長崎県の自民党会派に所属する北村貴寿県議会議員（49）が12月14日、県庁で記者会見を開き、10日の夜に酒によって列車内のつり革のかかる手すりで懸垂したことを謝罪した。
動画に映っているのは、もくもくと懸垂運動を繰り返す北村県議らしき男性。ここはフィットネスジムではなく、JR九州の在来線の車内。そんな北村県議は2カ月前、JRの列車をめぐる事件に自身のYouTubeにて怒りを露わにしていた。
「非常に腹立たしい事件が起こりました。きのう、西九州新幹線の複数箇所に爆発物を仕掛けたという、脅迫のメールが届きました。これはイタズラでは済まされない犯罪であります」（北村県議のYouTubeより）
正義感を燃やしていたにもかかわらず10日、諫早市で行われた高校の同窓会からの帰宅途中、列車内で迷惑行為に及んでいたのだ。会見中では、6回も「当時の記憶がない」と繰り返した北村県議。その日はビールを3、4杯飲んでいたという。
さらに会見では、過去の“飲酒運転”についても追及される場面も――。北村県議は飲酒運転をしたことを認めた上で、厳罰化された2002年以降はしていないと述べた。そう話す北村県議のブログは2006年に投稿されていて、次のように記載されていた。
「飲酒運転、私もやっていました。やらなくなったのは、ちょうど2年ぐらい前でしょうか。まだ時効にもなりませんので、ナイショということでお願いいたします」（北村県議ブログより）
このブログの2年前とすると、飲酒運転をしていたのは2004年頃。そうなると、「飲酒運転していたのは厳罰化された2002年以前だった」という説明と矛盾が生じる。
北村県議は自身の進退について、今後検討すると説明している。
“記憶がない”と話す北村県議について、ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した臨床心理士・公認心理師で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏は、次のように話す。
「お酒を飲んで記憶がない状態を繰り返しているのだとしたら、議員かどうか問わず問題。ただ、もちろん列車内で懸垂するのはダメだが、大きなリュックを背負ったまま乗車している人や、ホームで傘で素振りしている人はいいのかと、その判断も難しいところではある」
たびたび起こる政治家による不祥事――。その原因は3パターン考えられるとし、飲酒の仕方について注意を払った。
「1つは、元々危うい人が政治家になっているパターン。それから政治家になって『先生、先生』と言われて勘違いすることでどんどん危うくなっていくパターン。そして、その人自身はそんなに変わっていないが、政治の場で自分がやりたいと思っていたことが実現できず、ストレスが溜まってそれが行動として出てしまうパターンの3つが考えられる。
いずれにしても、お酒の問題は日本でもいわゆる不適切な飲酒と言われる“ビンジ・ドリンカー”と呼ばれる人が一千万人ほどいると推計されているので、その辺の問題意識はもっと持たれたほうがいい」
また、飲酒運転について2006年にブログ投稿していた北村県議。藤井氏は、このブログの書き始めについて触れつつ、「成功体験の活かし方がおかしい人がいる」と見解を述べた。
「15年ぐらい前は、今とは社会の見方や意識が違っていて、そうするとSNSやネットに書き込む文章も変わってくる。その辺の事情は違うにしても、（このブログの）『飲酒運転、冒頭からですが、私もやっていました』との書き出しは、時代が変わっても違和感を覚える。個人的な印象だが、この人に限らず政治家の中にはなんとなく成功体験の活かし方がおかしい人がいる。例えば、聴衆を前に何かインパクトのあることを言ったとして、それがわっと盛り上がったり、反応があったりしたときに、それが一つの成功体験になると思うのだが、それをTPOをわきまえずにやってしまうのは間違っている。（北村県議は）そういうにおいがする。このようなタイプの人は、本人の感覚だけに任せると再度何らかの問題を引き起こす可能性が高い」
（『ABEMAヒルズ』より）
