ネットニュースの大きなプラットフォーム、「Yahoo!ニュース」。ニュースに対する感想や意見が寄せられる「ヤフコメ」が有名だが、11月15日から、投稿に際して携帯電話の登録が必須化された。
理由の1つが誹謗中傷対策だ。そうした行為を繰り返すアカウントの停止や、不適切な投稿が集中した記事のコメント欄を非表示にするなど対策をとってきたが、それでも誹謗中傷の多さが度々指摘されてきた。
今回の携帯電話番号の登録必須化が健全化につながるのか。Twitterでは、「これで責任を持ったコメントを期待したい」「誹謗中傷は減るだろうけど、真っ当な意見も減ると思う」「そこまでしてコメント欄を残す意味ある?」と賛否の声があがる。
ヤフコメの今後について、17日の『ABEMA Prime』で議論した。
■元ヘビーヤフコメ民「楽しい瞬間はあまりなかった」
2年前までほぼ毎日投稿していたという、“元ヘビーヤフコメ民”の吉田さん。「複数アカウントを持てなくなることや、誹謗中傷コメントを書きにくくなるといった心理的な抑制効果はあると思う」と今回の対策を評価した上で、自身が投稿していた時は「書き込まずにはいられなかった」と振り返る。
「ルーティンみたいなもので、パソコンを開いたらYahoo!ニュースを見て、その下のコメント欄にいって、ということを毎日繰り返していた。とにかく気になった記事にどんどん書き込んで、“そう思う”がたくさん押されると快感だった。モチベーションというものはないが、日頃の不満などを書き込む手段だったな、と今は思う」
コメントするのは特に政治系の記事に対してで、内容は批判的なものが多かったという吉田さん。書き込んでいる時は「正直、あまり誹謗中傷だと思っていなかった」そうで、「今ブログをやっているが、結構ひどいコメントが来ると傷つくことも多い。それを自分がやってしまっていたと思うと後悔はするし、記事の元になっている方々への申し訳なさはある」と話す。
また、「楽しい瞬間はあまりなかった」とも明かし、「やめたからこそ言えるが、無駄なことをしているなと思う。そこからは何も生まれないし、今騒がれている誹謗中傷に抵触しているコメントも見かけたりする。自分の思いを伝えたかったらヤフコメ以外にも手段はあると思うので、そっちで頑張ればいいのではないか」との考えを述べた。
■ヤフコメが健全化しても他のメディアに流れるだけ?
携帯電話番号登録の効果について、「プレジデント」元編集長の小倉健一氏は「全体的にコメントの数は減っている。特に、アンチが多いタレントやYouTuberの炎上を狙ったような記事のコメントが減っているような印象を受ける」と説明。
ヤフコメには“独自の雰囲気”があるそうで、「高級ホテルで午後3時くらいに交わされているような、すごく丁寧な口調だ。敬語を使ってえげつないことを言っているような、5ちゃんねるやTwitterとは異なる“ヤフコメの文化”のようなものがある」と分析。
そのような内容を書き込む動機については、「Twitterはフォロワーが5人とか10人だと誰も見向きもしてくれないが、ヤフコメだと反応してくれるので、やはり楽しいのではないかと思う。半分は自分の実感で、もう半分は“世の中の人はこういうこと言ったら喜ぶだろう”“人にウケたい”という気持ちでやっているのではないか」との見方を示す。
一方で、ヤフコメが健全化されても誹謗中傷はなくならないと疑問を呈した。
「コメント欄がきれいになったとヤフー内では良い評価になっているが、ネット全体で見れば、Twitterで匿名でやったり、5ちゃんねるやガルちゃん(ガールズちゃんねる)に流れるだけの話だ。“ヤフコメがきれいになったから何?”というのが、僕がそもそも思っていること。誹謗中傷に見えないようになっていくだけで、内容自体はえげつない状態になるのではないか。Twitterを買収したイーロン・マスクが『言論の自由主義だ』と言っていて、そっちはもっとひどくなるかもしれない。そのあたりのバランスを考えると、ヤフコメだけ見ていてもしょうがないという気がする」
(『ABEMA Prime』より)
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