変貌する「個」vs「組織」 アルゼンチンとフランスの決勝は、新しい「南米とヨーロッパの戦い」が生まれるかもしれない
【映像】ABEMAでみる

ある街に、無敵のサッカーチームがあるとしよう。そして別の街には、無敗のサッカーチームがあったとしよう。

人々は素朴にこう思うだろう。

「無敵のチームと無敗のチームが試合をしたらどっちが勝つんだ?」

そしてこう思うだろう。

「絶対にウチのチームだ」と。

街が地域に、地域が国に、そして国が大陸になり、こうやって人々は永く、そして熱く語ってきた。「どちらが強いかやってみようぜ」と。

この最終形で、最大の試合が「W杯決勝戦」だ。

【映像】ついに決勝!王者が決まる!アルゼンチンvsフランス

この闘いには自国の、いや大陸のプライドと意地が懸かっている。南米かヨーロッパか。強いのはどちらだ?と。

南米とヨーロッパでW杯決勝を戦ったのは過去に10回。南米の7勝3敗という戦績だ。

だが直近で言えば

1994アメリカW杯のブラジル

1998フランスW杯のフランス

2002日韓W杯のブラジル

2014ブラジルW杯のドイツ

で2勝2敗の5分の戦いとなっている。

旧くから南米とヨーロッパは、「個」対「組織」の勝負と言われてきた。

ストリートサッカー、フットサル、フットバレーで鍛えられた子どもたちの中から素晴らしいタレントが無限に生まれ、自身の貧困から抜け出すための個のプレーを使って敵を圧倒する南米。

地域のクラブでサッカーを教わり、階層別の育成組織で高度な指導者や競争システムの環境から選手が戦術を理解し、クラブの勝利に貢献するため組織で戦うヨーロッパ。

しかし何十年も語られていたこの「個(南米)」対「組織(欧州)」は、その姿が変貌しつつある。

確かにネイマールやメッシなど、圧倒的な「個」はまだ南米にはいるが、エムバペやモドリッチ、ジョアン・フェリックスなど、魅惑的で相手に脅威となる「個」がヨーロッパにも存在する。

ヨーロッパが武器としていた組織力も、今では南米にしっかりと根付いている。W杯に出てくるような南米選手は、すでにヨーロッパで徹底的に戦術を叩き込まれている。ヨーロッパのビッグクラブでプレーするためには戦術理解は必要不可欠だからだ。その証拠にアルゼンチンのスタートメンバーは全員ヨーロッパの一流クラブに所属している。

ただそれでも・・・南米とヨーロッパでは伝統的に異なる部分がある。それが「守備」への考え方だ。

ヨーロッパのスタイルは、プレスを軸に激しくボールを奪い、一気に攻撃に転ずる。デュエルという考え方はヨーロッパで深く普及、浸透している。「(高い位置で)相手からボールを奪う」ことを哲学とする守備だ。

対する南米はリスク回避。最悪の場面を嫌う。もちろんマーキングは激しいが、リスクは負わない。ラインは低く保ち、ゴールキーパーを含めた最終ラインでしっかりと跳ね返す。守備の基本は「奪う」のではなく「ゴールを割らせない」という考え方である。

カタールW杯のアルゼンチンはまさにそんなチームだ。

メッシという異次元の選手はいるが、それ以外はチームの戦術に忠実に従い、粘り強くゴールを守り抜く。サウジ戦で37試合無敗記録は止められたが、次のメキシコ戦もポーランド戦もしっかりとクリーンシートで勝利を呼び込んだ。

対するフランスは強烈な「個」が光る。エムバペは4年前から恐ろしさが増幅しているし、その周りにはデンベレ、ジルー、グリーズマンというタレントが圧倒的な存在感を示してゴールを狙い、チュアメニはポグバを凌ぐ才能を見せ、コナテやクンデは次世代のフランスを担う光を放つ。準決勝の先制点をゴラッソで叩き込んだのはDFのテオ・エルナンデスだ。

今までの「個」対「組織」が逆転しているのだ。

「組織」の力でチーム力を最大限にあげて勝利を目指す「南米・アルゼンチン」

「個」の力で敵を圧倒して勝利を狙う「ヨーロッパ・フランス」

このカタールW杯の決勝戦で、新しい「南米vsヨーロッパ」の戦いが生まれるかもしれない。

ABEMAFIFAワールドカップ カタール 2022)

フランス代表、エムバペ大車輪の活躍でモロッコを一蹴!イタリア、ブラジルに続く60年ぶり史上3カ国目の大会連覇へ王手