2022年7月に起きた安倍元総理銃撃事件。宗教と政治、2世の苦悩などさまざまな課題が明るみになり、国葬が国民の分断を生んだ。そのほかにも、防衛費や新型コロナの水際対策、憲法改正の是非、米軍基地問題、選択的夫婦別姓など、賛否のわかれる議論が勃発――。
そうした背景もあってか、増加傾向にあるのが討論系番組だ。“論破王”と称される2ちゃんねる創設者のひろゆき氏が、『ABEMA Prime 年越しSP』で自身の考えを述べた。
昨今のブームについてひろゆき氏は「誰も傷つかないようなことをしゃべると、みんなポジショントークで終わってしまう。『根拠は何ですか?本当はどうなんですか?』ともう一段階踏み込むと、言っている人のポジションが崩れて、見ている側の情報量が増える可能性がある。僕が出ている番組は割と深いところまで議論ぽくなって揉めることがあるので、自分の出番が多いと思っている」と分析。
プロデューサーで慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「番組の多くはひろゆきさんが自分で始めたものではないし、今まであった議論にズカズカ入ってきて『こうあるべきだ』なんて提案はしていない。どちらかが言い負かされてスカッとするのを楽しむ中で、ひろゆきさんは『暇だし、いいよ』というサービス精神で付き合ってきた気がする。だから、本人に『なぜそんなことをするのか?』と聞くのは変で、みんなが辛抱強く白黒がつかない議論を見ることができるのか、ビジネスとして番組を成り立たせられるかというのが課題だ」と指摘する。
「メディアでやる以上、“見て良かった”という何かしらの知識なり感情なりを得た方がいいという、番組を作る側の視点に立ってしまう。もともとニコニコ動画で制作側をやっていたというのもある」とするひろゆき氏。
さらに、「『朝まで生テレビ!』という番組が異常に見られていた。田原総一朗さんが出ているだけで視聴率が上がって、いなくなるとなぜ成立しないのか。結局、エンターテインメントとして面白いものをやった上で、議論なり知識なりが入っていたからだ。情報を知りたいだけであればニュース番組でいいし、共感したいのだったら居酒屋で友達を話せばいいという話になってしまう」と続ける。
若新氏は「ひろゆきさんは議論をいい意味でエンタメ化したというか、ヒール役としても企画者としても秀でた人だと思う。例えば、学会に行けば個人攻撃なしに事実の積み上げだけで議論して、感想は一切述べることはできない。裁判に行けばどちらか勝ち負けがつくまできちんとやるが、エンターテインメント的なものではない。過去にもエンタメ感がない番組は企画されてきたのだろうが、視聴率が上がらなくて終わっていったんだと思う。ひろゆきさんどうこうではなくて、そうではない議論の場は成り立つのかどうかだ」とした。
ひろゆき氏の「僕自身は社会のほとんどのことについて、立場を決めていない」というスタンスについて、歌手・モデルの當間ローズは「意見を変える心の余白や柔軟性がすごく重要。それが相手に寄り添うベースになると思った」とコメント。これにひろゆき氏は「ポジションを持ってるせいで、意見を変えられない人がボコボコにされた結果として、支持者が『変わらないといけない」というパターンもある。それで助かることもあると思うので、あえてボコボコにするのも社会のためという気がする」との持論を展開した。
若新氏は討論に1つ足りないことがあるとし、「格闘技は殺し合う勢いで殴っているが、最後は讃え合っている。僕が出ている討論番組では、どちらかがボコボコにされた後、『まさに歴史に残るような議論はできた。あなたを負かしてしまったけど、ここでバトルしたおかげで人類の何かになった』と讃え合うことはない。ひろゆきさん本人のせいにするつもりはないが、ブームによってもたらされた罪ではあると思う。相手が変な理屈を言っていたとしても、プライドをかけてしゃべっているし、その人にも人生がある。でも、ひろゆきさんが言い負かしたことになった相手にリスペクトを見せている瞬間を見たことがない。『そもそも誰にも関心がないから』と言われたらそれまでだが、そのニヒリズムを越えたところにあるリスペクトは考えるべきだと思う」と提案した。
ひろゆき氏は「誤解がある。僕はプライベートでめちゃめちゃ揉める相手でも、結構仲直りできちゃうタイプ。番組上でそうなったとしても、いつでも仲直りできると思っている。嫌いではないから」と返していた。(『ABEMA Prime』より)
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