間で私どもの所へ来てくださるお客さんだけでも500名ぐらいはいらっしゃる。これからさらに増えていくんじゃないかなと」
そして久比地区内には、常駐の看護師を配置し、地域住民をサポートする体制を整えた。地域活性化を通じて、介護の無い社会の実現を――。久比地区を舞台にした、壮大な社会実験はまだ始まったばかりだ。
「(東京にはなくて、久比にあることは)根本にある原点は価値観。何でもお金で価値を図るということではなく、いろんな価値で物事を判断していくということが重要で、そこが都会に無い部分で、ここの人たちは一つのことをいろんな価値で見て判断している。そこが一番、大きな違い。この地域でみんなが楽しく暮らせて、それこそ元気に旅立っていけるような、そういう社会になればいいかなと」
(『ABEMAヒルズ』より)