産地表示はいい加減? 偽装横行の背景に罰則の緩さ&業界の仕組みも
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(5枚)

 北朝鮮産のシジミを国産と偽って販売したとして、警察は21日、全国数十カ所の関係先を一斉に捜索した。現在、日本は北朝鮮からの水産物の輸出入を全面的に禁止しているが、水産卸売会社は中国や韓国を経由してシジミを不正に輸入していた。

【映像】2022年「食の十大ニュース」

 産地偽装で今年話題となったのが、輸入されたアサリが熊本産と偽装され販売された問題。農林水産省の調査では、販売されていたアサリの約97%に外国産が混入している可能性が高いとする結果が出た。これにより、熊本では約2カ月間アサリが出荷停止になるなど、消費者にもアサリ漁師にも大きな影響があった。

 さらに、中国産のワカメを鳴門産と、宮崎県のシイタケを沖縄産とする偽装も発覚。なぜ産地は重要視されるのか。防ぐためにどうすればいいのか。22日の『ABEMA Prime』で議論した。

産地表示はいい加減? 偽装横行の背景に罰則の緩さ&業界の仕組みも
拡大する

 食品表示アドバイザーで消費者問題研究所代表の垣田達哉氏は「輸入データを見ると、前年比でアサリは中国からの輸入が6割減の一方、シジミは6割増と、これを見ただけで『おかしいな』と思うはずだ。今シジミは中国ではほとんど獲られていないので、これだけ大量に輸入されることもおかしい。そういうことから偽装が行われているのではないかということがわかる」と指摘。

 東京海洋大学准教授の勝川俊雄氏は「水産物の産地表示は、皆さんが思われているよりもいい加減なものだ」と話す。「例えば、シラスウナギを台湾から大量に輸入していたが、台湾政府が『もう日本には輸出しない』と。すると、その翌年から、同じくらいの量が香港から入ってくるようになった。香港ではシラスウナギを獲っていないので、つまり、香港が台湾から買ったものを『中国産』と言って日本に出していたのが真相だ。第三国を経由するだけで日本が高く買ってくれるなら、彼らはやる。熊本産のアサリがほとんど産地偽装だったように、日本国内でも簡単に産地を付け替えることができてしまうので、そういう意味で目安のようなものだと思っていただきたい」。

産地表示はいい加減? 偽装横行の背景に罰則の緩さ&業界の仕組みも
拡大する

 なぜ産地偽装が行われ、繰り返されるのか。垣田氏は「簡単にいうと、儲かるから。アサリで摘発された業者は、1カ月間で600トンちょっと偽装している。大体1キロ600円くらいなので、1カ月間で2億数千万円の利益。偽装するだけで毎月億単位で儲かるので、“やってしまえ”となる」と明かした。

 一方、勝川氏は「罰則が非常にゆるい。特に刑事罰等もないし、『次はやっちゃダメだよ』と言われて終わりだ」と指摘。これに垣田氏も「アサリの件は食品表示法の違反だが、不正競争防止法を使えば、罰金も刑事罰もある。牛肉はトレーサビリティ(生産から消費までの追跡)をしているので摘発しやすいが、アサリは物的証拠がなかったために、単なる注意・指導で終わらざるを得なかった」と付け加える。

産地表示はいい加減? 偽装横行の背景に罰則の緩さ&業界の仕組みも
拡大する

 さらに、勝川氏は「本来、国産はものすごく少なくて高いので、選択肢がなければ“中国産をいくらで買うのか”という話になる。でも、みんなが不正表示して、中国産が“安い日本産”として出回ってしまうと、正直に中国産と書いても売れなくなる。“悪貨は良貨を駆逐する”というのか、みんながインチキをすると真っ当な商売ができなくなってしまう、そういう状況にまでなっている」と危惧した。

 ただ、水産物は流通の仕組みを整える難しさがあるようだ。「工業製品や農業製品と違って、漁業はいつ、何が、どれだけ獲れるのかがわからない。予測ができないものを必要な人の所に届けるために、例えば“来週はしけであまり漁に出られなさそうだからちょっととっておくか”など、個々のプレーヤーが柔軟にやっている習慣がある。そこにデータを取るとか報告するといった仕組みがインストールされていない。このままでいいのかというと、結局はそれが水産業の発展を阻害している」。

 厳しい罰則がないために、社名を変える、代表者を変えるなどして継続する会社もあるという。では、今後どのような対策が必要だろうか。

産地表示はいい加減? 偽装横行の背景に罰則の緩さ&業界の仕組みも
拡大する

 垣田氏は「『トレーサビリティをもっとやるべきだ』という声をあげることがやはり必要だと思う。食中毒やアレルギーの話で、輸入時に厚生労働省が特定のものをチェックしている。食の安全という意味で、産地はある程度関係するということも認識していただきたい。もう一つ、トレーサビリティは海洋資源をいかに確保するかということ合わせてやるべきではないか。そこまでいくと価値が出てくると思う」と述べる。

 勝川氏もその必要性に賛同し、「ノルウェーなんかだと、誰からいくら買って、誰に売ったかの記録が水産流通業者も義務付けられている。買っていないはずのものは売れないので、そういうかたちのものが日本でも必要なのではないか」とした。(『ABEMA Prime』より)

池袋の"顔"西武本店へのヨドバシ出店に豊島区長が「NO」
池袋の"顔"西武本店へのヨドバシ出店に豊島区長が「NO」
ひろゆき「少食なので無理と言うべき」 おもてなしが苦しい?年末に増える飯ハラ
ひろゆき「少食なので無理と言うべき」 おもてなしが苦しい?年末に増える飯ハラ
【映像】ひろゆき「少食なので無理と言うべき」 おもてなしが苦しい?年末に増える飯ハラ

■Pick Up

【Z世代に聞いた】ティーンの日用品お買い物事情「家族で使うものは私が選ぶ」が半数以上 

この記事の写真をみる(5枚)