「大部分はアメリカ依存。数も内容も話にならない」“反撃能力”保有で何が変わる? 防衛関連3文書閣議決定
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 先週、防衛力強化に向けた3つの文書、いわゆる「安保3文書(防衛関連3文書)」が閣議決定された。今後5年間の防衛費は43兆円とこれまでの1.5倍以上になる予定だが、なぜ政府はここまで力を入れるのか。テレビ朝日・政治部の防衛省担当、車田慶介記者に話を聞いた。

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 そもそも、安保3文書とは何を指すのか。

「まず安保3文書とは『国会安全保障戦略』『国家防衛戦略』『防衛力整備計画』の3つを指します。最も上位になる国家安全保障戦略は防衛に加え、外交や経済安全保障についてなど、日本の安全保障に関する全般が書かれています。国家防衛戦略には日本が目指す防衛力の強化や日本の自衛隊の能力強化など、防衛政策に特化した文書です。防衛力整備計画は、先ほどの国家防衛戦略の指針をどのように達成するのか、必要な装備品の数や金額が記載されています」(以下、車田記者)

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  ここまで多額の予算になった背景には何があるのだろうか。

「大きな要因は、昨今、中国や北朝鮮など、日本の周辺国でミサイル技術が向上したことです。特に北朝鮮は音速の5倍以上で飛ぶ極超音速ミサイルや、探知が難しい潜水艦からの発射などの技術開発を進めています。既存の日本のミサイル防衛網では、これらの対応が難しく、さらなる攻撃を防ぐために、有効な反撃能力を保有する必要があるとしています」

 “有効な反撃”とは、具体的にどのような攻撃を指すのだろうか。

「これまで日本は、ミサイル攻撃に対し迎撃のみで対応していました。ただ、迎撃が難しいミサイルが周辺国で開発されています。政府は射程が長いミサイルを保有し、相手国のミサイル発射拠点に直接攻撃できる能力を持つことで、相手への抑止力を図りたいとしています。ミサイル発射拠点の攻撃はかなり難しいと言われていて、過去、湾岸戦争でイラク軍が持っていた弾道ミサイルを破壊するためにアメリカ軍は大規模な空襲を行いましたが、発射装置が移動式だったせいで、ほとんど破壊ができませんでした。ただ、これ以降、飛んでくるミサイルの数が減ったと言われています。おそらく、日本も飛んでくるミサイルを最小限に抑え、迎撃しやすくするのが狙いでしょう

 反撃能力を持つことにどのような意味があるのだろうか。車田記者によると「大部分をアメリカに依存するのは変わらない」という。

「年明け以降、日本とアメリカは有事の際の手順や役割を定めた共同計画の改定を進めています。をアメリカの推進で、ミサイルなどの攻撃に対して地上レーダーや人工衛星などの情報を統合して攻撃を阻止する『統合防空ミサイル防衛(IAMD)』の導入を決めています。ある外務省幹部は『アメリカが持つ打撃力と比べると、日本が持とうとしている反撃能力は数も内容も話にならない』と言っていて、日本は『自分の国は自分で守る』という構えを見せつつも、大部分はアメリカに依存しています」

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 過去一度も迎撃の経験がない日本。政府は16日に閣議決定した防衛力整備計画で、今後5年間の防衛費を計43兆円としたが、具体的な使い道は決まっているのか。

「スタンドオフ防衛能力におよそ5兆円を使います。具体的には、陸上自衛隊が持っている12式地対艦誘導弾と呼ばれる射程の長いミサイル開発や購入などに当てられます。ミサイル改良と量産を行い、配置場所によっては朝鮮半島や中国の沿岸部など、1千キロ以上も射程範囲になり、さらに艦艇や戦闘機から発射できるよう改良します」

 防衛費増額と共に、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入にも踏み切った政府。中国が台湾に武力侵攻する「台湾有事」がおきる可能性に備えてのことだ。

「トマホーク購入に踏み切ったのは、12式地対艦誘導弾だけでは改良が間に合わず、そもそも数が限られているからです。トマホークを購入する価格や数については調整中で、非公表となっていますが、数百発を2026年から27年にかけて配備完了する予定です。自衛隊が使う弾薬や銃もずっと足りていないと言われていて、これも5年をかけて解消するとしています」

 そのほか、Jアラートが発信された際に国民が逃げ込める地下や、頑丈な建物がないと言われてきたが、これらの対策に予算は使われるのか。

「防衛省は、自衛隊の施設をシェルターのように使えるようにしようと考えています。地下鉄や頑丈な建物がない地方でも逃げられるような対策を行い、自衛隊だけでなく、周辺住民も避難できる場所を作るよう検討しています」

ABEMA倍速ニュース
 

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