福井大学教授らによる“査読の自作自演” 東工大・西田准教授「これまでの論文全ての信頼性が揺らぐ深刻な問題だ」
【映像】査読の“自作自演” 福井大学教授のコメント
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 12月20日、福井大学は、同大教授らの研究チームの論文について「査読に不適切な行為があった」と発表した。

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 一般的に「査読」とは、研究者が学術雑誌等に投稿した論文の内容を、同じ分野の別の研究者(査読者)が精査すること。学術誌の出版社等から依頼された査読者は論文にコメントを付けて戻し、出版社はそのコメントをもとに掲載可否を判断したり、研究者に修正依頼を出したりする。

 今回明らかになったのは、福井大学教授が投稿した論文について、査読者がこの教授自身に査読コメント案の作成を依頼し、実際にこの教授らが案を作成するという“自作自演”が行われたということ。この教授は福井大学の調査委員会の調べに対し、「重大な問題であるとの認識はなく、査読者が多忙であることや自分よりキャリアが上であることから、査読コメントの依頼に応えてしまった」と話している。

 一方、今回の行為は文部科学省が定める研究活動の不正行為「捏造・改ざん・盗用」には当たらないとされ、文科省は今後、査読のあり方について「日本学術会議に審査を依頼する」としている。

 永岡桂子文科大臣は「査読は科学者コミュニティの自律性により成り立つもので、科学研究の健全な発展のための重要な役割を担うものだ。関係府省と連携して適切に対応したい」と述べた。

福井大学教授らによる“査読の自作自演” 東工大・西田准教授「これまでの論文全ての信頼性が揺らぐ深刻な問題だ」
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 この問題について、東京工業大学の西田亮介准教授は、「重要な原則が守られていない」と指摘した。

「査読に重要なのは、二重の匿名性(Double-blind peer review)が保たれていることだ。論文を投稿する研究者も、査読者側も、それぞれに相手が誰かわからないという原則だ。まさに今回のようなことが起きないようにするためで、それが保たれていないことに疑問が残る。この分野の研究者や出版社、学会誌などを巻き込む形で信頼性が揺らいでいる」

「査読を何のために行っているかというと、学問と科学の妥当性は高度な専門性を持っている分野の人間しかわからないので、専門家同士のピアレビュー、自律的なコミュニケーションの中で妥当性を担保するために行っている。ある分野の査読のシステムが信頼できないことになると、その分野のこれまでの論文すべてが『本当に信頼できるものなのか?』とわからなくなってしまうという問題がある」

「今回の著者の方は、競争的資金の責任者になったり、有名な著作もあるなど社会的な存在感も非常にある方だと聞いている。単に論文を撤回するだけでは済まなくて、大学側や研究者本人も積極的に説明責任を果たすべきだ」

(『ABEMAヒルズ』より)

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