兄の前WBC世界ライトフライ級王者、矢吹正道と兄弟同時世界チャンピオンを目指す力石政法が6日、エディオンアリーナ大阪第1競技場の「3150FIGHT」で勝負のリングに上がる。対戦相手はWBOアジアパシフィック同級王者の木村吉光。スーパーフェザー級の国内トップを決める注目の一戦だ。

【詳細】3150 FIGHT vol.4

 力石にとって2022年は飛躍の年となった。5月、待ちに待った東洋太平洋王座決定戦のチャンスを得ると、持ち前のスピードとテクニックを遺憾なく発揮し、ベテランの渡邉卓也にフルマークの判定勝ちでタイトルを獲得した。8月の初防衛戦は余裕の4回TKO勝ちを収め、「力石強し」をさらに印象づけた。

 木村は力石の一つ前の東洋太平洋チャンピオンで、力石がキャリア初期に喫した唯一の敗北の相手、日本王者の坂晃典を下して東洋太平洋王座を獲得している。木村がフランスで世界ランカーとの対戦するためにタイトルを返上し、空位となった王座に力石が就いたという流れだ。

 力石は今回、一歩先を走る木村との対戦を強く望んだ。胸を張って世界を口にするためには、強い相手にしっかり勝たなければならない。それが力石の哲学なのだ。

 幼いころからボクシングを始め、兄と二人三脚でキャリアを進めてきた。ただし、家庭環境が複雑だったこともあって、何度もボクシングから離れたことがある。ボクシングと真剣に向き合おうと心に決めたのは2年間の少年院生活を送ってからだ。このままではダメだと心から思い、本気で世界チャンピオンを目指そうと気持ちを入れ直した。

 リングネームは言わずと知れた不朽のボクシング漫画『あしたのジョー』からとったもの。主人公の矢吹を兄が、ライバルの力石を弟が名乗った。ちなみに兄弟の本名は佐藤である。

 先にプロデビューした兄は20年に日本チャンピオンとなり、21年9月に寺地拳四朗を下してWBC世界ライトフライ級チャンピオンとなった。ダイレクトリマッチで寺地に敗れたものの、現在は再び世界を目指して好位置をキープしている。

 力石は「兄と同時に世界チャンピオンになりたい」と強く願っている。きっと兄は世界チャンピオンに返り咲く。となれば兄弟同時世界王者誕生のカギを握るのは弟である自分がベルトを手にすることができるかどうかだ。

 決して自信がないわけではない。ただ、一般的に軽いクラスよりも世界的に層の厚い重いクラスのほうが世界タイトルに挑戦するのが難しい。東洋太平洋王者になっただけで世界戦ができるほどスーパーフェザー級は甘くないのだ。現在、力石の世界ランキングはWBC15位で、木村がWBO13位。WBOアジアパシフィック王座を持つ木村を明確に下し、ランキングを上げ、悲願の世界タイトルマッチに一歩でも近づく。それが力石の描く青写真である。

 とはいえ木村は簡単な相手ではない。体が強く、パンチ力があり、近い距離でも遠い距離でも戦える手強いチャンピオンだ。体格とスピードで上回るのは力石だが、戦前の予想は拮抗している。もちろん大きなリターンを求めるのだからリスクは承知の上だ。力石は「負けたらやめる覚悟」と口にするほど、今回の試合にかけている。

 兄の矢吹は1月28日、名古屋国際会議場でロナルド・チャコン(ベネズエラ)とのIBFライトフライ級挑戦者決定戦が発表されている。力石としては兄にバトンをつなぐ意味でも、兄に追いついて世界の舞台に立つという意味でも、今回の試合は絶対に負けられない。力石がライバルと拳を交える一戦は、同じリングで行われる2つの世界タイトルマッチに勝るとも劣らない熱気を帯びるだろう。

©Ikkyu

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