RIZINとベラトールの5vs5対抗戦をはじめ“直球”な対戦カードが多かった大晦日の『RIZIN.40』にあって、数少ない“変化球カード”が平本蓮のエキシビションだった。
フロイド・メイウェザーvs朝倉未来と同様の、ボクシングに準ずるルールのエキシビション。2022年は連勝、大きく飛躍した平本は、MMAの公式戦ではなくともビッグマッチに必要な存在になっていた。
対戦相手は「X」として当日まで伏せられていた。そして試合前の映像で明かされた「X」は梅野源治。本場タイのベルトも獲得したムエタイの一流選手だ。
ただし梅野はヒジ、ヒザ、蹴り技とムエタイスタイルで勝ってきた選手。平本はボクシング経験があるから、不利なマッチメイクだった。しかも階級も平本が上だ。平本が圧力をかけていく姿からしても、やはり差が大きかった。最後は左フックで平本が梅野をダウンさせている。
鮮やかな“一撃KO”かと思われたが、梅野が倒れていくところでゴングが鳴っていた。規定の3分2ラウンド終了。事実上のKOだったが、エキシビションなので勝敗はつかない。
毒舌で知られる平本だが、エキシビションが終わると梅野に感謝を述べた。体格差もあり「勝負にならない」のは「仕方ない」こと。それよりも対戦を受けてくれたことがありがたいと。
さらに平本は、次の試合についても発表。対戦相手としてリングに登場したのは、斎藤裕だった。元RIZINフェザー級チャンピオン。朝倉未来にも勝ったことがある、この階級のトップの一角だ。
「負ける気はさらさらない。絶対勝てると思って榊原さん(榊原信行CEO)にお願いしたので」
そう語った平本。2023年はタイトルを狙う年になる。ボクシング界の大物マニー・パッキャオがRIZINと契約したことも発表されたが、もしパッキャオとの対戦(ボクシングエキシビション)をやるなら、自分がRIZINのチャンピオンになってからだと考えている。何よりもタイトル最優先なのだ。
「僕の本職はMMAなので」
そんな平本の不倶戴天の敵、朝倉未来も牛久絢太郎との対戦が発表された。お互いが勝てば平本と未来の対戦もあるのか。平本は言う。
「僕が先にチャンピオンになって、やらせてくださいと言わせる状況を作りたい」
またフェザー級戦線では、かつて平本に勝った鈴木千裕が連勝中。日本勢同士の対戦だけでなく、これからは“対世界”も重要になってくる。ベラトールとの対抗戦、パトリシオ・ピットブルとの王者対決に敗れたクレベル・コイケの復活も気になるところ。
そんな状況も踏まえて、ということだろう。大会後の榊原CEOは、来年後半にフェザー級GPを開催する可能性もあるとコメント。上半期の闘いは、出場者先行の意味も持つことになりそうだ。
どんな展開になろうと、平本には勝ち進めば強豪との対戦ばかりが待っている。まだMMAキャリアは4戦。GPでの未来戦やタイトル挑戦の可能性もあるし、壁に阻まれるかもしれない。高いポテンシャルは誰もが認める平本。今年も正念場が続くことになる。
文/橋本宗洋