成田悠輔氏「新聞社のビジネスモデルはもう無理」衰退は運命? 止まらない“記者離れ”
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 日本新聞協会が2022年の一般紙発行部数を発表した。総発行部数は約2869万部と、初めて3000万部を割り込み、前年と比べて196万部減った。

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 新聞の部数減少は20年以上前から進み、近年は毎年200万部のペースで減少。このペースなら、あと15年でゼロになってしまう。

 さらに今、新聞から離れようとしているのは読者だけではない。記者の退職も相次いでいる。記者の新聞社離れは何をもたらすのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、今月いっぱいで大手新聞社を退職する現役新聞記者と共に考えた。

 今月末に毎日新聞社を退社予定の宮原健太氏は「これまでマスコミは一方的に情報を発信して、それを買ってもらう形だった。デジタル化の前までは買ってくれたが、今はもうそういう時代じゃなくなった」と話す。

 今後は「新しい参加型の報道の形を作りたい。なんとかマネタイズできないかなと思っている」と話す宮原氏。

「新聞社の中で頑張って、そういう形に会社を持っていけたらベストかなと思ってもいたが、ちょっと会社を離れて、一人で突っ走ってみるのもいいんじゃないかと思って退社の判断に至った」

成田悠輔氏「新聞社のビジネスモデルはもう無理」衰退は運命? 止まらない“記者離れ”
成田悠輔氏「新聞社のビジネスモデルはもう無理」衰退は運命? 止まらない“記者離れ”

 米・イェール大学助教授で経済学者の成田悠輔氏は「新聞の衰退は運命だ」と話す。

「だんだんと衰退して、一部の人のための“趣味産業”になるのは、ほぼ運命だと思う。新聞記者が新聞社を辞めていくのも、ごく自然な話ではないか。もちろん、僕も新聞を読んでいない。ニューヨーク・タイムズはアプリで読んでいる。そもそもニュースをあまり見ない」

 その上で、成田氏は「新聞社のビジネスモデルを同じ形でこれからも維持するのはどう考えても無理だ」と指摘。

「コンテンツの質がどうこうの話とは違う。結局、情報を発信したり集めたりすることが、誰でもできるようになってしまった。かつては独占利益をむさぼっていた一部の企業だったが、今は誰でも参入できるよう民主化された。僕はこれは良いことだと思う。結果、かつての独占企業たちが苦しむようになった。ごく当たり前の技術革新による競争の激化であって、自然法則だ。このまま落ちるところまで落ちていく」

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 朝日新聞は200人規模で早期退職者を募るなど、事実上のリストラを進めている。今後の新聞社には何が求められているのか。成田氏は「日経新聞は日経株式指数を持っていて、それだけで数十億から100億くらいの利益が作れる。不動産を持っている新聞社もある。だから中規模の企業として、今までよりはスリムダウンした形で趣味的に新聞事業をやる形に落ち着いてくるのではないか」と見解を述べる。

「それとは別に、個々の新聞記者の方がどうするか。個人の新聞記者はいくらでもやりようがあると思う。すごくおもしろい角度で情報を整理できるなら、あっという間にインフルエンサーになれる。どこにアクセスしたら信頼できる情報が得られるか、ノウハウを持っている。それを活かしていけばいい」

 元Jタウンネット編集長で、ネットメディア研究家の城戸譲氏は「やっぱり新聞のブランド力はすごく大きい。新聞社だからこそアクセスできる情報はある」と話す。

「自分はずっとネットメディアだったので、自分たちの会社名を出しても『ん? そこ何?』みたいな感じであしらわれてしまうこともあった。新聞ビジネス自体も成田さんがおっしゃったように転換期にあると思う。一人ひとりがスマホで見て、情報を消費していくような時代になってくると、一家に一部、月3000円から4000円払って読むビジネスモデル自体が、そろそろ限界なのではないか。本当はもっと早く新聞社自体がそれに気づくべきだった」

成田悠輔氏「新聞社のビジネスモデルはもう無理」衰退は運命? 止まらない“記者離れ”

 番組司会の平石直之アナウンサーが「私は電子版で1紙だけ見ている。ワールドカップのクロアチア戦が深夜にあった。試合が終わって寝て、起きて新聞を開いたら“クロアチア同点”と書いてあった。試合はとっくに終わっているのにこの形式でやっている。厳しいなと思った」という。

 宮原氏は「紙だと遅くなってしまうところもあるので、デジタル移行は全然あり得る」とした上で「問題なのはデジタルでも稼げていないことだ」と話す。

「紙が減るのは別にいい。紙が減ってもその分デジタルで稼げているのであれば、別に会社としては問題ない。この後もどんどん報道をやっていける。インターネットは無料の情報で溢れていて、その中でストレートニュース、誰が、いつ、何をした情報にお金を払うマインドがない。サブスクでは購読してくれない状況になっている」

成田悠輔氏「新聞社のビジネスモデルはもう無理」衰退は運命? 止まらない“記者離れ”

 宮原氏の訴えに成田氏は「デジタル化移行に成功していたとしても、ほとんど焼け石に水だ。どうすることもできない」と見解を述べる。

「どんなにYouTubeチャンネルを作って成功しても年間の売り上げなんて、10億円ぐらいにしかならない。巨大な新聞社を支えるなんて、絶対に無理だ。デジタル化移行に成功しても、新聞社の巨大な人員とオフィスを抱え続けることは絶対に無理だ。ニューヨーク・タイムズが、薄利多売のサブスクリプションで80億人を対象にグローバル展開するようなことしかできない。日本国内で営利事業として展開しているマスメディアは消えていくだけではないか」

 新聞社も何社かあることによって、クオリティが保たれているといった意見もある。宮原氏は「競争は必要だと思う」と話す。

「要するにどこが抜き抜かれるか。いわゆる特ダネ競争だが、それがあるからこそ新しい情報を出して、闇を暴いていく部分もある。1社だけになると、どうしてもそういう競争が働かなくなる。報道が活発でなくなってしまう懸念もある」

成田悠輔氏「新聞社のビジネスモデルはもう無理」衰退は運命? 止まらない“記者離れ”
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 成田氏が「NHKだけではダメか」と質問すると、宮原氏は「ちょっときつい」と回答。続けて成田氏が「今のままいくと、報道ジャーナリズムを支えられる営利企業はどんどんなくなる。実質的にNHKだけになる。普通に起きる未来だと思うが、そうなった未来の問題は何か」と聞くと宮原氏は「競争が働かなくなってしまうのと、視点も複数ではなくなってしまう」と指摘する。

「私は政治部の歴が長いが、政治なんて本当に同じ事実関係でも見方によって全然変わってくる。複数の報道があるからこそ、いろいろな見方ができる。これは言論にも影響を与える。私も正直、最終的にはスリム化していって、記者のニーズも減っていくと思うし、最終的には個々の記者の集まりが報道になっていくと思う。その中できちんと記者が自分の報道をやっていくために、どうしたらいいのか。そのためにはファンをもっとつけなければいけない」

(「ABEMA Prime」より)

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