開業すれば東京(品川)~大阪(新大阪)間を約1時間で移動できることから、超高速鉄道として注目されているリニア新幹線。建設計画が進んでいるが、未着工の静岡工区の問題によって、開業時期が見通せない状況になっている。
現状の開発計画はどのようになっているのだろうか。テレビ朝日・経済部の村野俊デスクは、試乗会に参加した感想をこう話す。
「事前情報では『少し酔うかもしれない』と言われていましたが、新幹線とそこまで遜色のない、良い乗り心地でした。仮に『明日から営業運転です』と言われても全く違和感がありません。従来、JRの在来線は『ご乗車ありがとうございます』とアナウンスが流れますが、リニア新幹線は『ご搭乗ありがとうございます』でした。電車という感覚がなく、非常に新鮮でした」(以下、村野デスク)
最高速度や乗車中の音、安全性はどのように感じているのか。
「リニア新幹線の最高速度は500kmに設定されています。最初の150kmまではタイヤで走り、150km以上はリニアモーターカーに切り替わる仕様です。350kmを超えたあたりから、低い風の抵抗の音が徐々に大きくなってきました。鉄道だとレールとの摩擦で振動がありますが、リニア新幹線は下から10cm浮いている状態なので、高速走行をしている最中でも非常に安定感があります」
東海道新幹線の「のぞみ」と比べるとどのぐらい速くなるのだろうか。
「JRは東京~名古屋間が40分、東京~大阪間が67分と公表しています。リニア開通後はリニア新幹線利用者が増え、のぞみの利用者が減る可能性も指摘されていますが、JRは『のぞみの代わりになる』とも言っていて、リニア新幹線を中心に利用してもらい、既存の東海道新幹線はひかり・こだまを中心にした運用を予定しているそうです。値段については、東京〜大阪間が1万5000円前後で、今の新幹線で東京から大阪に行く価格とそれほど変わりません。物価高で今後値段は変わるかもしれませんが、あまり大きく変わることはないでしょう」
当初、2027年に開業予定だったリニア中央新幹線。東京と大阪を約1時間で結ぶとあって注目が集まっているが、懸念されているのが“工事遅れ”だ。
「JRは『2027年以降、できるだけ早い時期に開業』と公表していますが、静岡県と山梨県の間の約10kmの区間がまったくできない状態のまま、2年が経っています。理由は静岡県の水源にあたる大井川です」
工事を巡って協議が続いているJR東海と静岡県。課題は、静岡県のお茶農家の水源確保だ。
「リニア新幹線の建設計画によって大井川の『水が減るのではないか』といった意見が出ていました。大井川の中流、下流にはお茶農家さんがたくさんあります。心配する声が相次ぎ、当初は大井川の減った水を戻す計画も立てられていましたが、その話が変わって、失われる水すべて(を戻す)という論点に変わりました。ただ、話し合いが終わったところで、静岡県と山梨県の県境に断層が発見されました。今度は、工事で断層から流れる水をどうするか、JR東海と静岡県で話し合っている段階で、いま生態系への影響について、専門家が検討しています」
現状、開通予定の目途は立っているのだろうか。また、未着工区間を除いて開業する可能性はあるのだろうか。
「線路は変電所や車両基地の最適化を考えながら作っています。部分開業すると、これがバラバラになってしまい、逆に非効率になることから、難しいでしょう。静岡県とJR東海との協議が終了する目途が立っていないことから、当初予定した2027年の開業は非現実的なものになりつつあります」