旧統一教会をめぐって、宗教法人法が規定する「質問権」の行使や「解散命令請求」などに注目が集まっている。
そもそも宗教法人として認められた団体には、どのような恩恵があるのだろうか。テレビ朝日・社会部の文部科学省担当の松本拓也記者は「大きく分けて3つのメリットがある」と話す。
【映像】法人税が非課税に…「宗教法人」のメリット3つ(画像あり)
「1つ目は『社会的信用度の向上』です。宗教法人になるためには、所轄庁から認証を受けなければなりません。認証審査に通過し、宗教法人になった場合、所轄庁からの“お墨付き”となるので、認証を受けていない宗教団体よりも社会的評価が高くなります」
憲法のもとで保障されている信教の自由。宗教法人にならなくても、宗教活動自体は自由だが、認証審査に合格することで社会的信頼だけでなく、不動産や税制面でも優遇が受けられるという。
「次に『法人名義で契約ができる』ことです。法人ではない宗教団体は、不動産の登記ができません。代表者が交替するごとに所有権の登記名義を変更していかなければならず、所得税や相続税に関する問題などが出てくる可能性があります。しかし、宗教法人になると、預金や不動産の名義も宗教法人にできます。代表者が死亡した場合も、相続税を課されることはなく、宗教活動の永続性が財政面から担保されます」
「3つ目の宗教法人としての大きなメリットが『税法上の優遇』です。お賽銭、お布施、献金といった宗教活動面の収入だけでなく、宗教法人が学校や老人ホームなどの公益事業を行う場合にも法人税、法人事業税等が非課税となります。また、宗教活動に使う本堂や聖堂といった礼拝施設などの不動産は、不動産取得税、固定資産税等が非課税です」
宗教法人法の中で得られるさまざまなメリット。そもそも、宗教法人の認可自体のハードルが高く、団体としては、一度認可された宗教法人の立場を維持したい狙いがあるという。
「宗教法人として認められるには所轄庁から認証を受けなければなりません。ひとつの都道府県内に事務所と礼拝施設を持つ場合は、所在地の都道府県知事が所轄庁、他の都道府県にも礼拝施設を持つ場合は文部科学大臣が所轄庁になります。宗教法人を設立したい場合には所轄庁に申請手続きをしていきますが、前提として一番大きなハードルとなるのが『宗教団体としての活動実績が3年以上あること』です。通常の会社のように、個人がいきなり設立の申請をすることはできません」
松本記者によると、宗教法人法で宗教団体として認められるには「4つの要件が必要になる」という。
「教義を広める、儀式行事を行う、信者の教化育成、礼拝の施設保有、この4つを満たしていない宗教団体の活動は、実績としては認められません。ただ、明確な信者の人数や、宗教活動の収入金額に関する規定はないそうです。宗教団体は財産の概要や信者の名簿、活動実績など、さまざまな書類を提出して、この4つの要件を満たしている宗教団体であることを証明しなければなりません。どちらにせよハードルは高いです」
中には宗教法人設立の申請をしようと、所轄庁にコンタクトを取った時点で3年以上の活動実績があったとしても、毎年報告書を出して3年後にようやく活動実績が認められた事例もあるという。
一方で、注目を集めている宗教団体への解散命令の請求は、実際にどのような過程を踏むのだろうか。
「まずは宗教法人法に基づいて『質問権』の行使をします。文化庁は先月25日にその第一歩となる有識者会議の初会合を開きました。質問権を使った宗教法人に対する調査はこれまでに前例がなく、恣意的な運用を防ぐために、行使に関して基本的な考え方や基準を議論しています。旧統一教会が質問権を行使する基準に該当する宗教法人であると確認したうえで、具体的な質問事項などについて、文部科学大臣の諮問機関である宗教法人審議会に諮問する予定です」
政府は、年内のできる限り早い時期に「質問権」を行使する方針を示している。
「質問権の行使によって、重大な法令違反などが確認されれば、裁判所に解散命令を請求することになり、最終的には裁判所で審理が行われます。ただ、1審で裁判所から解散命令を受けたとしても、当該の宗教法人はその後、高等裁判所、最高裁判所でも争うことができます」
解散命令を受けた団体は、どうなってしまうのか、
「解散命令を受けた宗教法人は宗教法人格がはく奪されます。その時点で債務があれば、裁判所が指定した清算人によって、礼拝施設など、法人が持っていた財産から弁済したり、税制上の優遇措置がなくなり、これまで支払う必要がなかった不動産の固定資産税などを支払う必要が出てきます。施設数が多い大きな団体であれば、宗教活動に支障が出る可能性が高いです。しかし、法人格が失われても、宗教団体として活動を続けることは可能で、信者の信仰も禁止されません。例えばオウム真理教の場合、解散後も市民グループとして活動が続けられ、現在も名称を変えて後継団体が存在しています」
(ABEMA NEWS)