中国のゼロコロナ政策をめぐる抗議デモが世界各地に広がっている。先月30日、東京・新宿で行われたデモでも「習近平やめろ」の声が響き渡った。
【映像】「中国共産党退陣!」右翼まで集まって闇鍋化? 新宿デモの様子
発端になったのは先月24日、10人が死亡した新疆ウイグル自治区ウルムチでの高層マンション火災だ。ロックダウンの中で、建物封鎖や消防車の遅れなどによって、被害が拡大したという。
習近平政権への批判や自由を求める声に、コロナ対策を担当する孫春蘭副首相もゼロコロナ政策を緩和する姿勢を見せている。
はたして抗議デモは鎮静に向かうのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では専門家とデモ参加者と共に考えた。
中国政府の対応に、EXITの兼近大樹は「国民のためを思ってゼロコロナを掲げていたなら、抗議の声が上がることで『じゃあ、これはやめます』は当たり前だ」と指摘。「国民が求めていることを政府がやっているだけ。これは至極当然真っ当な流れでしかない。これで変わらない場合、おそらくゼロコロナの目的が別にあって、何かしらの意図を持ってやっていることになる。変わらなきゃいけない」と述べた。
兼近の指摘にパックンは「それは民主主義国家の考え方だ」と指摘。「中国は共産党が仕切る国であって、共産党に票を入れる人は共産党の党員だけ。だから一般国民が声をあげても、普段の政府はそれにほとんど答えない。今回は例外だ」と話した。
中国出身で日本企業に勤務している麦さん(仮名)は、日本で行われた抗議デモに参加した一人だ。麦さんは「ゼロコロナ政策の即時停止が、デモ参加者共通の訴えだ。PCR検査を強要したり、強制的に市民の家の中に入って措置を取るのは、即時に停止してほしい」とした上で「ウルムチのことだけではない。貴州も上海も北京も、みんな同じ被害を受けている。海外にいる我々にも、家族や親友が中国にいる。これほど世界で広がったのは、人々の怒りが噴出したからだ」と話す。
中国で抗議活動を行う人たちの中には、逮捕者も出ている。麦さんの家族は、心配していないのだろうか。
「もちろん、私も両親から『参加しないで』と言われている。もし私の身元がバレてしまったら、中国の警察が私の家族に電話をかけるからだ。これは実際に上海などでデモに参加した人も言っていた」
孫副首相の指示によって、すでに一部緩和も始まっているゼロコロナ政策。北京では、在宅勤務者などのPCR検査が不要になり、市内では閉鎖されていた店舗が次々と営業を再開している。デモによって「勝ちとった」という思いはあるのか。
麦さんは「完全な勝利とは言えない」とした上で「今回のデモが広がる1〜2カ月以上前に、中国の各地でゼロコロナ対策への住民による反抗行為があった。だから、デモによって勝利して、政策が緩まったということではないと思う」とコメント。
その上で、デモ参加者の特徴について、麦氏は「少なくとも日本で行われているデモは、政権に対する批判がものすごく大きい」という。
「全体の比率から見ると、やはり大半の人はゼロコロナ政策に対する不満を持っている。ただし、政権批判も今までにない規模感で出てきている。単純にどちらが比率として大きいかという話ではないと思う」
また、国民の新型コロナへの恐怖感や認識については「中国政府のプロパガンダや宣伝を信じ込んで、非常に怖がっている人がネットで散見されている」と回答。「ただ、私個人の感覚では自分の両親、友人も含め、みんなだんだん信じなくなっているように感じる。特にワールドカップを見ていて、世界中の人はもうマスクをつけていない。『もういいんじゃないか』と、政府のプロパガンダを信じなくなってきている」と明かした。
抗議活動の着地点はどこにあるのだろうか。麦氏は「こんなに大規模なデモが、ずっと続くわけにはいかない。毎日参加する人も大変だ」と訴える。
「規模としては縮小・沈静化していくだろう。だが、これは始まりでもある。日本でも海外でも、こんなにみんなが集まって政権批判を行うことはなかった。私は日本に来て8年以上経ったが、見たことがない。ここからが出発で、これから政権について語り合える小規模の団体や組織が出てくると思う。私もそういう組織を作ろうと思っている」
現代中国政治・東アジア関係の専門家である李昊氏は「中国共産党は、絶対に間違いを犯さないことになっていて、彼らはこれまでの政策が間違っていたとは絶対に言わない」と話す。
「政府はデモの要求に応えて政策を変えたとは言わない。『我々はそもそも内部で検討を経て、このタイミングで変更した』と、自分たちの主導的な変更であるような宣伝の仕方をしている。ただ、現状はみなさんご存じの通りだ。政権にとって大きなショックになっているので、判断に影響を与えていないとは考えられない」
その上で、世界に広がった抗議デモの落とし所について「非常に難しい」と見解を述べる。
「例えば香港のデモは最初、非常に平和的に盛り上がり、たくさんの人が参加したが、ある時から暴力事件が増えた。だから、国家安全維持法で全部ダメになってしまった。天安門事件の時もそうだ。最初は平和的だったが、最終的にはダウンされた。落とし所を間違えるとそうなってしまう。日本で行われたデモも、すでに危ない予兆が出ている。最初は中国政府に対する不満を表明していただけのはずが、香港や少数民族の問題、日本の右翼も来て、ただの反中デモになっている。四川独立を訴える人も出てきたようだ。こうなると、もうただの“闇鍋”だ。混乱していてデモの目的が分からなくなってしまうので、非常に危険な状態。今後、ポジティブな展望は見いだしにくい」
上流層が習近平体制に見切りつけ、国を離れる「潤」流行が指摘されている中国。富裕層が海外へ脱出する動きをどのように見ているのか。
李氏は「実際どの程度の規模なのか、一時的なゼロコロナからの避難なのか、もう見限って移住してしまうのか分からない」とした上で「個人的には過大評価する必要はない」とコメント。
「富裕層がどうやってお金持ちになったか。多くの人は、中国でビジネスをやって儲かったからだ。ビジネスはやっぱり国内にあるので、資産も国内にある。持ち出すのは非常に難しい。いい暮らしをするために、国を離れても、いつか戻らなければいけない。必ずしも彼らが国を見限ったとは限らない。ただ、彼らの多くは家族や子供を海外に留学させ、海外で仕事させて、いざという時には裸一貫で逃げられるように準備はしているといわれている」
(「ABEMA Prime」より)
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