【FIFA ワールドカップ カタール 2022・グループB】ウェールズ0-3イングランド(日本時間11月30日/アフメド ビン アリ スタジアム)
早くもベスト16進出を決めたイングランド代表。56年ぶりのワールドカップ制覇に向けて、爆発が期待される若手サイドバックを紹介したい。その名は、トレント・アレクサンダー=アーノルド(24歳)だ。リバプールアカデミー史上最高のSBとの呼び声も高い。
【映像】 “神の右足”超攻撃型SBアレクサンダー=アーノルド
前回のワールドカップでは代表初選出という形で、コスタリカ戦でA代表デビューを飾りグループリーグ第3戦のベルギー戦では先発出場を果たしている。
そんなアーノルドのキャリアは、6歳からリヴァプールFCのユースから始まる。2016-17シーズンからトップチームに加入すると、2017年8月16日、UEFAチャンピオンズリーグのプレーオフのホッフェンハイム戦では直接フリーキックという形でプロ初得点を記録した。更にチャンピオンズリーグ決勝でレアル・マドリードとの一戦に先発出場し決勝での最年少先発出場者となった。
そんなアーノルドの名が一躍知れ渡ったのは、リヴァプールでの2018-19シーズンにプレミアリーグで記録した12アシストが、DF最多記録としてギネス世界記録に認定されたのだ。この活躍でリヴァプールFCの約30年振りのリーグ制覇に貢献し、プレミアリーグの最優秀若手選手賞を受賞した。攻撃力は、プレミアリーグでも筆頭クラスの右WBの呼び声が高い。市場価値が7000万ユーロ(約84億円)とも言われている。
アーノルドのプレイを紹介すると、最大の武器は世界屈指のパス精度で、右足から繰り出されるクロスボールは相手DFの急所を突くべく、正確無比だ。視野の広さにも定評があり、右サイドだけでなく、正確無比なサイドチェンジで局面を打開できるのも魅力的だ。
長らくイングランド代表の最終ラインを支えたリオ・ファーディナンドは「右サイドバックの位置から試合を支配した方法は、カフー以来見たことがない」と賞賛している。
名指しで比べられたカフー自身も、「自分とプレースタイルが似ている。将来バロンドールを受賞出来る可能性がある」とサイドバックとしての最大限の評価をした。
しかし人気者のアーノルドでもあるが、代表では指揮官のサウスゲイトからは守備面の物足りなさも指摘されている。当初は、メンバー入りも当落線上という扱いだった。
デビュー当初に比べ、守備面の改善点は見うけられるが、依然として弱点の1つであることに変わりない。更なる飛躍の為に「守備力」を向上させることがキャリアの鍵を握るだろう。
そんな評価をアーノルドは、自身のツイッターで、2000年に公開された映画『グラディエーター』の主人公であるマキシマス・デシマス・メレディウスのセリフを引用し、「貴様ら楽しんでないのか!?」と力強いメッセージで己を表現したのだ。
アーノルドは、UEFA EURO 2020に向けての代表メンバーに選出されていたが、大会直前、オーストリアとのフレンドリーマッチでの負傷により、無念の参加辞退という流れになり、カタールワールドカップへ懸ける想いは強いはずだ。
そんなアーノルドのカタールワールドカップ初出場は、ウェールズ戦、後半12分から2点リードの場面で投入された。
そして、前がかりな相手の背後を突いて決定的な3点目に絡む活躍を見せた。
68分、自陣深くでストーンズ、アーノルド、フィリップスと見事な繋ぎでプレスを回避し、ハーフウェイライン付近の右サイドで背後を狙うラッシュフォードへ高精度のフィードが渡る。そのままボックス内に持ち込んだラッシュフォードは切り返しで、DFをかわして左足で低い弾道のシュートでゴールネットを揺らした。
ここからは、一発勝負の決勝トーナメントが始まる。圧倒的な攻撃力を武器にイングランド代表の56年ぶりのワールドカップ制覇に向かって、アーノルドの更なる覚醒が期待されるところだ。
(ABEMA/FIFAワールドカップ カタール 2022)