「生活を監視されるかも…」 なぜクラファンを断念? 支援のあり方をがんと向き合うYouTuberに聞く
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(5枚)

 こうへいさん、みずきさんの30代カップルが全国47都道府県制覇を目指し、キャンピングカーで旅をする様子を配信するYouTube「sunny journey」。沖縄を出発し、みずきさんの故郷・北海道に到着したら結婚、という目標を掲げて旅を続けてきた。

【映像】みずきさんが「がん告白」した動画

 しかし、11月12日の動画で、みずきさんは「診断の結果としては『がん』。その中でもすい臓がんという診断をいただいた」と告白。旅の途中で体調を崩して精密検査を受けたところ、すい臓がんの中でも珍しい「腺房細胞癌」で、ステージ4と診断されたという。

 「抗がん剤治療をしていくしかないと。お医者さんいわく、このまま何もしなければあと4カ月。抗がん剤で延命していったとして、長くて2年」(こうへいさん)

「生活を監視されるかも…」 なぜクラファンを断念? 支援のあり方をがんと向き合うYouTuberに聞く
拡大する

 それでも、ともに生きていくことを誓った2人。治療費をはじめ、これからどれだけのお金がかかるのかわからない中で、可能性にかけたのがクラウドファンディングだった。。しかし、批判の声があることや、医療費を集めることの難しさから中止に。そして選んだのが、クリエイターを支援するためのプラットフォーム「OFUSE」だった。

 なぜクラウドファンディングでお金を集めることができなかったのか。また、個人への支援・寄付の課題と可能性について、13日の『ABEMA Prime』はこうへいさんとともに考えた。

 みずきさんの現状について、「2週間の入院を経て退院して、今後は通院治療をしていくというかたち。みずきの健康状態としては、最初に聞いていた話よりはずっと元気だ」とこうへいさん。

「生活を監視されるかも…」 なぜクラファンを断念? 支援のあり方をがんと向き合うYouTuberに聞く
拡大する

 お金が必要な理由は、高額療養費制度を使っても自己負担額が大きいこと、自由診療や入院中の食費などは補助がないこと、がん保険に未加入だったこと、みずきさんの幸せのためなど。「高額療養費制度だと、負担額の上限は月8万円程度までだが、それは標準治療、保険適用の治療を選んだ場合で、入院時の食事代も別だ。みずきの状況として、保険適用の治療だと2年だと言われていて、他の治療も選んでいきたいとなると、数百万~1000万円以上かかってくる場合もある」と話す。

 クラウドファンディングを使う上での批判は予想していたが、「みずきがある日浮かない顔をしていて、『自分たちがクラファンをしてお金を集めて生きていくとして、何か自分がしたいこと、例えばこれを食べたいという時に、ぜいたく過ぎてまた何か言われるんじゃないか。生活そのものを人に監視されているかたちになってしまうかも』と。みずきを幸せにするためのクラファンだったので、やめておこうという判断になった。あと、単純に医療費として募る難しさもあった」という。

 クラウドファンディング大手A社の規約では、「極端に特定個人の目的と認められる場合」にはプロジェクトの掲載を禁止するとしている。また、B社は「個人相手だと支援者が税制上の優遇措置を受けられない(支援者がリターンを得る『購入型』の個人活動は可能)」「プライベート性の高い活動は利用できない場合がある」といった見解を示している。

 木村康紀弁護士によると、個人の制限に法的な規制はなく、トラブル回避のために各社が設定しているもの。また、個人活動はプロジェクトの達成度や実現度、資金の使途や金額の妥当性などが判断しにくいことがある。「学費」をめぐってトラブルになった事例もあるという。

「生活を監視されるかも…」 なぜクラファンを断念? 支援のあり方をがんと向き合うYouTuberに聞く
拡大する

 日本寄付財団寄付研究センター長の坂本治也氏は「トラブルを回避したいのは理解できるが、一律排除ではなくケースバイケースでいいのではないか。購入型だったらOKということをB社は書いていて、要するに商品やサービスを提供する対価としてお金をもらうのはある種の事業なので、お金の使い道は認められる。実際は寄付だけれども、購入型にするのは1つの手なのかなと思う。一方で困っている人が助かるような法的な保障を国が充実していかないと、格差が生まれてしまう」との見方を示す。

 こうへいさんたちが選んでいるのは、YouTubeの投げ銭機能「Super Thanks(スーパーサンクス)」、支援付きのメッセージサービス「OFUSE」など。その中で感じていることについて、こうへいさんは「たまたま影響力がすごく出てしまって、このあたりのサービスで必要な分のお金は十分集まっているOFUSEはメッセージ付きで支援しようというプラットフォーム。YouTubeからわざわざそっちに飛んで、メッセージを書いてお金を付けて送ってくれて、本当に病気と戦っていく力になっているなと感じている」と説明。

 本来、支援したい人が寄付しているはずだが、外野が否定的な意見を言うこともある。坂本氏は「非常に難しい問題だ。『お前だけ得しやがって』みたいな嫉妬、『俺はもっと困っているのになんで自分だけ助かるのか』みたいに引き下げて平等にしようという圧力が働きやすい。もう1つ、日本は自己責任意識が強い。“自分のことは自分でやりましょう”と、他人であったり国であったり、外部の支援に頼らないでなんとかするということが強調される。もちろん誰でも彼でもお金をあげたらいいわけではないし、自己責任もあると思うが、病気のように偶然なってしまう不幸みたいなものは、『自分で出せなかったら人の手を求めていいことなんだ』という意識に変わっていくことが大事だと思う」と指摘する。

「生活を監視されるかも…」 なぜクラファンを断念? 支援のあり方をがんと向き合うYouTuberに聞く
拡大する

 また、世の中が変わるためには実績が必要だとし、「隠匿の文化で、寄付しても『した』と言わない。最近、芸能人の方が寄付をして、それを公表する場面が増えてきていると思う。叩かれることもあるかもしれないが、みんなでそこを突き破って普通にしていかないと。芸能人にまず範を示してもらえると、一般の人たちも“じゃあそうしよう”という雰囲気になると思う。大した額ではなくても、SNSに『寄付をした』と書いたりすることが普通になるのが重要だ」との考えを示した。

 最後に伝えたいこととして、こうへいさんは「寄付される側の気持ちとしては、世界で一番大切な人がもうすぐ死んでしまうかもしれないとなった時に、目の前にある方法はすべて試したかった。シンプルにそれだけで、そこに共感してくださった方が支援してくださったのかなと。みなさんのおかげで今ゆっくり療養させていただいているので、本当に感謝の気持ちしかない。ありがとうございます」と感謝を述べた。(『ABEMA Prime』より)
 

この記事の画像一覧
兼近大樹「芸人は喜劇で、SNSは悲劇でバズる」不幸をなぜ発信?当事者に聞く
兼近大樹「芸人は喜劇で、SNSは悲劇でバズる」不幸をなぜ発信?当事者に聞く
「有名になるより共有したい」顔ナシ動画人気の理由 顔出しすることの意義も
「有名になるより共有したい」顔ナシ動画人気の理由 顔出しすることの意義も
この記事の写真をみる(5枚)