“神の子”メッシに心臓を捧げて、“闘将”シメオネの哲学を体現した武闘派ハードワーカー W杯決勝「陰のマン・オブ・マッチ」
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「メッシと仲間たち」が36年ぶりにW杯をアルゼンチンに持ち帰った。アルゼンチンの国民は、目の前の暮らしの苦しさを忘れ去り、人生最高の悦びで一日を過ごすことになった。W杯優勝国の国民だけが味わえる特権だ。

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その国民の中には、この男も含まれる。ディエゴ・シメオネだ。

シメオネ自身もアルゼンチン代表選手として100試合以上に出場。現在はスペインのラ・リーガ「アトレチコ・マドリー」の監督を務めており、今年で11年目の長期政権を築いている。

監督就任時は1年半契約だったが、就任以来、破竹の好成績を収めて、レアル・マドリ―やバルセロナの2大クラブの後塵を拝していたアトレチコを一流クラブへと押し上げた。就任から10年連続でリーグ3位以内とチャンピオンズリーグ出場を果たせば、長期政権になるのも当然だろう。

「ボックス・トゥ・ボックス」の代表的な選手だったシメオネは、まさに「アルゼンチンの選手が必要とするもの」をすべて備えていた。ボールキープの能力、攻守の切り替えの早さ、ボールへの寄せ、奪取能力、献身的なカバーや、ゲームの流れを読んで次のプレーを選択する眼力は超一流のそれだった。

そのシメオネのプレーをカタールW杯で体現した選手がいた。

ロドリゴ・デ・パウル。背番号7の選手だ。シメオネが率いるアトレチコ・マドリ―からやってきた、いわばシメオネ・チルドレンの一人だ。

カタールで見せた彼のプレーは出色だった。本当にシメオネが舞い降りたのかと錯覚するぐらいに背番号7は至るところで姿を現わしていた。ライン際でボールをキープし、味方が苦しい時には顔を出し、一瞬の隙を突くトラップで入れ替わり、ルーズボールには身体を寄せ、タイミングを測りながらファールを貰う。とにかくプレーが「効いている」のだ。

デ・パウルは「必要なときに必要なプレーをする」「綺麗なプレーは要らない、合理的で良いサッカーが必要なのだ」というシメオネ主義(サッカー界では「チョリスモ」と呼ばれている)を見事に体現していた。この決勝戦での陰のMOM(マン・オブ・マッチ)は、間違いなくデ・パウルだろう。

壮絶な決勝戦が終わり、W杯を手にしたアルゼンチン代表は「メッシとその仲間たち」だった。そしてメッシに憧れたその仲間たちの中には、アルゼンチンのDNAを全て引き継いだ男の息子たち「シメオネ・チルドレン」がいた。

すべてが繋がっている。

1つの丸いボールを巡って月日が流れ、サッカーの糸が、人生の糸が紡がれていく。だからサッカーは人々を魅了するのだ。

ABEMAFIFAワールドカップ カタール 2022)

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